26:動き出す未来
「攻めんといて!俺達は異世界にコンクリートで専守防衛国家を作りたい」
も連載再開しましたのでよろしくお願いします
風の魔法で二つの穴の空いた球状の障壁をイメージする、そこへ火の魔法で生み出した火球とアナム・グアルを入れ
排気側の穴を上に向かって伸ばし給気口側の穴を絞れば魔法本来の力以上に火球が燃え上がり大地に熱を注ぐ、既に火の魔法は解除しているがぐんぐんと熱は高くなる
これは二次燃焼と煙突効果に拠るもので、透明な風魔法を使っているから皆には球体の炎にしか見えないが実際には薪ストーブの様な構造になっている、何故こんなまどろっこしい事をしているかと言えば
自力でやるよりも自然の力を借りた方が魔力の消費を抑える事が出来るから
「あったかぁ~い」
「おお、暖かいの…」
「マードック様、レテウス様は貴方様のお眼鏡に叶いましたかな」
「あやつはいつもこうなのか?」
「以前はあまり人前で魔法をお使いになられなかったのですが、最近はお変わりになりましたな」
「ふむ、この事を村人たちは?」
「誰もこんな村に来ませんし、来たとしても他所者に言うつもりは在りませんよ。皆レテウス様を愛しておりますから、ただ…」
「ただ、なんじゃ?」
「先程の魔法の件もですが、最近は活発すぎて少々心配にも思います」
「それはいつ頃からか判るか」
「申し訳在りません。そこまでは判りかねまする」
そこら一帯の雪が溶け土が姿を表すと子供たちがこぞって泥を集め始める
「惜しいのう、兄のアンガスも優秀じゃと聞いておる、いっそのことうちの村にでも連れて」
「ほっほっほ、先程も村の者は愛しておりますと言ったばかりですぞ、それにデイヴィッド様もお許しになられませんよ絶対に」
「ふぅ…そうであったな、だがあの様な魔法の使い方は見たことがない実に惜しい」
諦めきれず名残惜しそうなマードック
「どうしてもというのならこの村が滅ぶでしょうなぁ」
ほっほっと笑うゴブ爺さんの目が笑っていないことを確認するとマードックはやっと諦めた様だった
泥で作った簡易的な煙突を作り屋根や壁の隙間に泥を塗り、燃料追加用の穴も一番底に作ってやっと釜が形になった、
大叔父様にお願いして水車の転輪と軸を外してもらったけどまるでアメコミのヒーローみたいに軽々と外してくれた
石を置いて区切り粘土をやそれぞれの資材を並べていく、粘土は全体の三分の一を焼いてこちらも骨材にする骨材は余っても後でも使えるから問題ない、燃料に関してはアナム・グアルの炎を実際に見たことが有るのはゴブ爺さんだけなので何処に置くかは彼に任せる
ここまで来てやっと火入れだ…
「あっ!」
「なんじゃまだなにか足りないのか?」
「扉というか蓋を忘れてました」
「その扉に合う大きさなら良いのだな」
「ふん!こんなもんでよいか?」
(大叔父様すご~い)
大叔父様が馬鹿みたいな大きさの石、いや岩を持ち上げる、これもハイランドゲームで見たやつだ、確かストーン・リフティングって名前だったはずだ
本当にマードック大叔父様は規格外過ぎて何をするのか検討もつかないな
「大きさも大丈夫そうでね、では火を付けた後にそれで塞いで下さいお願いします」
「では行きますぞ」
ゴブ爺さんが先導して元鍛冶屋だった炉に入り火をつける
「これくらいでいい?」
「ええ、一度付いてしまえば簡単にゃあ消え無いのですよ」
「本当に?」
「ええこの目でバッチリ見ましたからな、ささ外へ出ますぞ」
うん、これ皮肉だよね
大叔父様が扉に蓋をしてくれた後は空気穴だけを残して泥で蓋も塞ぐ
「後は待つだけか?」
「はい」
「暇になってしまったのう、何か他にすることはないのか」
「することですかぁ~、精々屋根が乾かないように様子を見て泥を後から載せるくらいでしょうか」
「つまらんなぁ」
駄々っ子か…でも待つだけで実際暇では有る、それに煙突から立ち上る煙を見ていると熱を捨てているようでもったいなくも思う、この排熱を無駄にしない何か…
ねえねえレテウス君、図書館の中に日本に関する本、出来れば観光に関するご本を探してもらえるかな?
(にほん?にいにの生まれたばしょ!)
レテウス君には以前からよくお話をねだられているからその時に日本生まれだと話してある
(にほんの本、有る場所わかる!)
これは興味を持ってくれて図書館で探してたんだろうか?だったら嬉しいなぁ
(こういうの?)
そうそう、ありがとうね。レテウス君が持ってきてくれた本の中から温泉に関する本を選びパラパラとめくってもらう。まあ温泉を作るんじゃないんだけどね
作りたいのは銭湯というか浴場、窯の熱を効率よく使いたいなと思ったのだ
問題は窯の方が小川を流れる水よりも当然高い位置に在るわけで、更に低地に作った浴槽に引き込んだ水をどうやって温めるかだ
ちょっとストップ!さっきのページに戻ってもらえるかな
戻ってもらったページ写った写真に目が止まる
樋を架けて上流から高低差を利用して源泉を浴槽に引き込んでいる、そうか…鍛冶屋の横から水を引き込もうとするからいけないんだ
川のちょっと上流を見れば1メートル程の滝というか段差がある、あそこに樋を架ければ…
「大叔父様、じゃあもう何本か木を切って来ていただいて窯の近くに人が座って10人くらい入れる穴を掘ってもらえませんか?」
「なんでじゃ?」
「答えたほうが良いですか?出来上がった物を見た方が面白いと思いますけど…」
にやりと笑う大叔父様
「奇想天外なお前がそこまで言うのだ、楽しみはあとに取っておくとするか」
大叔父様は愉快そうに斧を構えて森へと歩き出した
「おっちゃーん待ってよぅ」
何人かの子供たちは大叔父様について行く、あれだけ強いとやっぱり男の子としては憧れるのも無理はない
「欲しい木の太さと長さを確認してほしいからヨゾとマザもついて行ってくれる?」
四則演算や単位を教えてあるこの兄弟なら問題ないはずだ
「はい、レテウス様」
「それでどれくらいの物と伝えればいいですか」
「そうだね太さは1フィット長さは~出来るだけ真っ直ぐで長ければ長い方が良い」
長ければ切ればいいだけだしね
「判りました。でも何を作るんです?」
「大叔父様にも言ってないのに教えると思う?」
「そうですね」
ふふっと互いに笑い合い兄弟は大叔父様の後を追っていった
さてと、こっちはこっちで準備しないとね、俺は落ちていた木の枝を手に取った
しばらくするとまた丸太が降ってきたけど今度はちょっと気を使ったのか窯から離れた所に落ちた
「レテウス次は何じゃ」
「穴掘りです」
さっき伝えたはずなんだけど…
もう一度教えて湯船を掘ってもらうけどこっちも忙しい、ヨゾとマザに大叔父様の指揮は任せて離れた位置から窯に横付けする大きめの溜め桶を土魔法で作る、桶の下には栓も付けてある
「なんじゃ!魔法で作れるのなら全部作ってしまえば良いものを」
「時間がないからやってるだけです。だいたい僕しか作れないんじゃ意味がないじゃないですか」
「そんなものかのう?」
「そんなもんです」
溜め桶を火魔法で熱しより硬いものに変え、丸太を水魔法で縦に二等分にしていきゴブ爺さんとカラムが水が流れるように溝を掘っていきそれを川の上流に掛ける水がしっかり流れるのを確認したら連結して溜め桶に川の水を流し込む
既に熱せられていた溜め桶がじゅぅぅと音を立てたが、なにせ冬の川の水だ温まるには時間がかかるだろう
「レテウス~」
シェーナさんの声だ、気がつけばもう陽も落ち始めていた
「もう、いつまで経っても帰ってこないんだから…あらマードック叔父様!来ていたのならお声をかけてくれればいいのに」
「おう、悪かったな今日の朝デイヴィッドとサーロンに会ってな、やんちゃ坊主が居ると聞いて飛んできた」
「あらまあ、もう夜になってしまいますよ今日はどうなさるんです?」
「悪いが空き家を一晩貸してもらえるとありがたい」
「そんな事気にせず、うちに泊まっていってくださいな、ちょうど夕食も出来ていますから」
「かたじけない」
「ほらレテウスも村の子たちも帰るわよ」
「「「は~い」」」
「でも、火の様子を」
「心配ありませんぞ、火の様子ならわしらが見ておくでな」
「寝ずの番なんて日常茶飯事ですからね」
ゴブ爺さんがそう言えばカラムも隣で相槌を打つ、押し付けているようで申し訳ないけどここはプロにお任せすることにしよう
「よろしくお願いします」
家に帰ると同時に腹がなる大叔父様も一緒の食卓、性格は違うのにご飯を食べる姿はなんとなく叔父上に似てる気がした
「あの、大叔父様、叔父上はいつ頃帰ると言ってましたか?」
「ん?十日ぐらいと言っておったな、王が亡くなり何処もかしこも忙しいからな」
じゃあ大叔父様は何故ここに居るんだろうか…
「お前の話を聞いてサーロンも落ち込んでおったわ、がはは」
やっぱり父には良く思われていないのか、ごめんねレテウス君
(気にしてないよ、にいに)
「わしとしてはお前を引き取りたいくらいだがのう」
「いくら叔父様でもそれは駄目ですよ」
シェーナさんがきっぱりと言いきってくれた
「そうじゃろうなぁ、ゴブにも村が戦争になると言われた、しかしレテウスでなければデイヴィッドの許可が有れば構わんのだろう?」
「それはそうですけど誰かに拠りますし、そんなレテウスの身代わりに差し出すみたいなの私は嫌ですよ…まあ許可をするのはデイヴィッドですけど…」
「マードック大叔父様、それって誰のことですか?」
「村の子どもの中に計算ができる兄弟がおったじゃろう」
「ヨゾとマザですね。もしかして二人とも連れて行くつもりですか?」
「二人とも欲しいがそれでは家の者も働き手が減って困る、連れて行くとしたら一人、どちらが兄か弟かは知らんが弟の方だな」
なるほど小作人からすれば長子は将来の大黒柱で家を継ぐ存在だ、そうなるとマザの方か
「本人たちの意見を尊重してあげたいですけど、小作人の子供を里子に迎え入れるのって問題ないのですか?」
「変わったことを言うな、領民は財産だそれを支族長が氏族の繁栄の為にどうこうするのも仕事のひとつなのだぞ」
そうだった現代のような人権感覚なんてないんだった
「しかし問題がないわけではないデイヴィッドの許可は勿論だが、小作人の子供を引き抜いても家の繋がりの強化にも後ろ盾にもならん、どんなに優秀でも傍から見れば食い扶持が増えるだけで反感を買う、名目上は見習い戦士にでもせねばならんだろうな」
「そこまでしてマザを欲しい理由って計算できるからですか?」
「それはそうだろう計算ができれば商いでローランドの連中に誤魔化される事も無くなる、文字が読めれば密偵にでもなれるのじゃぞ、そういえばあの兄弟は読み書きもできたりするのか?」
「一応」
俺の返事次第でヨゾとマザの人生が変わってしまいそうで歯切れの悪い返答になってしまう
叔父上とはこんな話をしたことがないがマードック大叔父様と会話をしていると支族長の立場やこの世界のシビアさを実感する
「坊っちゃん、夕餉時に固いお話ばかりで全然食べていないじゃありませんか、先ずはしっかり食べて下さいな」
ベルテに怒られてしまった
「まあ、そうことじゃから許可を取るためにもデイヴィッドが帰ってくるまでこの村に世話になるぞ、あの兄弟の親にも話をつけねばならんしな」
こうなってしまったら俺にそれを止める手立てはない、身分と血で決まってしまう恐ろしさを改めて思い知らされるのだった
翌朝
早速大叔父様を連れてヨゾとマザの家に向かい、大叔父様が二人の両親に用件を話す。
当然だが両親に断る権利はない、その場で決まる。マザは大叔父様が帰ると同時に里子として引き取られる父親は興奮しているが母親の方は顔色が悪い、氏族なら当然覚悟している里子でも小作人の子は話は別、母親には突然子を奪われたというショックの方が大きいのだろう
一方で父親はといえばただの小作人から支族長という大きな繋がりを持つ息子が生まれたのだ、一生小作人で終わる息子より出世した息子を望むのも当然と言ってもいい
当事者であるマザはぼーっとその様子を眺め、兄のヨゾは悔しさもないのかマザの里子を喜んでいた
あっという間にマザの里子が決まりその脚で鍛冶屋へ向かう呆けたマザと喜ぶヨゾも一緒だ
向かう緒中で子供たちも集まってくる、本人もだけど愛馬のドゥラスが目立つから直ぐに見つけられる
「レテウス様~今日は何するの~」
「昨日の続き~」
鍛冶屋跡まで来るとカラムが火の番をしているところだった
「ゴブ爺さんは?」
「いま寝てます。山場は過ぎたって言ってました」
お疲れ様です
「レテウス様!探しましたぞ、一体昨日は何処に居られたのです」
フォークが走ってやってくる
そう言えば使いに出したのに報告を受けてなかったっけ、よく見るとその後ろにはサンヴィル先生も居る
「昨日の使いのご報告です。デイヴィッド叔父上様は十日後には戻られるということでございます」
もう大叔父様から聞いて知っているんだけど可愛そうだから言わない
「なんじゃこやつは?」
「失礼致しました。私めはレテウス様の家庭教師でフォクルクのフォークと申します。以後お見知りおきを」
「そうか、わしはエヴァン家支族長の一人マードックこやつの大叔父だ、それにしてもこんな寒村で家庭教師付きしかもフォクルクときたかお前は本当に面白い童じゃ」
(にいに、大叔父様なんか楽しそうだね)
たしかに楽しそうだが、がははと笑う大叔父様のツボが分からない
「お久しぶりですマードック様、覚えていらっしゃいますか?サンヴィルにございます」
「なんじゃお前までおるのか!こりゃあとんだ寒村じゃわい」
益々愉快といった大叔父様は笑いが止まらない
「お前がおるということはレテウスは弓を使えるのか?」
「はい、年相応では済まない腕の持ち主ですよ」
サンヴィル先生がこんなこと言ってくれると思ってなかった、嬉しいなぁ
「ゴブ爺の孫よ、この窯が冷えるまでまだまだ掛かるのじゃろ?」
「お昼ごろになれば取り出せるかと」
「おい、フォークと言ったかお前はレテウスが弓を射る所は見たことが在るのか?」
「い、いえ私は座学の担当ですので見たことは…」
「ならば家に行ってこやつの弓を持ってこい、ほら行け」
「はい!」
俺が行っても良かったんだけど問答無用、半ば脅される形でフォークは来た道を戻って行ったのだった
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