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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第一章 幼少期(グレンガルト・トゥア編)

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19:報復の掟

残酷なシーンが含まれますが、ハイランド氏族をモデルにしている以上避けて通るべきではないと考えています


沢山の方に読んでいただきランキング入りを目指しています。

【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o)

女王の死まで残された時間は少ない


 仲間と家族でやれるだけのことをするそう覚悟を決めた矢先に



 牛を盗まれた。


 犯人は西の山を一つ超えた隣領のカウトール氏族だ。腹立たしいことこの上ない、そしてこれから小氷期に入り寒くなり続ければ被害は拡大するだろう今のうちに手を打っておかないと本家以南の氏族にまで舐められる。


 だが俺が(いか)っているのはそんな事じゃない、ギブ…ギルバートの一家が殺されたと聞き、今彼の家の前に居る、(レテウス)の一つ上でまだ六歳、妹は三歳だった。


「レテウス様、本当に宜しいのですか?検分であれば。」

「エヴァン家嫡子が検分するのが不服なのか?」

「いえ…滅相もございません。」


 サンヴィル先生は見ない方がいいと気を使ってくれているのは解る。でも俺は見ておかないといけないそう思った。


 レテウス君、聞いてほしい事があるんだけど。

(なあに?)

 レテウス君ももう何が有ったかは判ってるよね?

(うん…でも僕もレテウス…だから…)

 氏族長の嫡子としての心意気は良いけど、知らなきゃいけないからって精神が育ってない子に見せても壊れるだけだ、まだ早い。



 ソラス、俺が戻ってくるまで向こうを向いててくれる?

< 判ったわ >

(にいになにをするの?)

 ソラスの視界だけを見れるよね、戻ってくるまでそうしてくれるだけでいい。

(わかった…)

 聞き分けが良くて良かった。


 入った途端むせるような鉄臭い匂いが充満する家、暖炉の火も燃え尽きて消えたいた。

 生活は苦しくても昨日までは笑顔のある部屋だった。

 もう誰も笑わないし泣くこともない…


 ゲェェェェ

 一緒に入ってきた村の男があまりの凄惨さに吐いた。だらしないとは思わないむしろ変なのは俺だ、鳥を〆るだけで青くなっていた男が妖狼の力が馴染んだ所為か血なまぐさい物を見ても今は恐怖よりも怒りの感情が強いのだから周りから見れば殺人現場でも動じない五歳児はさぞ異質なものに映るだろう。


 抵抗した形跡の有る父親の死体には必要以上の刺し痕、その奥には背中を刺されて絶命した母親…部屋の奥にはギブが水壺に(もた)れる体勢で亡くなっていた。


「妹は?ギブには妹が居たはずだ」

 慌てて見回すが何処にも居ない。

「妹ですか?この家には他の遺体は。」

< 父、そこ! >

 クラウがギブの凭れかかった水瓶に視線を向ける。地面が濡れているのはギブが凭れたときにこぼれたものかと思っていたがそれにしては濡れすぎだ。


 水瓶の蓋を開ける中には冷たい水に長時間浸かっていた所為だろうギブの妹が両手で口を塞ぐようにしたまま気を失っている。


 慌てて引き上げても反応が無い。


「ア・ヴァーハル・タラヴ、ア・ヴュール、アン・スペア」

(母なる大地よ海よ空よ)

「ア・イリアン・ヴィアナハチャ、アン・トゥシュカ」

(恵みの太陽よ雨よ)

「ア・ハリベラ・ア・ハ・ア・リアーラグ・ア・フーラ・コール」

(全てを司りしカリヴェーラよ)

「ホール ヴォヴ、クレエチャル ベグ アグス ニョ・フトラマハ、アン クマハド スラーナハゥ」

(矮小なる我が身に癒しの力を貸し与え給え)


 癒しの魔法で顔色は良くなったが身体は死んでいる様に冷たい。彼女の服を脱がせて体を拭き代わりに乾いた自分の上着を着せる。


「ソラス!サンヴィル先生!」

 駆けつけた先生にギブの妹を火の灯る隣の家に運ばせソラスの体温で温めさせる。


 そうか…ギブ、お前は命がけで妹を守ったんだな。

 亡骸となったギブの顔を見つめ労い、ギブの開いていた瞼を手を当てて閉じてやる。

 燃え上がる怒りが涙がこぼれるのを許さなかった。


 落ち着け…


 いくら家と家との間に間隔が有ると言っても皆が起きている時間なら叫び声は聞こえる。殺されたのは恐らく昨日の夜中から今日の早朝と見るのが妥当だろう。そして今はもう陽は昇り始めている。クリーチ(牛泥棒)を行った者たちはもう西の山の中腹付近まで行っていると考えると相当距離がある。


 犯人たちは逃げ切れたとでも思っているかも知れないが…


 氏族にはルールが有る。

 牛が奪われた場合は追いかけていって殺すのはたとえ越境したとしても合法だ。


 一族の者を手にかけられた場合、氏族全体が復讐の義務(ブラッド・フェード)を負い、相手の氏族の者は実行犯であろうとなかろうと殺していい。


 叔父上が頻繁に本家に行っているのを知っていたのだろう。統率者が居なければ追ってこれないと高をくくって犯行に及んだのだろうが俺は氏族長の息子だ、そして何よりも半分追放される形でやってきた俺に優しくしてくれた村人を愛してる。


(にいに…)

 レテウス君には酷な話だ。レテウス君を連れて現代に戻れるのなら五歳の男の子にこんな物は見せないしこれから起こることからも逃げていたに違いない。


 でもここはそんな世界じゃないし、レテウス君がこれから先…それも近い将来これ以上のことが起きる。

(にいに…こわい…)

 ごめんね、見ないでいい。

(でも全部にいにのせいにしたくない、にいにギブのかたき取って。)

 ありがとう…


 腹は括れた


 絶対に逃さない。

「クラウ匂いを追えるか?」

< 当然、匂いでも魔力でも >

「ソラス彼女の意識が戻ったら、サンヴィル先生たちを連れてあとから付いてきてくれ。」

< 判った、絶対にギブ達の仇取ろうね >


「ねえ、一日だけそれ貸してもらえる?」

「う、うん。」

 村のこどもから上着を借りて俺はクラウに跨り村を出た。


 雪をものともせず進むクラウ、このペースなら尾根を超える前に追いつけるかも知れない。


 育てている牛は現代と比べれば小さいがそれでも冬の雪山を牛を連れて行くのなら一頭につき最低二人、盗まれた牛が二頭なら最低四人、先導するリーダーを入れて最低でも五人、薪や食料を持つ荷物持ちが居ればもう少し増えるだろう。


 クラウに乗ったまま土魔法を唱え、指の先から泥を出し顔に塗る。

 現代の兵士でもやるカモフラージュのためのドーランと言うやつだ。


 クラウはノンストップでそのまま山を駆け上がり続け体感で3時間くらい経っただろうか太陽の位置を確認する。


 イライラする…本来ならウォッチと呼ばれる見張りや追跡専門の傭兵が十三世紀のスコットランドには居たのだが、こちらの世界では居ないのか、それとも弱小氏族の治める寒村だから配置されていないのか、恐らくうち(エヴァン家)の場合後者だろう。


 陽が登りきった頃ソラスから連絡が入る。

< 女の子の意識が戻ったわ、今から向かうから >


 東は山を越えれば海とローデル家、北も広大なローデル家の領土、南には本家、実質防御は西の山だけでいいのにそれすらしないというのはエヴァン家の経済力と人材不足が見えてくる。


 だいぶ陽も暮れてしまった。

< 父、もう少しで追いつく >

 流石だクラウ、ソラスたちの方は?

< サンヴィルとヨゾとマザ >

 先生は解るがヨゾとマザ?、もっと大人が来ると思ったんだけど。

< 志願してきた、仕方ない >

 クラウとソラスは二人に弱いというか甘い。生まれたときから俺や叔父上たちを除くと一緒に居た時間が長いからかも知れない。


 二人には結局魔法は教えていないから不安だ。


 追いついた、奴らは尾根を超えた先で一晩を過ごす様だ、暖を取る準備を始めた暗くて良く見えないが代わりに魔力で見る。八、九…十、十人か周りを見渡しても他に魔力の反応はない。予想外だ


 十人掛かりで牛たったの二頭、うちの村がしょぼいのかこいつらが腰抜けなのか。


 レテウス君、時計塔は光ってる?

(うん、今は夕方の四時)

 ここまで正味六時間位か、ソラスが誘導しているとはいえ三人同時に乗せてくることは出来ないだろうからかなり掛かるな。…

< 父さん、サンヴィルが怒ってる >

当然だな、だけどお叱りは後にしてもらうしか無い。


 冷え込む冬のお陰で指を濡らさずともこの風なら風下のになる場所は判る良い所に陣取ってあとはクラウで暖を取りながらサンヴィル先生たちが来るのをひたすら待つ。


 奴らが飯を(すす)り寝床の準備を終える頃には夜八時を回っていた。酒を飲んだ様子はない

「エヴァンの寒村って聞いていたからジジババしか居ねぇのかと思ったがあの女いい女だったなぁ…勿体ねぇ事したぜ、こんなに簡単なら一発ヤッておけば」

「へへへ、確かにお前の()()なら問題なかったかもしれねぇな。」

「くそっ、てめえ本当に嫌なやつだ。」

「俺はあのガキ殺った時が堪んなかったぜ、ガキは筋張ってないから柔らかくて剣がするっと入っていくのがいい。」

「変態め。」

「二頭だけじゃなくて他の家も襲っちまえばよかったんだ。」

「お前が一番ビビってたくせによく言うぜ。」

 緩みきって自慢にもならない話で盛り上がっていた、どいつもこいつも今すぐ殺してやりたい。


「静かにしろ、そんなもん運次第だそんな考えるようじゃすぐに死ぬぞ。ここからカウトールの砦まであと丸一日は掛かる、陽が昇る前には発つ、さっさと寝ろ」

 クソみたいな話をしている男達を諌める男、すごすごと黙る連中、どうやらあいつが(かしら)の様だ。

しつこいようですがランキング入りを目指しています。

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