17:吟遊詩人が黄金時代の終わりを告げる
沢山の方に読んでいただきランキング入りを目指しています。
【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o)
サンヴィル先生を説得し、早めに切り上げて山を降りると村の広場にエールの看板が出ていた
「エールハウスじゃなくて広場ですか、この時期に珍しいですね。」
「そうですね、春の収穫の祝でしょうか?」
去年はやらなかったと思うんだけど。
「おうレテ坊!今帰りか。」
「ただいまモルトおじさん、今日はどうしたの?お祭りじゃないよね。」
「吟遊詩人が来たんだ、つってもロマウから来たフォクルクだがな。」
久しぶりの吟遊詩人の来訪にモルトおじさんの顔も緩んでる。さてはそれにかこつけてエールが呑みたいだけだな。
そしてチラチラと狩ってきた山鳥を見てる。今日は罠猟も含めると二十羽近く採れた…仕方ない
「じゃあ半分あげる。これだけあれば足りるよね?羽目外しすぎないようにね。」
「さすがレテ坊、おう!みんな領主の息子お墨付きの差し入れだ!」
「おお~レテ坊ありがとよ!」
「全く、うちの男共は!子供に飯たかってちゃ大人の面目無いじゃないか。」
「母ちゃん、そう言うなって。」
ガハハと笑いが起きる。村は豊かではないけど活気があって好きだ。本当は氏族の直系としては咎めなきゃいけないんだけどついついお目溢ししちゃうくらいに。
「レテ坊お前も食いに来るんだろ?」
「うん、やることやったら来るよ、僕の分も食べ物残しといてね。」
「おうよ。久しぶりの詩が聞けるってのにデイヴィッドは今日も本家で可哀想になぁ、待ってるから早く来いよ。」
そうなのだ、叔父上はいつもにも増して最近忙しい、なんで忙しいのかは知らないけどたまにはゆっくり休んでほしいと心配になるほどだ。
「ではこちらに置いておきますね。」
「ありがとうございます。」
玄関に山鳥を置いて先生と別れた。先生も奥さんと広場に行くのだろうか?まだ奥さんと会ったこと無いし見てみたいなぁ、そのためには早く燻製の準備を終わらせてしまおう。
もう日課と化した燻製作業、今では自分でも捌くようになり目の前の鳥は肉にしか見えなくなっていた。
灰も事前収集済みだから作業が早い。その分量が多くなっているわけだが…
「坊っちゃんだいぶ上達しましたね。後はこっちでやっておきますから詩を聴きに行ってらっしゃいまし。」
「ありがとうベルテ、ベルテの分のお肉も貰ってくるからね。」
エンタメらしいエンタメの無い村で楽しい事があるとすれば祭りか吟遊詩人、何度か見たことも有るが結局自分もモルトおじさんとあまり変わりない歌を聴くというより縁日の様な雰囲気が楽しいのだ。
玄関を開け一歩踏み出したときだった。
「ん?なんか…」
ぎゃーぎゃーと喧騒は聞こえるがなんか変だ。
「殺せー!」
「逃がすなー」
物騒な声が耳に届く、喧嘩か?急いで広場に駆けつけると
「わ、悪かった!許してくれそんなつもりじゃなかったんだ!」
「じゃあどんなつもりだったんだ、言ってみろこの野郎!」
凄い剣幕が飛んでくるけどこの身長じゃ何が起こっているのか見えやしない。
「レテウス様危険です。」
「先生、一体何が起きてるんです?」
「これはフォクルクが悪いのですが村人たちを止められそうに有りません」
要領を得ないがどうやら追い詰められているのは吟遊詩人のようだ、一体何を謡えばここまで人を怒らせられるのか。
「先生僕を肩に乗せて騒ぎの中心迄連れてってくれませんか。」
「しかし…」
「僕じゃ頼りないかもしれませんが叔父上が居ない今はこれでも族長の息子なのです。それにクラウ!ソラス!」
大声で二人を呼べば村人たちをあっという間に押しのけ旧約聖書のモーセの様に道ができる。
「これは心強いですね…」
俺を肩に乗せた先生が進み出すと村人たちは決まり悪そうに目を背ける。
「モルトおじさん、これは何が原因?」
「助けて!助けてくれ。」
先生の足にしがみついたフォクルクが蹴り払われた、先生も十分に怒っている。
「そのクソ野郎が王が死んだなんて笑いながら謡いやがったんだ。どけレテ坊、そいつぶっ殺してやる。」
「そうだ殺せ。」
「そのクソみてぇな楽器に頭指して、ロマウに送り返してやる。」
「そうだ!」
鎮まりかけた村人たちの怒りが再度燃え上がる。怖い…出来ることならみなかったことにしたい。
でも
「先生魔法を使います。脅すだけです。」
わずかに顎を沈ませた先生。
この場合効果的なのは…『海』だけで良いか、小声で詠唱を開始する。
「お、おい何だアレ。」
「なんかヤバくねぇか…」
頭上に水球をイメージしてどんどん膨らませる。家一軒くらいか
「何してんだレテ坊、あぶねぇぞ。」
さっきまで怒りに震えていたモルトの顔も青くなっていく
解放
広場は一瞬で大量の水に飲まれ村人たちが流される…
「レテウス様?」
ビチョビチョの先生に睨まれた。今度から『空』も入れて風魔法でバリア作ろう…
助けてと泣きわめいていたフォクルクも何が起きたのか解らず、口をぽかんと開けて固まっている。
「レレレ…レテ坊何しやがる。」
立ち上がったモルトだったが風が当たるだけで寒さでガタガタと身体を震わせている。他の村人も以下同文、もっというと僕らも震えてる。
「事実を確認します。それまでこの男は勾留、気持ちは判りますが先ずは叔父上が帰ってくるまで我慢して下さい。叔父上が殺していいというのなら煮るなり焼くなり好きにしていいですから。」
「そんな…助けてくれるんじゃ」
「我が国の王を愚弄しておいて五体満足で帰れるとでも?」
「ひぃ」
こいつはアホだ。今世の王がどれだけ慕われているのかも知らないのならそもそも吟遊詩人に向いていない。三十年続いている今の戦争無き安寧を作り上げた我らが王を愚弄したのだ。
一時的に保留にしたのも、こいつがロマウバリウク帝国の民だという理由だけだ。
「叔父上の判断が下るまでです。今殺して犯罪者になるのは馬鹿らしいでしょ?胸を張って殺せる迄の辛抱ですよ。」
我ながら酷いことを言ってる自覚はあるが、村人を踏みとどまらせるにはこう言うしか無い。
「わわわ…判ったたよ…」
ガタガタさせながら渋々承知してくれたモルトおじさん。
「皆さんもくれぐれも早まらないでくださいね。どうせ殺せるんですから。」
「そうだな、どうせ殺せるんなら…」
くしゅっ!寒い!早く終わらせたい。
俺のくしゃみを皮切りにあちこちからくしゃみや咳が聞こえ始める。
「レテウス!」
「坊っちゃん!」
シェーナさんと毛布を持ったベルテが走ってくる。
「ほらほら今日はもう終いだよ。まったく…こんなちっちゃな子供に場を収めてもらってあんたら恥ずかしくないのかい!今日は片付けは良いから皆帰んな。」
フォクルクは先生が家で勾留してくれることになり、なんとかこの騒動を乗り切れた。
そして俺はというと風邪で高熱を出し寝込んだ。ごめんねレテウス君。
しつこいようですがランキング入りを目指しています。
【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o)




