幼少期12:変革への第一歩
基本19:00投稿ですが試しに8:00に投稿してみました。結果次第では朝投稿に切り替えるかも
(にいに!すごーい!きらきらきれー!これがうみ!!)
今日はサンヴィル先生付き合ってもらいそれぞれクラウとソラスに乗って西の山を登り尾根に到着した所でレテウス君のこの言葉が出たというわけだ、初めて見た海が山の上からの絶景なのだからそれは気分がいいだろう
そこから山を下り海岸へ、海が近づくにつれレテウス君のワクワクがどんどん大きくなるのが判る
(ざっぱーん!ざっぱーん!)
本来の目的は別にあるのだがレテウス君が喜んでくれてなによりである
< 父!おっきい川 >
< 綺麗 >
クラウとソラスも初めて見る海に興奮している
山を下り切り砂浜から砂をすくう
本来の目的というのはこの砂と海藻だ、何をするにも資源の乏しい村では行商人から買っていたら直ぐに資金が底をついてしまう、そこでレテウス君に通称『にいにのせかい』で俺の通っていた大学の図書館に行ってもらいレテウス君の視界を借りて必要になる資源の情報収集を行った結果、硅砂・海藻・粘土といった金を極力使わないで収集できるものに目をつけたのだ
「無理しないでね」
< 平気平気! >
< ちょっと臭いけど…問題ない >
ぎっしりと詰まった砂袋と海藻袋をクラウたちへ括り付け海を後に…
「砂浜で少し遊んで良い?」
「あまり波に近づきすぎないようにしていただければ」
(にいに、ありがとう!)
レテウス君から嬉しいの気持ちがスパーク、そうだよねせっかくの初めての海だもの遊びたいよね
(にいにぃ~、あしが変~)
以前と比べると感触だったり食感といった五感も同調といえば良いのか伝わる度合いが上がってきているのが判る、引き波が足元の砂を運ぶ感触が面白いのだろう、子供の頃は自分もそれを楽しんだっけな
ひとしきりレテウス君のやりたいことをしてあげる
(にいに冷たくなってきた…もう帰ろう)
我慢していたのだが先に音を上げたのはレテウス君の方だった、助かった…真冬の海はやばい
でも、何故父や母が子供の頃に色んな場所へ連れて行ってくれたのか少しだけ解ったような気がした。これからも色んな経験をしよう、俺が居なくなってもこの子が大人になったとき淋しい思いをしないように…
ーーーーーー
村の中心部から離れた山の入口にぽつんと建つ小屋、村の建物と違い煙突が有り上からはもうもうと煙が立ち登り直ぐ側にはサラサラと音を立てる小川も通っていた
現代の人間が見ればさぞかし牧歌的に見えたことだろうがこの村にとっては支族長の家よりも重要だと言っても過言ではない建物だ
「こんにちは~」
「おお、レテウス様いらっしゃい」
「やめてよ前みたいの坊でいいよ」
声の主はこの村唯一の木工大工にして鍛冶師のゴブじいさん、じいさんは決まり悪そうにぽりぽりと頭を掻き
「しかしだな、村の英雄に坊呼びは…」
フォークの件に牛泥棒、立て続けに起きた事件以降、村の人達からこんな感じで様付けされることが増えてしまった
「ゴブじいさんそんな事はいいから例のアレどう?」
「型枠じゃったか、理屈はレテ…坊の説明のおかげで判るのじゃが…ここの土ではのぅ…」
やっぱり上手く行ってないみたいだ、ゴブじいさんが部屋の奥に目をやると失敗作が積み重なっていた
「ゴブじいさん、これ使ってみてほしいんだけど」
「なんじゃこれは?灰か?灰は駄目じゃ割れてしまうぞ」
「しかしこれは何の灰じゃ?普通の灰と比べて黒いな手触りも滑らかじゃ…それにところどころ光っておる」
その通り、灰は灰だけど木の灰じゃない採ってきた海藻から作ったケルプ灰だ
「それとこれも」
テーブルの上にもう一つのとっておきを置く
「これは古いにしえの黒曜石か…」
「ううん違うよこれは燃料」
「燃料?これが?じゃがこれは光ってるぞ!」
細かく説明しても魔法を使わないと出来ないのだから意味がない
「何でも良いから使ってみて!」
ゴブじいさんには説明を省いたがこの燃料の原料はいつも村で使われているピートだ、それを魔法で極限まで圧縮乾燥した物、魔法に頼りたくないがとにかく時間が足りない、最初は魔法に頼りつつ村の人達には追々自力で作ってもらうようにしていくしか無い
「じゃあ、使ってみたら感想教えてね」
「お、おい!待たんか」
ゴブじいさんには悪いけどやらねばならぬ事が山積みなのだ
俺は店を後にして次の準備に取り掛かる
ーーーーーー
真冬だというのに湯気が立ち登る赤茶けた池…いや沼と言った方が正しいだろうか
「ここなら出来るはず」
「レテウス様…」
「本当にこれで良いんですか…レテウス様」
牛泥棒の一件以降ヨゾとマザは様付けをやめてくれなくなった、なんか距離を感じてしまう
「うん、水は魔法で温めておいたから冷たくないよ、それより滑るから気をつけてね」
(どろんこ~)
そうだな、傍から見れば子供の泥んこ遊びにしか見えないだろう
ここは採掘を終えて放置された山の斜面に在る小さな元ピート泥炭採掘場だ
泥炭地は村落の燃料貯蔵庫、氏族長の息子といえども遊び場には出来ないが元採掘場なら問題ないのだが問題は別にある
レテウス君の力を借りて向こうの大学の図書館で読んだ本に拠ると
ピートの下の層には、高確率で上質な粘土の層が在ると知りレンガやモルタルの原料にしたいが粘土の層という事は水を通さない、水を通さないということは堆積した土はドロドロ、子供が落ちてしまうと抜け出せない底なし沼になり危険なのだ
すり鉢状に掘られた穴は既に雨水が溜まっている
木を使って深さを測ってみるとそこまで深くなくもっとピートが取れそうなものではあるのだけれど、この村の農具は刃が鉄ではない、岩だらけのこの地では浅い層までしか耕せないし深くは掘れない
今やってるのは放置され雨が溜まった穴の水抜き用の側溝作り
「これも魔法でやってくれてもいいのに…」
マザがボソッと呟く、確かにその方が楽だと俺も思う
「僕が居なくてもそう考えた?」
「レテウス様あまり縁起のない事言わないでよ」
「そうだよ…です。レテウス様が居るからつい思った事が口から出ただけで…」
もちろん死ぬつもりはない、だけどなんらかの理由でこの地を離れなければならない事だって有る。居ないから出来ませ〜んじゃ意味が無い
勝手な期待だけど二人には村に変革をもたらす布石で有り核だと思ってる
信頼を得たつもりでも村人たちは急激な変化を嫌うものだ、それが身分を嵩かさに着た子供からの提案なら尚の事
でも村人自身で決めたアイデアなら文句も出にくい、現代なら八、九歳は子供だ、でもここでは違う七歳で大人戦士への準備が始まり、十七歳になる頃には立派な戦士だ
悪ガキだったヨゾとマザも今では勉強の効果と率先して仕事に取り組んでいて、将来有望な若者として村人たちから認識され始めている
村の農作業を改革したいのならこの二人に手柄を取らせるところから始めるのが良いと思ったのだ、本当言うと二人に判らない様に土魔法を使って掘り易くしてたりもする
「ねーねー何してるの?」
村の子供達が真冬の泥んこ遊びを興味深そうに見始めた、まあ冬の寒村に娯楽なんてないからね興味を持つのは当然と言えば当然
「ないしょ」
説明するより見せてあげたほうが好奇心をくすぐるものだ
「この池温かい!」
「あ~、危ないから離れて~落ちたら死んじゃうから」
湯気が立ち昇っていれば近づきたくなるのも判るけど流石に危ない、説明よりもこういう時は『死ぬ』という言葉の方が手っ取り早い
慌てて離れる子供たちを見れば効果てきめんだったとすぐ判る
側溝が完成し水と泥が湯気を立てて山の傾斜の沿って外へ流れ出し始める
「ドロドロだぁ~」
ただそれだけなのだが子供たちはきゃっきゃと楽しそうだ、水位が低くなるとその分側溝も更に掘ってを繰り返しどんどん水と泥を抜いていく
粗方抜き終わったあとは泥をとことん取り除けば下から見えてきたのは青みがかった粘土の層、欲しかったのはこれだ
この痩せた土地の土では計画に合ったものが出来ない…でもこの地に資源が無い訳じゃないのだ採れないだけ
「ぬるぬるのつるつる~」
(にいに、あぶなくない?)
レテウス君の忠告を口に出す前に粘土の層で転ぶ子供たち、温めておいたのが仇になってしまったか…う~んドミノ倒し
「「あはは」」
泣き出してしまうと思った子供たちは笑い転げてむしろ楽しんでいた…それは良いんだがこれ各ご家庭から苦情が出ないだろうか…心配になってきた
汚れてしまったのものは仕方がない風邪を引かないように火魔法で温風を出しながら子供たちに手伝ってもらい粘土を採取していると
「レテウス様~、変な石有った~」
所々に穴の空いた赤黒い石を持ってくる子
「おおぉ~すごい!これは八点!」
「はってん?」
「そう!上から二番目、えらいえらい」
振り返り他の子達に向けてドヤ顔をする男の子
変な石こと沼鉄鉱を見つけて一位になるべく粘土を採取するスピードが上がる男児共…ちょろい
…………
駄目だからね~
(え~!)
何も言わないがさっきからうずうずしているレテウス君の気持ちがだだ漏れで伝わってくる、他の子たちと一緒に遊びたいのだろうが保護者としてシェーナさんに怒られると判っていて許すわけには行かないのだよ
(にいにばっかりずるい!)
ず、ずるいって何が?
(にいにだって子供なのに、にいにはやりたいこと全部してる!ぼくばっかりがまん)
うっ…
(にいには死んじゃうかもしれないことばぁ~っかり!してるのに)
ううっ…でもレテウス君もそっちの世界で図書館とか行けたりするじゃん
(ぼくの読みたい本じゃなくてにいにの読みたいご本ばっかり、むずかしいのばっかり!)
やっぱりこの子俺の存在関係なく元から頭が良いと言うか切れ者だぐうの音も出ない
じゃあちょっとだけ…
勿論ちょっとだけで済むはずもなくシャーナさんにしこたま怒られた、ちなみに怒られている間は感覚を切るためなのかレテウス君は部屋に閉じこもりやがった…ちくしょう
痛い尻を擦りながらベルテに声をかけた
「ねえベルテ、今日のソーサの様子は?」
「そうですねぇ…悪くはなっておりませんがなにぶん事がことでございましたから…」
ベルテの様子からして回復の兆しはないということか、ソーサはギブの妹で一家で唯一の生存者だ、本家に出ずっぱりの叔父上には使いを出して了承を得て今はこうして我が家に置いているのだが一晩で家族全員を失った彼女の気持ちを簡単に理解できるなんて言いたくはない、時間が必要なんだと思う、してやれることと言えば彼女が家族の後を追いたいと思わないようにサポートに回ることくらいだった
ベルテが彼女を抱きかかえて食卓までやってきた、彼女は頷いたり首を振ったりは出来るが喋れないその姿はショックもあるだろうが、水瓶の中で口を両手で必死に抑えていた姿がダブる、今でも亡き兄ギブの言いつけを守ってるように見えるのだ
その後ろから妖狼のソラスも付いてくる。今のところソーサはソラスにべったりだ、クラウも優しいのだがいつも抱きつくのはソラスで寝る時も一緒だ、語源で言えばどちらも『光』を意味する名を持つからなのか女の子同士だから解らないけど、ずっと見守ってくれているソラスには感謝している
ーーーーーー
「火事じゃぁーー」
夜明けから間もなく悲痛な叫びが村に響き渡る
レテウスやサンヴィルを含めた村人たちが家を飛び出しわらわらと集まってくる
「燃えているのはゴブじいさんの工房か!」
「おい!誰か羊飼いんところの棒もってこい」
棒を持った人々が茅葺きの屋根を棒でつついて壊す
「ゴブじいさん!無事で良かった、何が有ったの!?」
呆然と立ち尽くすゴブじいさんを揺する
「お…」
「お?」
「おんしゃぁぁなんちゅう物作ったんじゃぁぁ!」
声が大きすぎて思わず耳を塞ぐがゴブじいさんの怒りは収まらない、両腕に抱えて持ち出した道具をドサッと落としたかと思えば両肩を掴まれ持ち上げられ揺らされる、すっげえ力…ゴブじいさん何歳だよ
「ゴブ殿、落ち着いて下さい」
がっくんがっくん揺さぶられる俺をサンヴィル先生が奪い返してくれた
(にいに…きもちわるい)
「何故こんな事になってしまわれたのです?」
間に入ったフォークがなだめながら聞けば
「こやつが作った燃料を炉に入れただけじゃ!この家は鍛冶のために煙突まで有ったのじゃぞ、それなのにあっという間にこのザマじゃ」
「流石はレテウス様!この様な木炭?は見たことが有りませんよ」
フォーク…褒めてくれてるのは良いんだけど相変わらず空気が読めてない
結局茅葺き屋根を燃やし尽くした後も鍛冶屋の煙突が崩壊するまで超高圧乾燥ピート泥炭は燃え続け、ゴブじいさんはそれを死んだ目で眺め続けた
「レテウス様、デイヴィッド叔父上に使いの者を送らねばなりませんね」
「はい…やっぱり送らないと駄目ですよねぇ…」
「当たり前です」
優しく微笑んでいるけどサンヴィル先生の目は笑っていなかった
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