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NO MORE映画崩壊 -観客が消えた世界で、作り物の少女は本物の心を探す-  作者: 幸いぶん
シアター2.アメコミリブート『マーベラスグラスホッパー』
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チャプター13.死なないで


『アメイジング、対処が間に合ってマス…!

未来のボクたちか。』


郊外から中心まで隈なく見ていく

既に昆虫たちは倒されて、

街の皆の安全は確保されていた。


あの3人が短時間で制圧しているのだろうか、凄い。


《── それでもキミは、ヒーローなのかい?》


『ボクが出る幕は無かったデスカネ、haha。

それならそれで…。

皆が無事なら良かっ────。』


特にボクに出来ることはなかった。

カロースさんから言われた言葉が頭を巡る。


… 本当に役立たずだ。

決意をして飛び出しても、何も出来ていない。

でも、皆が無事なら。


高いビルに登るとあたりをぐるりと見回す。

もう解決したのだろうか。


そう楽観的だったボクの目に飛び込んで来たのは

別のビルの屋上。


『── 父さんッ!!』


ボクを探して追ってきたであろう父さんが

Dr.ゲソマミレに首を捕まれ、

落とされようとしている瞬間。


その上空から

── 誰かが、先に駆けつけていた。


─────────────


Dr.ゲソマミレは背中に生えている10本の虫の足で

父さんの身体を持ち上げている。


『今日を計画日にして良かったよ。

まさかお前とまた会えるとはな。』


『Dr.ゲソ、マミレ。何故だ…?』


『何故だ?それは此方の台詞だろう。

お前のせいで私は全てを失った。

積み上げてきたキャリアも、何も。』


屋上から、足場のつかない外へ。

父さんの身体は宙ぶらりんになっていた。


『君の情熱は知っていた。

それでも、あれは容認出来るものではないッ!!』


『人類は不完全だ…。

病に蝕まれ、寿命は短く、余りにも脆いッ!!!』


『善意は何をしても良いという免罪符じゃないッ!!

研究に学生を利用したキミの判断は間違っている。』


恨み言を吐くゲソマミレに対して

凛とした態度で引かずに、言葉を投げる

場所は違う、だけど、何もかもおんなじだ。


─── "あの時"と。


『… 話にならないな。』


『ぐっ…!?』


『さらばだ、人類の未来を壊した。

─── くそったれの同僚よ。』


次の瞬間、父さんの身体は落ちていく。


「もう二度とッ…!!」


ビルに着地すると、

ボクは間髪入れずにそのまま飛び降りる。

考えている暇なんてない…!


『何…!?』


躊躇している暇なんて、ない…!!


「失いたくないんデスッ!!

だからッ…!!」


ビルの側面を走るように蹴り上げる。

加速して加速して、

目の前で驚いている、父さんに。


『フーディ!?』


伸ばしてはいけなかった手を、伸ばした。


「─── 届けェーーーーーーッ!!!!」


──────────────


フーディが、父親に手を伸ばしている。


「…駄目よ。」


私の口から漏れた言葉。

此処までしたのに、皆を騙してでも

どうにかしなきゃいけなかったのに。


「それだけは、やっちゃ… 。」


主人公は物語の希望だ。

ひっくり返せる未知数があるとしたら

それに賭けるしかなかった。


… それが無くなったら

カロースをどうやって止めるの?


… 無理だ… 足りない…!


死を望んだ私の目の前で、

─── フーディが父親を抱きしめた。


「壊さないでッ…!!

───止めてぇーーーーーーっ!!!!!」


「… わりい、しあう…。」


動揺した私の隙をついて

美桜は片手をフーディたちへ翳す。


鉄扇を使わなくても風を使えたの…?

そんなの私聞いてない。

… ちがう。


「── 春風!!」


"聞こうとすらしてなかった"。


ふわりと優しい風がフーディたちを包み込み

クッションのように受け止める。


呆然として力が抜けていく

私の腕の中から、美桜はするりと抜けて

走っていってしまう。


「ふーでい!大丈夫かっ!?」


「…… thank you… お陰様で、ネ?

流石にあの高さから落ちたら

労災確定デシタネ…!haha…!」


『君は、数日前に家に入り込んできてた…?』


「父ちゃんのほうも無事みてえだな。

ふぃ〜…えかったあぁぁ…。」


"助かった、助かってしまった"。

なのに軽口なんて叩き合って笑っている。


…… ふざ、けるな。


『父さん!?』


『フーディが、もう1人!?

な、何が一体どうなってるんだ!?』


「不味い…!」


「ahー…それに関しては

後程ゆっくりご報告させて頂きマスネ。

少し長いプレゼン資料が必要そうなので、haha。」


リディまでこの場に駆けつけてくる。

"無事だった父親を見せてしまった"。


… なんで、笑ってられるのよ…!!


ヒーローになる主人公は2人とも

これで成長も覚醒もしなくなった。


「…終わりだ、何もかも。」


この映画は有名作品だ。

詰まっている"想い"も多かったはずだ。

それを失うなんて…!!


「でもこれだけは言えマース。」


睨もうとした、憎もうとした

フーディと美桜を


だけど私の視線の先にあったのは


「無事でよかった、本当に。」


父親をみて安堵する

フーディと美桜の優しい笑顔だった。


「───。」


… このシーンをはじめてみた時

父親が死んでしまうのをフーディが見た時。


私はなんて思ったっけ…?


死んでほしいなんて思ったの?

これで良いなんて思ったの?


違ったはずだ。

少なくともこの映画を好きになった時の私は。

…… それなのに

私は、さっき願ってしまったのだ。


生きてて欲しかったと

願ったことのあったキャラクターに。



── 死んでくれ。と。



「… しあう?」


美桜が此方に近づいてくる。

私は口に出せなかった。


恨み言も、自分が正しいと主張する言葉も


「…あ、あぁ…!あああああああッ!!!!!」


ただ感情だけが、ぽとぽとと頬を伝う。

何もわからない、視界が歪んでいく。


目の前にいたはずの2人の顔すら

もう見えなかった。

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