チャプター12.虚偽報告
全部、計画通りだ。
「ぜぇ…ぜぇ…!」
「流石にキツイ?」
「まだまだぁ…!!」
「そろそろ中心街に着くわ。
あとちょっとだけ頑張ってちょうだい
そこからは休んでてもいいから。」
カゴの中の美桜は疲れ切っている。
フーディも誘導した場所についた筈だ。
「ふーでいの方も頑張ってんだろ!!
げそまみれ相手によぉ!!」
「……。」
… コレで良い。
リディの方もシーン的には動き出している頃ね。
それを心配した父親も、外に飛び出しているはず。
「野分ッ!!!」
…… 後は。
──────────────
「此処であっているハズ?」
シアウさんに指示を受けた場所に辿り着くと
ボクは虫の群れを蹴散らしていた。
… おかしい。
「忘れられるワケがありマセン…。
父さんが殺されたのは、確かに
この会社のビルでの筈だ。」
Dr.ゲソマミレは
元々ボクの父さんの同僚。
優秀な開発部の人間だったんだ。
人々の為を思ったバイオテクノロジーの研究。
だが、その善意は成果を求めるあまり
ビジネスマンとして、人として
倫理に外れるものになっていた。
自分の研究に
インターンに来た大学生を利用したんだ。
「それなのにどうしてッ…。」
父さんは行き過ぎたゲソマミレを止めようと
会社へと報告した。
… その逆恨みだった、奴が父さんを殺したのは。
その恨みが籠った、この場所で。
それなのに…!
「なんで、Dr.ゲソマミレが居ないのデスカ…!!」
…… いや、違う。
そうだ、この映画は最初っからそうだった。
ボクが知ってるのとは全部が少しずつ。
「… シアウさんは最初から違う場所にボクを…!
なら、本来の現場はッ…!!」
─────────────
「コレで雑魚は最後ね。」
「あ、後は虫を操る絡繰カなんかを
げそまみれから奪うんだっけかぁ…?」
「……。」
そう言えばそんなこと言ってたっけ。
なんて他人事のように美桜の言葉を聞いていた。
つじつまを合わせる為に
本当と嘘を織り交ぜ続けてきて
…もうなにが本当だったのか自分でもわからない。
「… ふーでいのほうに早く合流しねえとな!
もうのしちまってるかもしれねえけど。」
「その必要はないわ。
言ったでしょう、休憩してて良いって。」
「そういうわけにゃ行かねえよ、仲間だ。」
「……仲間、ね。」
私は、アナタ達の仲間の資格があるのかしらね。
自嘲気味に笑った私を美桜が不思議そうにみている。
「しあう? ───なっ!?」
「そうね、美桜。
アナタならすぐ気づくと思っていたわ。」
そしてすぐに気づいた"私の嘘に"。
アツダンシティのセントラルビル屋上。
「なんで、げそまみれがここにおるんだ!?
ふーでいの方におるはずだろっ!?
しかもありゃあ…!」
「リブート版だとね、見栄えを気にして
シーンによって舞台が変わってる場所があるの。」
そこにいる
"フーディの父親とゲソマミレ"を。
私は知っている。
アナタはよく観ている、いつも周りを
真っ先に気付くのはわかっていたわ。
だからこそ"アナタの近くにいた"。
「あのままじゃ不味いッ!!」
「── 駄目よ。」
鉄扇を引き抜こうとした手を
全体重を乗せて抑え込んだ。
「何すんだべ、しあう!!離せよっ!!」
「グラスホッパーが
ヒーローとして覚醒するシーン
アレね、全シリーズ通して共通してるの。」
「言ってる場合かっ!?」
敵に対する警戒はしっかりしているその反面
「憧れていた"父親の死"よ。」
「… おめえ、それって… 。」
味方を"信じすぎている"。
「ふーでいの父親を見殺しにする気かっ!!」
怒りよりも信じられないという顔だ。
そう、怒りに振り切れないのもアナタの弱点。
「世界を救う為よ、
この世界のフーディを覚醒させなければ
私達に勝ち目はないの。」
だから嘘を吹き込んだ。
フーディをここに来させないように。
美桜のスタミナを奪って抑え込めるように。
ビネガーに犯されたカロースを何とかするには
最低限でも、可能性を得る為には
この映画の"覚醒した主人公"が必要だったから。
「人が死ぬんだぞっ!?」
「── やらなければ世界が終わるのッ!!!!」
美桜は行こうとはする
そこまでわかっていて、此処に連れてきた。
筋書き通りの雑魚の処理を兼ねて
"疲れさせる為に"無茶なことをさせた。
それでも無理矢理ふりほどける筈だ。
私に"怪我をさせるつもり"でいけば。
… 出来ないでしょう?
私と違って、優しいアナタには。
この状況を切り抜けるにはこれしかないの。
恨むならいくらでも恨めば ────
「……しあう。」
ふと目が合った彼女は
怒鳴るでも
軽蔑するでもなく
ただ寂しげな声色で私の名前を呼んだ。
「──── ッ!!」
このまま行けば計画通りに進むんだ
此処までしたんだ、何のために騙した。
世界を救う為だ。
私は…私は正しい…ッ…!!
「もう、手遅れ ───」
「I won't let that happen!!!!」
父親がビルから落とされようとしているのから
目を背けようとした、だけど
その声につられて上空を見上げる。
「な、なんでっ…!!」
「ぐらすほっぱーっ!!」
… なん、で。
リディは父親が死んだ後に駆けつける。
それが本来の筋書きだ。
くるワケがない…。
フーディだって誘導をした筈だ。
性格的に疑うはずもないのをわかってて
騙した、はずなのに…。
「別の世界だとしても…!!
死なせない、もう二度とッ!!!!!」
「なんでなんで、なんでっ…!!
そこにいるのよ…ッ…!!」
来てほしくなかったヒーローが、
── 間に合ってしまった。




