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ep.final『胎動』⑩

 勇者ギデオンが先陣を切って魔王アゥリマに斬りかかる!!

 バリアーを破壊し、予想外の大ダメージを負った今ならば攻撃が通るはずだ、と気炎を上げて!!


「このぉ……小賢しいッッッ!!!」


 しかし、魔王アゥリマは自らに刺さっていた死神の鎌でギデオンの振るう霊剣を受け止めた!!


「ッッ!!?」


 無論、鎌はアゥリマの武器ではない。ましてや戦斧アズ・ダハーグすら砕いた霊剣の相手だ。アゥリマとしてはこの鎌でギデオンの相手をするつもりはない。

 アゥリマは霊剣を受け止めた直後、鎌をあっさりと手放した。

 鎌はただ、自分が斬撃を回避するためだけに使ったのだ。

 血の噴出するような大ダメージを受けても、魔王の戦闘センスは健在だ。

 攻撃のテンポ狂わされたギデオンは、しかしすぐさま体勢を立て直して斬りかかる。

 が、無理に立て直した体勢だ。

 魔王は甲冑を纏った腕で剣を受け流す。

 二度、三度とギデオンは斬撃を受け流される。


(やはり……そう簡単に斬らせてはもらえないか)


 アゥリマはギデオンの霊剣を最大限に警戒している。

 それは裏を返せば、霊剣以外の攻撃を通す好機ということだ。

 ましてや、鎌によるダメージで十全の集中力は発揮できないはずだ。

 ギデオンは霊剣を握る右手を咄嗟に開き、アゥリマの腹に叩き込む。


「ルキアート・ディジタウスッッッ!!!」

「がぁ……ッッ!!!」


 果たして、ダメージは通った。

 ギデオンの掌から伝わる灼熱がアゥリマの体を鎧越しに焼いたのだ。

 しかし、それでたじろぐ魔王ではない。

 灼熱に耐え、すぐさま反撃の拳をギデオンに叩き込む。


「ハァァッッッ!!!」

「ぐぁ……ッッッ!!!」


 ギデオンはなるべく、拳の衝撃に逆らわないように後退することでダメージを軽減する。

 大ダメージを負ったこの状態であっても、アゥリマの打撃をモロに食らえばタダでは済まない。実際に受けることでギデオンはその事実を確信した。

 そして、ギデオンが一時後退しても勇者パーティの猛攻は終わらない。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ!!!」


 ヴォルガーは拳の連打でアゥリマに挑む。先程押し負けたラッシュのリベンジだ。


「甘いッッ!!」


 アゥリマの拳が再び光り輝く。

 魔力を伴う連打がヴォルガーの猛攻を迎え撃つ。

 一瞬の間に幾度もぶつかり合う拳と拳。

 一見互角の撃ち合いでもダメージを受けるのはヴォルガーだけ……先程のぶつかり合いは確かにそうだった。

 しかしバリアーの砕けた今、アゥリマの拳もヴォルガーとの撃ち合いで着実にダメージを受けている。ぶつかり合っているヴォルガーにはそれが実感できた。

 そしてダメージが通るのであれば、通せる戦法の幅も広がる。

 アゥリマの右腕が、突然動かなくなった。


「……っっ!!??」


 一瞬の後、アゥリマは理解する。

 右腕が動かなくなったのは、物理的に拘束されたからだ。

 巻き付いていたのは黄金色の蔦。金属で構成された植物。

 ナディから貰った種を使った、ラピアによる妨害だ。


「今です、ヴォルガーくんっ!!」

(植物を操る魔法……しかし『金の緑』を瞬時に成長させ操るとは……ッッ!!)


 気がついた時には、ヴォルガーの拳がアゥリマに叩き込まれていた。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッ!!!」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!」


 拳がぶつかる度に鎧が砕かれていく。

 身に纏う鎧はバリアーとの併用が前提。戦斧と違い、ヴォルガーに砕けぬほどの硬度ではない。

 そして砕かれた鎧の先で、確実にダメージは蓄積されている。


「この……ッッッ!!!」


 右腕に巻き付いた蔦の拘束から力ずくで脱し、叩き込まれる拳を魔王は掴んだ。


「ッッ!!!??」


 その瞬間、ヴォルガーは凄まじい力と浮遊感を覚えた。

 アゥリマの膂力は、人間としては最大級の巨体であるヴォルガーを軽々と持ち上げた。

 まるで、悪童がぬいぐるみを乱暴に扱うかのような軽さである。

 しかしアゥリマの判断力は持ち上げたヴォルガーを無闇に振り回すようなことはしない。

 この状況での攻撃はなるべく簡潔にせねば反撃の隙になる……そう理解していた。

 アゥリマは持ち上げたヴォルガーを投げ飛ばし、叩きつけた。


「ぐあぁぁぁ……っっっ!!!」


 衝撃で石畳にクレーターが生まれる。

 ヴォルガー自身も、全身にヒビが入ったかのような痛みに悶えた。

 あまりにもシンプルで、しかし強い技だ。

 アゥリマの対応は、対ヴォルガーとしては極めて正しかった。

 だが、これは集団戦だ。

 ヴォルガーとアゥリマの距離が離れたという状況を生かす手立てもある。


「オブシディオ・ストミノ・ラボルトッッッ!!!」


 リアの叫び声に気づいた時には、アゥリマは360°を次元のポータルに囲まれていた。

 逃げ場の無いようにアゥリマを囲んだ計30程のポータルは、開かれたその瞬間に攻撃を完了していた。

 全てのポータルから、同時に雷撃がアゥリマを襲う。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!!」


 リアの攻撃は、天候魔法と空間魔法の複合。

 高い空で雷雲を発生させ、空と魔王城とを繋げるポータルを経由して対象に雷を直接浴びせる……この攻撃を、アゥリマを取り囲めるほど重ねて発動したのだ。


「妾に刃向かった非礼、消し炭になって詫びるのじゃ!!」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!!」


 僅かな時間があまりにも永く感じる、雷撃の拷問。

 それが終わり、ポータルが消えた今、アゥリマにどれほどのダメージを与えられたのか鎧越しで性格に測ることは難しい。

 しかし、程度はどうあれ通った。

 更なる攻撃を重ねる以外の選択肢は無かった。


「アゥリマッッッッ!!!」


 今度こそ魔王を斬らんと、ギデオンが霊剣を携えて接近する。


「小癪なぁぁぁッッッ!!!」


 アゥリマは拳を叩きつけてくる……が、ギデオンはそれを紙一重で回避した。

 やはり、リアの雷撃は確実にアゥリマにダメージを与えていたのだ。

 そして、空振った右腕は剣士にとってあまりにも絶好のターゲットだ。

 霊剣に魔力を込め、振り上げる。


「ルキアート・レクス・ゼブルッッッ!!!」


 魔王の右腕――その肘から先が切断され、宙を舞っていた。

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