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ep.final『胎動』⑨

「がぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!」


 アゥリマの体と精神を衝撃が走る。

 この戦いで初めて、アゥリマは心からの叫び声を発した。


「ぐぅぅぅ……っっ!!!」


 これだけの大技を通し、決定的な破壊を成し遂げたヴォルガーの体もまた無傷ではいられなかった。

 技の反動に身を任せ、反撃に備えてアゥリマから距離を取る。


「……『の魔王』との決着以来だな、我の盾が打ち破られるのは」


 盾と矛……脅威たる武器を二つも失った魔王は、間違いなく不利な状況に立たされていた。

 それは、この世界へ侵攻するより前……人間より遙かに永い命を持つ魔族の感覚であっても『懐かしい』と思うほどの昔、魔界の覇権を賭けて起こった戦争以来の状況であった。

四人がかりとはいえ、宿敵たる『秩の魔王』と比肩しうる敵が目の前にいた。

 それを悟った魔王アゥリマは――高らかに笑った。


「ふはははははははははは!!!! この世界にここまでの逸材がいるとは想像もしていなかった!!! ギデオン・アビメルク! リアトゥム・リム・アトゥム! ヴォルガー・フィルヴォルグ! アスクラピア・パイエルオン! 貴様らの名前、我が記憶に刻んでやろう!!! 光栄に思うがよい!!!」


 魔王アゥリマは、確かに不利な状況に立たされた。

 しかしそれはあくまで、この戦闘が始まった時点のアゥリマ自身と比較した場合の話だ。

 勇者パーティの四人と比較した場合はどうだろうか?

 四人はアゥリマの武装を奪うという大きなチャンスを掴んだ。

 しかし、そのチャンスのためにどれだけの体力・魔力を消耗しただろうか?

 魔王アゥリマは、どれだけの余力を残しているだろうか?

 アゥリマにとってこの戦いはまだ『久々に骨のある相手と戦える』という充実感を味わうだけの余裕のあるものであった。

 武装を失った代わりに、その気力はむしろ高まっているようにすら見える。

 それを実感した勇者達は、明らかに気圧されてしまった。


 そして、更に単純な事実がある。

 勇者達四人は、魔王の武装を剥がす為の攻防で大きなダメージを負ってしまった。

 息つく暇もないこの戦場では、ラピアによる治癒も間に合わないようなダメージだ。

 対して、盾で身を護り続けた魔王は一切のダメージを負っていない。

 実に非情な事実だ。勇者達は既に息も絶え絶えというのに、事実上のスタートラインに立ったばかりなのだ。


「この戦い……流石の我も無傷ではいられまい……!! 血で血を洗う攻防など、『秩の魔王』との戦い以来ではないか!! 貴様らの技が我にどれだけの傷を与えることができるか……存分に愉しませてもらうぞ!!」

「くっ……!!」


 あまりにも挑発的な魔王アゥリマの言葉に、勇者達は気圧される。


『果たして、自分達は本当に魔王に傷をつけることができるのか?』


 そんな弱気な考えが勇者達の頭を掠めなかったといえば、嘘になる。

 しかし、人類の命運を賭けた戦いだ。前のめりに進むしかない。

 少しでもダメージを与え……そして討伐に繋げる。

 例え命を落とすことがあろうと、仲間が魔王を打ち倒せるように……。

 勇者達は覚悟を固めた。

 魔王は当然、臨戦態勢だ。

 いよいよ本当の最終決戦が始まる……その時であった。


 ――魔王アゥリマの背後に、突如として黒い影が現れた。


「くくくくく……お忘れですか、魔王様……」


 そして黒い影は……巨大な鎌を魔王アゥリマに突き立てた!!


「私が貴方に従うのは『いつでも命を狙ってよい』という契約があってのことだということをーーーッッッッ!!!!」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッ!!!!」


 見事!!!

 巨大な鎌は魔王アゥリマに深々と突き刺さった!!!


『裏切り者を始末せよ。その代わり、いつでも魔王アゥリマの命を狙ってよい』


 この契約で魔王アゥリマに従っていた黒い死神・ザルトシュルトは、最大の好機に代償を取り立てに現れたのだ!!!


「わはははははははははははは!!!! 死ねぇぇぇぇぇぃ!! 魔王様ぁぁぁぁッッッッ!!!」


 ザルトシュルトは死神の鎌を刺し続ける!!

 深く!! より深く!!

 魔王の命を刈り取るために!!


「この……愚か者がぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!」


 哀れ!!!

 魔王怒りの鉄拳が飛び出し、黒い死神・ザルトシュルトは一撃で絶命した!!!


「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ!!! 痛い!! 鎌が痛いぞちくしょぉぉぉぉッッッッ!!!」


 突然の暗殺未遂を受けた魔王アゥリマの心には理不尽に対する怒りが湧いてくる!!

 裏切り者を始末するため部下にしたザルトシュルトだったが、振り返ってみれば魔王軍を裏切る者は一人としていなかった!!

 なんならむしろザルトシュルト自身が唯一の裏切り者だった!!

 こんな事態になる前にどうして誰も止めてくれなかったのか!!

 いや……思い返してみればキルデイルが『もうあいつクビにしましょうよ!!』と止めていた!!

 もっと強く止めてくれればよかったのに!!

 魔王アゥリマの心には理不尽に対する怒りが無限に湧き出てくる!!


 一方の勇者達は突然の事態を呆然と見つめるばかりであったが……ふと、勇者ギデオンが気づいて仲間達に呼びかける!!


「……あっ、そ、そうだ!! 今のうちに畳みかけるぞ!!」

「……えっ、あっ、ああ!! 勇者殿の言う通り、魔王が回復せぬうちに攻めねば!!」

「突然魔王を攻撃したあの魔族……きっとあの魔族にも魔王を裏切る深い事情が恐らくあったに違いない多分!! あの魔族の犠牲に報いるためにも畳みかけるぞ!!」

「そ、そうじゃ!! よくわからんが何かしらのドラマがあったに違いないのじゃ!!」


 勇者ギデオンの言葉により士気を高める面々。

 対する魔王アゥリマは過去イチレベルの痛みで勇者達の話は全く耳に入らない!!


「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! この忌々しい鎌がちくしょぉぉぉぉぉ!!!」


 自らの肩に深々と突き刺さった死神の鎌……魔王はそれに手をかけ、力を入れる!!


「あ、そんなに深く刺さったものを引っこ抜いたら――」


 職業病で思わず魔王アゥリマに声をかけてしまうラピア!!

 しかしアゥリマの耳にそんな声が届くはずもなく、鎌を思いっきり引っこ抜く!!

血液が噴き出す!!!


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!! 死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッッッッ!!!!」

「畳みかけるぞッッッッ!!!!」

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