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いじめ対応マニュアルー転生教師はクビをかけて貴族令嬢を糾弾するー  作者: 神埼 アオイ
第2章 頑張れアザラシ!ーヴァレリオーズ温泉修学旅行ー
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さよならアズーナ 最終回

思いつきで書き始めた物語がどんどん膨らんでここまできました。

私にとっては愛しい物語とキャラです。

もし、誰かにこの愛しさが伝わったら、凄く嬉しい。

また、お会いしましょう。

王子のコンパートメントには、男の子が集合していた。


「殿下。失礼いたしました。先輩方とは心通わせまして。殿下のご学友として、わたくしもおつきあいさせていただくことにいたしました。」

アゼリアは、丁寧に会釈をして王子に伝えた。


「うむ」

王子は、かくかくした様子を隠さず、への字に口元を歪めて立っていた。

私がバルトに指示したとおり、トレーニングウエアにお着替えさせてある。


「では。私はこれにて失礼いたしますわ。ごきげんよう皆様。」

くるりと(きびす)をかえしてアゼリアが立ち去ろうとするのをガカロが抱きついて止めた。


「アゼリア、まってえ!ごめんなさあい!」

「…」

「貴女をないがしろにするつもりはなかった!」「すまない!この通りだ!」


なにを戯言(たわごと)を…と侯爵令嬢は唇だけで言葉を紡ぎ、


「貴方がたに、何の感情もありません。

わたくしは王子の婚約者。王太子候補。

敵に塩を送るような真似はけっしていたしませんわ。

ほら、おとなしく旅の終わりを待っておりました。

ご立派でしょ?

寂しいとか、悲しいとか、恨み言は申しません。

わたくしは、待つと決めたのです。

殿下がわたくしを求めるのを。

それまでは、私待ちます。いくらでも…待てますわ。」


毅然とした侯爵令嬢の表情は、高貴の中に覚悟をまとい、愛おしい程孤高にあった。


「なあに、馬鹿なこと言ってるのお。」

女教師が、沈鬱な空気をかき乱す。


「王子がアゼリアさんのために、どれだけ努力したか。

この子ったらねえ」

女教師!何を?


王子は、あわあわして「コーチ殿!」と遮ろうとする。

アオイは、しゅた!と、いつものポーズ。


「アゼリアさんが喜ぶと思って、いつもの日常から離れて、ダイエットに励んだの!

そりゃもう、頑張ったのよお~。筋力トレーニングにデトックス。食事改善に、ランニング。

果ては、エア卓球を極め、免許皆伝!」

王子、真っ赤に照れる。



「まあ…でも」

お見かけしたご様子では、以前と、あまりお変わりがない、ような?


「っと、思うでしょ?でしょ?

お顔も首も、まんま、でしょ?と・こ・ろ・が!」

じゃ、じゃ、じゃーん♪


「コーチ!やめて下さい!ひえ~バルトやめろお~~」

バルトが王子の上着をぬぎっと抜いた。



きゃあっ


あられのない婚約者の姿を見まいと、侯爵令嬢は手で目を覆う、が。

その隙間から、しっかりと。

見てしまった。


「まあ!」


ぽんぽんお腹の脂肪がとれて、平らになったお腹。

ふつーになった身体。

その上に、肉。

くびれのない首。

そして顔の贅肉。

マッチ棒。 こけし王子。


三人組は、さすが2度目は誰一人笑いません。能面の貴族子息。


「マイナス4・5キロ!素晴らしい!」

女教師は無理矢理の着地点にもっていこうと力業を放つ。


「いかが?アゼリアさん」

「す・凄い、ですわ!見事、ですわ!

あの、頑なな脂肪が、どこに行ったのでしょう!

まあまあ、皮がたるんたるん。」


婚前の淑女が、男性の素肌をしげしげ見ていいのか、と誰もが思ったが、そこはスルー。


「のびた皮は、時間と共にたるみがとれます。

次の夏には、川遊びの際に王子の勇姿がご覧いただけることでしょう!」

「たった一週間で、なあんということでしょう!」

アゼリア、ビフォアアフター的に感動してますよ。

よしよし。あと一押し。


「どおです、王子の努力は本物です!

これも一重に、アゼリア、貴女を驚かせたい一心!

し・か・も!」

「ーしかも?」


「お顔痩せエステは、アゼリアさんの十八番!

そこは貴女に甘えようという、王子の魂胆!

なんてお可愛らしい。王子の純情、わかりますねっアゼリアさん」


ま。まあ、まあ…


美少女は、てれてれする表情を何とか引き締めて、王子を問い正す。



「殿下」

「お、おう」


「本当に、私のためにお痩せに?」

「…」


「わたくしの小言がお嫌で、逃れたのではなく?」

「う」


「わたくしの料理人の献立が、お嫌になったのではなく?」

「む」



アオイは焦る。

ええい、このむっつり王子、さっさと告白しないとアゼリアが曲解するじゃん!



その時、腹黒の腹心が動いた。


「アゼリア嬢。フェーベルトの男心をご披露しよう。」


バルトがばさ、と上着を王子にかぶせて(なあにをするう!バルトぉぉ!)という王子の焦りをふさいだ。


「水球大会で弟たちが得点を入れたら、バラすつもりだった、フェーベルトの な・い・しょ♪」

バルトは人差し指を口元にあてて、お茶目にウインク。


「んまっ」

「わあ!バルトお、早く早く!」

ふごふごタオル地と格闘している王子をバルザックが押さえ込んでる。


「はいはい。

第3位!フェーベルトの寝室にあるかくし金庫の番号は」

「あっ、言うな!バルト!」

復活の王子はバルザックに羽交い締めされている。


「番号は?」

「ふ。1107。」

「え…わたくしの、誕生日?」

「正解」


「やるう!バルト、第2位はあ?」

「はいはい。ーそのかくし金庫の中身は…」

うごーとタオルおばけがうごめくが、筋力男は動じない。


「中身…」

「アゼリア嬢。貴女からの手紙だよ。金庫にみっしり。」


ぬるーい空気が辺りに漂い始めたわ。

このもっさり!大したむっつりスケベじゃん。

アゼリア、活き活きと嬉しそうに頬を染めている。


「お返事はいただけなくとも、そのようにお心に…」


「さあ、そして、第1位」

「うう…もう、ない!ないぞっ!」


「黙ってろ。第1位。ーそこのイヌだ。

そのイヌの名前は~~」


バルトっぉぉお、お前と、縁を、切るぞっ

「言ってろ。

そのイヌの名前は、リーア、だ。」

「あ、あらっ」


「そう。アゼリアの幼称。王子が貴女が学院に入るまで使っていた呼び名ですよ。


王子は自室で、庭で、このイヌと戯れる時に、貴女の名前を呼んでいるんだよ。

リーア、リーア、って。」



「どうだい?こいつはむっつりだが、ホントは貴女とでれでれしたいただの若者だよ。

愛しい人の望む姿になって驚かそうという無邪気な馬鹿だよ。

貴女の愛に甘えてる、どうしようもない坊やだよ。

でも、僕は、こいつのこういう所が好きなんだ。

貴女もそうでしょう?アゼリア嬢」


すべてを暴露されて、脱力した王子は、やけくそになって吐き捨てる。


「惚れて、悪いか。王国一の美少女が、俺に惚れてるんだ。

俺は将来、全力で、アゼリアを守るんだ。

それだけの男になると、決めたんだ。

だからアゼリアを待たせ…うお?」


「はいはい、未婚は退出する~。後は私にまかせなさい。」

うれし涙のアゼリアが王子に抱きついてしまったのだ。


このような不敬、このような不純、人目があっては後々アゼリアが恥ずかしがることだろう。


う、う、と嗚咽を押し隠す恋人の肩を王子がそっと包んでいる。



わたくし、これでどんなことも立ち向かえます。

わたくしは、愛されているのですね。求められているのですね。


(王子、やっぱ彼女なんかトラブルあるんじゃない?)

(わからん。アーボルトに探りを入れてみる…しかし)


(なに?)


(女の涙は最強の武器とは、よくぞ言ったな…)


こいつより、俺の方が、めろめろだってことを自覚したぞ…




よし。

一件落着。

再び列車を降りると、みんなが待っていた。


クレアがアゼリアに謝罪。アゼリアは笑って和解。フローラにアゼリアはこそこそ話。多分腐女子的な告白。三人組とバルトは王子を冷やかし、王子がぶすっとむくれている。照れ隠し。


ああ。

最後にこんなみんなを見ることが出来て、幸せだあ…。



「先生、それではまた学院で。」


「先生、今度僕も弟みたいに教官室へお伺いしてもいいですか?」


「先生、またクレア様と女子会いたしましょう。招待状を出しますわ。」


「イーゼさあん。僕のマーレをよろしくね。予約いれとくから!」



それぞれが、幸せな約束をくれる。

ありがとう。でも、もう会うことはできないの。



「コーチ殿。本当に世話になった。いい旅だった。これからの政策にも参考になったし、反対勢力の懸念も自覚できた…何より、許嫁と心通わせたことが…」


アオイは淑女の礼をして、クレアの時と同様、別れを告げる。


「殿下。貴方の一途な性格は吉とも凶ともなりましょう。

でも、忘れないでね。貴方には信頼できる部下が重臣が、友がいます。

人を大事にしてね。信頼には信頼を。

それであれば、貴方は賢王としてこの国を栄えさせるでしょう。

教師は成長を助け成長を見守る嬉しい職業。されど、別れが必ずある、寂しい職業です。」



「何を。また王宮で卓球をしようぞ。俺はまだまだ強くなる。コーチ殿を招聘するからな。」


ありがとうございます。

でも、または、ないのです。

私の抜けたアオイ・リーゼンバーグが貴方を導くことでしょう。

さようなら。


「アオイ、先に私が行きます。貴女を戻す準備が出来たら召還しますね。」

帰りの馬車の中、イーゼが優しく切り出した。


「うん。ありがとう。ー本当に、いいの?」


「もちろんです。貴女あっての私、ですよ。」

イーゼはニイ、と笑って、

行きます

と言った後、かくんと(こうべ)を落とした。



「ハンス・イーゼ。」


しばらくは意識が戻らない夫にアオイは語りかける。


「イーゼ。貴方の猫みたいな微笑みが好き。長い指も髪も、深い声も好き。

マーレ師として頑張る貴方が好き。

アオイを甘やかす貴方が大好き。

この男尊女卑の社会の中で、色眼鏡なしにアオイを見つめた貴方が大好き。

ありがとう。

アオイをよろしくね。

気が強いけど、母親をはやくに亡くして、この子も寂しがりやなの。

不器用だから仕事に追われて貴方をないがしろにするかもしれないけど。

その時には、たっぷり時間をかけて話し合ってね。

伊勢に出会わせてくれて、ありがとう。

さよなら。愛しい人。」



「おやあ、アオイ何を泣いているんですかあ。」


イーゼが目覚めた。伊勢の残滓のあるイーゼが。


朋成さんの抜けた、イーゼが。


イーゼはふわ、とアオイを抱きしめる。


「ーわかっていますよ。向こうで私が待っています。」


「イーゼ」


「ありがとう、碧さん。さよなら。」


さよなら。

さよなら、イーゼ。


さよなら、アズーナ







翌日、藍子と駅で待ち合わせする碧は、花束を用意する。


病院へのお見舞いの花か、それとも墓前の手向けの花か…

それは、この物語を読んだあなたが決めること。




この世界は誰かの物語。




誰かの思いが動かしているのかも、しれない。
















ちょっと悩んでいたアゼリア嬢のお話は章立てしないで独立させます。

頑張りますので、可愛がってくださいね。アゼリアちゃんのスキル炸裂!ってな話です。

よろしくお願いします。

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