アゼリア再び 王都到着
いつもありがとうございます!
ここまでお読み下さった方々、あと一回です!
前章と違って、伏線回収しない分、書くのが楽でした。
よかったら感想・評価お願いします。
「お帰りなさいませ。フェーベルト殿下、さぞやお疲れでございましょう。」
駅のプラットフォームで、美少女は完璧なカーテシーをして、微笑んだ。
爆裂破壊光線!
王子後ろへのけぞってフリーズしている。
朝露に輝く薔薇のつぼみのような深紅のドレスに、アンゴラのような上質の細い毛糸で飾り編みした真っ白のロングケープをまとい、そろいの帽子をかぶっている。こぼれるストロベリーブロンドの巻き毛が、今日は縦にロールしている。帽子のベルベットのリボンが華奢な首に垂れ、深紅の影を形作る。
「…綺麗」
「なんて麗しい…」
アゼリアに初めて会った三人娘は、ほう、とため息をつく。
その気配に振り向いた美少女は、
「殿下、こちらの方々は?」
と、鈴の転がるような声で尋ねた。
怖い。
美しい薔薇には、こんなにとげがあるのね…
「わ、わたくし、殿下の同学年の、ミュージア・サザンでございます!」
「同じく、レーナ・ガジュランでございます。」「ピア・ショーレンにございます。」
そう。身分の低い者から、名乗るのが筋。
美少女は、殿下にかこつけて、名乗れ、とドヤしたのだ。
「アゼリア・アズ・ローレイナにございます。みなさん、殿下とご視察、を?」
「…」
怖い。
美しいって、怖い。
王子は更にフリーズしてる。
お付きの侍従さんもガードさんも、巻き込まれまいと、お荷物をさっさか運んでる。
ま、私たちの荷物まで?ありがとう。馬車までお願い。
うわ、侍従さんたら、アゼリアの侍女と護衛にも目を合わせない。あちらも微笑みを貼り付けて立っている。
「いや、うん、えーと…」
王子、しどろもどろ。脇汗だわね。
長いまつげが、ばさばさいってるわね。
「やあ、アゼリア嬢、お久しぶりだ。フェーベルトのお迎えだね。」
バルトが朗らかにご挨拶をして、列車から出てきた。
ものすごい冷気がアゼリアから漂う。
「バルト・アズ・ミズリ様。ごきげんよう。貴方もご視察だったのね。この方達と。」
「ああ、こちらの三令嬢は、あいつらのガールフレンドだよ。」
「え」
うわお、腹黒の腹心、それは無いわ!
王子とあんたは守れるけど、あいつらはっ!
「わあ、アゼリアだあ!」「アゼリア嬢、お久しゅう」「アゼリア!会いたかったぞ!」
三人男は、脳天気に扉から下りてきた。
「…皆様、ごきげんよう。…そう。女友達と旅を。不埒な…」
「え、何?」「ええ?」「えええ?」
美少女は、汚いものを見るかのような目をし、口元を深紅の扇で覆った。
いまや誰もプラットフォームから動けない。
イーゼとクレアとフローラは、アゼリアに会う前に駅舎に入って、精算の話をしている。
二人分支払うというイーゼと、招待した顔をつぶすまいとするクレア、商売人のメンツにかけて自腹をきっちりすると主張するフローラの3人が互いに引かず、駅長を巻き込んでいるはず。
クレアとイーゼの助力はない。
声も出ず、ふるふるしている三人娘。
あんぐり口をあけて、言い返せない三人組。
目が泳いでいる王子。
三人組へのアゼリアの執着を読み切れなかったバルト。
円の中心には、超絶美少女。
「クレア様の領地に乗り込む殿下。女連れでお楽しみの殿方たち。
学院は、いつからそのような爛れた人たちに支配されるように?」
じろり。
絶対零度のレーザービーム。
「ローレイナ侯爵令嬢、わたくしたちは」
「お黙りなさい。平民の分際で、口火を切るなどはしたない。」
ぴしゃり。
うひゃあ、すべての怒りが彼女たちに向かってる。
「ひ」
「下賤が…貴族の子息にちやほやされて、娼婦にでもなるおつもり?」
ふ。っと睨め付けるような目が、彼女たちをロックオン。斜め45度で見下げたように皮肉に微笑む。
ふわあ、貴族社会の中だと、この子こんなに悪役令嬢になれるのねえ。
(あ。そうか)
「アゼリアさん。」
令嬢は私に振り向く。私は淑女の礼。
「先生。」
少し令嬢の表情が和らぐ。
「ちょっと、列車のラウンジをご覧になりません?とても素敵よ。」
「…。」
「女の子だけに、私から話があります。アゼリアさんも。中にお入りなさい。」
「え、先生?あの…」
貴族社会のルールに置くから、説得できないのよ。
学院のルールで、ここは乗り切るわよ!
私は先生。君たちは、生徒!
(…勝算は、あるんですか)
(まかせて。あなたたちは、王子の部屋を綺麗にしなさい。そこで王子を含めて全員待機。バルトくん、いいわね)
さてさて。
アゼリアは列車のラウンジをくるくる見回して、勧められたソファに座った。
「素晴らしい内装ですわ。このソファも、最新の流行を取り入れてますのね!壁紙も、電飾も、なんて品がよろしいの。先生、ずるいですわ、こんな列車でご旅行されたのね。」
流行、となると貪欲になるのが、おしゃれ番長である。
うきうき、とした所に、さあ、しかけましょう!
私は真顔で、ひそっとアゼリアに打ち明ける。
「アゼリアさん。この子たち、実は隠密なのよ。」
「へ」「は」「ほ」
三人娘は奇妙な反応だが、アゼリアはスルー。
「おんみつ?」
「そお。実はね、クレアの婿を選ぶ旅、という噂が立って」
「婿?!うそ、クレアお姉様に?」
しめしめ、のってきたわい。
「もちろん、でたらめよ。ほらいずれも良家の子息。しかも美形。噂に振り回されて、クレアもご立腹だったわ。」
「偽りでしたのね。ああ、よかった。」
「…よかった?」
あら?
「だって、先生。わたくしもう少し、お姉様と、楽しみ、たいですわ…」
超絶美少女は、はにかんで、うっすら頬に朱が捌ける。
にやり。
「アゼリアさん。この子達は、実は、クレア親衛隊なの。クレアを愛し、クレアで妄想を膨らますへんた…変わったご趣味をお持ちなの。」
三人娘、くらーい顔で怯えていたのが、私の言葉を聞いて、ぱっと生き返った。
「そうです!わたしたちは、クレア親衛隊!」
「りりしいクレア。男前のクレア。騎士の勇ましさと聖女の清らかさ、そしてほのかな色気!」
「そのクレアに、お婿というなら、調査しカップリングの是非を検討するのが我らの努め!!」
クレア、さいこう~!!!
すげ。
ま、事実だけど。
「そうでしたの…。彼らがクレアにふさわしいかと、調査を」
アゼリアの雰囲気が、ころっと変わったわ。もとの私が知っているアゼリア。
素直で、愛らしくて、人たらしのアゼリア。
「アゼリア嬢、わたくしたち、自身を『腐女子』と称しておりますの。そして、クレアのあれやこれやを妄想し楽しむことを『腐女子のあそび』と言いますの…」
「ま」
「どの殿方とクレアが寄り添えるか…いろいろ試してみましたの…」
「まあ。…で、どなたが?」
「驚いて下さいね…私たちの中では、ガカロさんが一番かと。」
「まっ。そのココロは?」
「やはり、ペットを飼う女伯爵、という絵面に、萌えまして。」
「まあ。まあ。まあ♪」
おお。
アゼリア、のりのり。
趣向は身分を超える!今や、ミュージアさんは新しい同志を見いだし、アゼリアは新しい世界に踏み込んだのね。
よしよし。
「では、私たちは、これで失礼いたしますわ。今までの回覧ノートは、一度ローレイナ家にお送りしますわね♪」
「お願いいたしますわ!先輩方」
「親衛隊オンリーのお茶会には、お招きしますわね!」
「とっておきの茶葉をお持ちします。」
楽しみですわ~きゃああ~
クレアありがとう。雄々しく育ってくれて。
「ー少しは、誤解が解けたかしら?」
「先生。…でも、殿下が私を謀ったことは、事実です。
わたくし、寂しかったわ。
あの三人も、殿下も、クレア、そして先生までお出かけになるのに。
そこにわたくしが居ないなんて。」
アゼリアは、大きな瞳をうるっとさせた。
「分かっています。殿下と私が婚前旅行なんて、第2王子派の格好のえさをばらまくつもりはございません。わたくしは王太子妃候補。うかつな振る舞いはできません。」
でも、でも。
わたくし、寂しかった ひとりで立ち向かうのは…
侯爵令嬢は、泣かなかった。少し潤ませた瞳に新たな光を宿して、厳しい表情を作った。
「ね、アゼリア。…何か、あった?旅行の件以外に。」
美少女は少し微笑んで
「いいえ、先生。わたくしの問題はわたくしが解決いたします。
それより、今はフェーベルト殿下ですわ。」
この言葉の意味をアオイ=碧が理解することはなかった。
アゼリアの物語は、またのお話…
「ー壁に耳あり」
「ジョージにメアリ」
王子のコンパートメントのドアが開いた。この合い言葉流行るのかしら。
さあ、王子!アゼリアにこの旅の成果をみせましょう!
次回最終回!
アゼリアのお話は、まんま侯爵令嬢の物語になる予定です。
ざまあ、したい。




