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いじめ対応マニュアルー転生教師はクビをかけて貴族令嬢を糾弾するー  作者: 神埼 アオイ
第2章 頑張れアザラシ!ーヴァレリオーズ温泉修学旅行ー
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碧の覚悟 

ごめんなさい、嘘つきました。

コメディが欲しい人、次回です。

ホテルの庭は、静かだった。陽光で芝が輝いて、秋にはめずらしい暖かさだった。二人はベンチに腰掛けて、小鳥のさえずる木々を見つめていた。

「私、アオイに返さなきゃと思うの。御藍さんのように、後戻りできずにこの世界で生きていこうと思った時期があったのに、私、今は自分のエゴでアオイを利用している。どんなに今のアオイが私と同化していても、これ以上アオイを変えてはいけないと思うの。」


イーゼ=伊勢は、何も言わずにアオイを見つめる。

穏やかな表情。でも、真剣な表情。


「私がいなくなっても、アオイは存在し続ける、この国で。

アオイの人生はアオイが作るもの。

私、アズーナが好きよ。アザラシも学院も、生徒達も。イーゼ、貴方も。」

でも。

「この気持ちは、碧のもの。アオイにシンクロした碧の感情。碧の行動。アオイを変成しているのは、私なの。私は、神様じゃない。」

やっちゃいけないことを私はしているんじゃないのかな。


「都合良くアオイを利用するのは、もう、おしまい。

私、ね、イーゼがへとへとに帰ってきたとき、思ったの。

教師をしながらこの人を支えられるのかな、家庭を作れるのかな、って。

私、伊勢碧として、ちゃんと生きたい。ちゃんと人生を全うしたい。

だから全力で碧を生きてやる。って。」


この旅が終わったら。

帰るの。そして、二度と、こない。

アズーナには。


「…私が惚れた、貴女です。

貴女が決めたことを私は尊重します。

私も、イーゼになるのは、やめにしましょう。」

「貴方までそんな、マーレの研究は」

「だって」

碧の入っていないアオイを愛するのって、浮気じゃないですか。


馬鹿。


なんだか嬉しいのに、涙が落ちて、彼女は彼に寄りかかる。

ちい、と小鳥が、羽ばたいた…



「ただね、帳尻が合わないのが昨夜から気がかりで」

ラブラブな二人は、覚悟を決めると、残りの時間を楽しもう!と、スパへGOした。

再び2人用岩盤浴に入る。

ん。イーゼの腹筋が目立ってる。王子と鍛えた成果ね。

アオイも締まった?卓球のおかげ?

これでデトックスして綺麗になったら、アオイに感謝されるわよね♪


「御藍氏は、ここへ来て4年と言っていたでしょう?私がこちらへ来たのは、あちらの時間の1年前。こちらの時間は向こうの4倍の進行です。」

1かける4=4

「…合ってるんじゃないの?」

「そうでしょうか。私はこちらにずっといる訳じゃありませんよ?

そして、アオイ、覚えていますか?

伊勢がイーゼに戻る時、前の時間の続きとなる、と。

つまり、この世界は私がイーゼになることによって時間が動くわけです。

碧、あなたがこの世界を干渉するまではね。

だとすると、2年を超えても、4年にはならない筈です。」


キトン姿の従業員が飲み物を掲げてやってきた。

冷えたビールとショウガの炭酸水。

極楽である。

「んん。…御藍氏は貴方の前に、ここに来た…でも、アズーナは、貴方の物語だと。」

「そうなのです。時間の進行から、私が主体なのは、間違いない。なのに、私以前に彼は存在することになる。」

天井の女神が微笑んでいる。

炭酸のおかげで、さらさらの汗が気持ちよい。


「でも、さ、私のせいで、朋成さん、のペースは崩れたのでしょ?

だったら、御藍氏の物語から貴方の物語に移行した、ってことじゃない?」

私の推理に、イーゼは、ニタ、とする。

何?

変なこと、言った?

「今、名前、呼びましたね…碧さーん♪」

ちょっと!ここ人目あるって!



シャワーでたっぷり汗を流して、

お次はマッサージ!

ヘッドマッサージが、きもちい~

腕が、足が、喜んでる~

王様のように、王女のように、3人がかりのマッサージサービス。

へにゃへにゃへ~



「そうかも、しれませんね。」

イーゼは深くうなずいて口火を切った。

「へ」

「私がこちらに転移したことによって、御藍氏の世界のルールを書き換えてしまった。そして、貴女が更に変えてしまった…」

私たちは、身も心もさっぱりして、髪のセットまでして、ただいまお茶中。

ほわほわのシフォンケーキとミルクティが、合う!


「うん…。それが解だと思うの。でもさ~」

「なんですか?」

「ここ、乙女ゲームの世界よ?御藍氏に乙ゲーって、合わなくない?」

坊主に乙ゲー

握り寿司にジャムくらい合わない。

「ん~、そうすると、始祖…ファーストビジターが誰か、ということになりますね。」

「御藍氏、私、朋成さん、の他に、この国に転生?転移?している人がいるのね…」

何をしているのだろう、その人は。

何人、いるんだろ。

転生してるの?それとも転移?

御藍氏のように、記憶を使って成功しているのか。

その能力で、のし上がっているのか。

つらい人生を送っているのか…それか…


「王国をひっくりかえす人物が出てくるかも」

「そうかもしれませんね。階級国家に満足できない民が蜂起するのは、歴史に有ることです。今はこの国も賢王に統治されていますから安定していますが。

私は、古代ギリシアのような哲人政治が理想ですが、人類という社会生物は、そう単純なものではありませんからね。」

アザラシ。

「私、王子、好きよ。バルトもいい子。」

「それでも、どんな政治をするかは、不確定です。」

時の流れの中、この国は、民は、どうなっていくのだろう。

乙ゲーの狭い窓からは、わからない歴史の流れ。



「これは、与太話、ですよ。

生物の進化というのは、なだらかな変化ではないのです。突然に爆発的な変化をとげて、生き残る。それが進化なのです。

人類も、節目節目に、英雄が神が、出現しています。

二千年も崇められる信仰を生み出した男

カリスマを発揮する独裁者

百年以上も解けない問を創り出す数学者

現実を観察することで理論を証明しつづける科学者 

その理論を編み出した学者

突然変異のように、歴史には、ありえない位傑出した人物が現れている…」


「私たちの世界も、違う世界の誰かが、編んでいる物語、かも、しれないのね。」

幾重にも幾重にも折り重なった鏡像を想起して、碧は身震いする。

「でも」

イーゼは、ニイ、と笑って、再びお茶目な表情に戻る。

「アオイとイーゼ、碧さんと私、が、出会ったことも、物語です。

とても素敵な。とても温かくて嬉しくなる、運命ですよ。」


ほんと、この人、こういう風に納めちゃうんだから。

(好きよ)

(惚れてます)

たくさん、たくさん、言い交わそうね。これからも。



ホテルに帰ったら、クレアが戻っていた。

「先生、申し訳ありませんでした。お爺さまにはたっぷりお説教をしてきましたから。」

乗馬服姿のクレアは、乱れた髪もそのままに、レストランで紅茶を飲んでいる。

私たちを待っていたのだ。

「大丈夫よ。ガカロの狼藉でシャトーに被害があったんじゃない?」

「ご安心を。みんなは?」

「ふふ。自主プランでおでかけ。王子は、地熱発電に視察のはずよ。」

「自主プラン?」


綺麗な目をまあるくさせて、唇をちょっとすぼめて、アオイの説明を聞くクレアは、本当に凛々しい。そして美しい。

この女丈夫とも、お別れなのね…

いい領主になってね。

いいお婿さんと出会えると、いいね。

も少し、髪の毛やお化粧、おしゃれにも気を遣おうね…

「先生?」

「ーごめんね。旅も終わるな、寂しいな、って。」

「本当ですね。また、いらして下さい。今度こそ、お二人きりで。」


ありがと、クレア。

その今度は、ないの。


「あ~クレア~ごめんなさあい!シャトーのおじいちゃま、だいじょぶだった?」

本気で反省したのだろう。ガカロはどうやら、どこにも行かずにホテルに待機していたようだ。

「爺はぴんぴんしているよ。気にするな。私のせいで嫌な思いをさせたね。」

「ああ、お婿のことお?気にしてないよ!

僕神官になるし、独身を貫くつもり。アゼリアは別格。僕のものだから。でも。

レーナちゃんとか、おつきあいしてくれるんなら、OKだよお!

クレアも、甘やかしてくれるんなら、全然いけてるよ!

お婿が決まるまで、僕でよけれ…

「先生、こいつ強酸風呂に沈めてくるんで、ちょっと待っててください、ね!」


首をつままれたにゃんこは、クレアのお付きに抱えられて退場。

ふう、とクレアは一息ついて、それはそうと、と切り出した。

「お爺さまの所で、困った話を聞きましたよ。」

「何?またトラブル発生?」

「アゼリアです。ばれたんです。一人置いてけぼりになったことが。

深くふかーく怒っているとか。駅に出迎えに、来るとか…」

あの子が怒ったら、怖いですよ…

というより、泣かれたら、困りますよね…


アゼリア・アズ・ローレイナ

アザラシの婚約者にして、アズーナきってのおしゃれ番長

三人息子の女神


駅でアゼリアにも会えるのね…。最後にあの子に会えるのは嬉しい事。

「先生?」

「ふふ。大丈夫。アゼリア対応は、私に任せておいて。

クレアも速駆けで疲れたでしょ。明日は、みんなで自主プラン発表だから、ゆっくり休んで。」

アオイはクレアの手をとって、淑女の礼。

「先生?」

「クレア。私を先生と呼んでくれてありがとう。

私たちをシエンに連れてきて下さってありがとう。

ヴァレリオーズの素敵な所、これから国を担う貴女や王子の覚悟を教えてくれて。

身分の低い私たちに敬意をもってくださって、ありがとう。

貴女のこと、忘れない。」


先生…?

クレアの心の奥に、ちり、と何かがよぎった。

リーゼンバーグの微笑みに、初めての感情がわきたった。

それが何であったのか、後になっても彼女には分からなかった。





佳境なのに!

私は次にアゼリアの小説が書きたくなっている!

ただいま取材中。

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