自主プラン
誤字のご指摘ありがとうございます!
久しぶりに三人称で書いてみました。
書きにくい書きにくい。
「自主」「プラン?」
聞いたことない言葉に戸惑う生徒達を尻目に、アオイは上機嫌である。
王子とイーゼが、ガードすら人払いして、密談したがっていたので、アオイは空気を読んで退室した。
ロビーで今後のことを考えていたとき、ぴかっとひらめいたのだ。
修学旅行のお楽しみと言えば、
自主プランではないの!と。
そうと決まれば(決めたのか)話を早く進めるのがアオイである。
お風呂上がりの生徒達を集め、ゴランさんを呼び、宣言したのだ。
「そう。これまではゴランさんのおかげで、楽しい旅程をみんなでたどりました。明日は、それぞれ自分の行きたいところ、したいこと、を自分でプランニングして、実行してもらいます!」
両手を腰に、アオイは得々と説明する。
「今から、1時間、ここで明日のプランを立てて下さい。地図はゴランさんから、借りました。しおりの残りの日程は白紙とします。でも、しおりの行く先もプランに入れていいのよ。
施設のことで分からないことは、ゴランさんに聞いてください。移動時間もね。朝から、夕食の7時まで、明日は自由に過ごしましょう!でも」
「「「「でも?」」」」
「明後日には、ゴランさんが審査する、プラン発表をしましょう!『おすすめシエン旅行プラン』を考えて下さい。明日の自主プランを軸に、今まで訪問した場所も入れて。」
ゴランさんは、にこにこしている。
「今後のPR活動に、採用したいと思います。優秀なプランには、賞品をだしましょう。」
おお!
わあ!
ガカロ騒動で、ちょっと湿っていた彼らの気分は上げ上げである。
「質問」
パトロが挙手。
「行動は何人で?」
3人以上で、なんて『えんそくのきまり』を言いそうになるアオイだが、ふいっと思いついた。
「一人でもグループでもOKです。お一人の場合や女性だけの場合には、王子にお願いして侍従さんかガードさんを貸してもらうから。安全は保障します。」
平民の女性達は安心。貴族の子息たちは、侍従と同伴でも窮屈ではないだろう。
「入館などの料金も自由?」
「プランにかかるコストも、審査対象です。昼食も、おすすめを見つけてきて下さい。」
今思いついた割に、なかなかの即答ぶりである。
「なるほど…。さすがは先生。自由だが、学びがある。そしてゴラン氏の評価・シエン観光に採用というゴールの設定。ー素晴らしい。新しい。凄いな、リーゼンバーグ先生」
バルトの知的な賞賛にアオイは照れるが、今のバルトならアオイが何を言い出しても受け入れるだろう。バルトのアオイ贔屓は本物である。
「では!紙と鉛筆です!よおい、はじめ!」
「そうか。初日の岩盤浴か。」
「旅が決まったときから、伯爵の耳には届いていたようです。その疑惑が募ったのが、彼女らの噂話だったようで。」
王子とイーゼは、紅茶を飲みながら、穏やかに話していた。
もちろん、お茶菓子は禁止。ダイエットは続いている。
「クレアの婿候補。確かにどのご子息も良縁です。さらに殿下も同伴となると、伯爵の心配は募る一方。よもやクレアに手を出すことはあるまいか…昔気質の辺境伯は旅のアバンチュールなどもっての他。爵位を譲る前に嫁に出ては一大事。」
「ホテルの従業員も、スパの従業員も、みな伯爵のしのびというわけか。」
「スパイ、と私やアオイなら、そう呼びますね。情報は筒抜け、ということですね。」
フローラ達の(腐女子のあそび)を真に受けたスパの従業員が、上司に報告。さっそく上司は鳩を飛ばして伯爵に伝えたようだ。
さらに牧場の様子、シャトーの様子、と、クレアを追跡し、監視していた。
そこに、グラッパを飲んだガカロと遭遇したわけだ。
「ガカロのマーレは、物理的に作用しますが、周囲の人間の心を視ることができます。主に自分の物差しで悪者を見つけることが得意なようで。ガカロにとって、悪者って、女性に妨げがある人物なんですね。今回は、クレアを監視していた、ということで、吹き飛ばされたんですね。」
「…女性に悪さした輩と同じ扱いか。」
可哀想に。
王子は、お腹が減った、とつぶやいた。聞き逃さない侍従が扉を開けて「殿下!」と声をかけてくる。時刻は6時を回っている。イーゼは、そうですねえ…と侍従に紙を差し出した。
「このレシピを料理長に。こちらにお食事は回して下さい。」
王子、きらきらとした目で、マーレ師を見ている。先ほどの強面が、にやけている。
「デトックスメニューですよ。王子頑張りましたからね。美味しくダイエットしましょう。」
王子、へらへら、である。
「で、王子の方は、お話いただけるのでしょうか。」
王子は再び根暗な表情に戻る。
「おっしゃりたくなければ、よろしいのですよ。私の想像が合っているのであれば。」
イーゼは、慌ててとりなす。王家の醜聞をマーレ師とはいえ、一市民が詮索するのは僭越というものだ。
「いや。聞いていただこう。旅でこれだけ世話になりご迷惑をかけた貴殿に、隠しておくまでもない。」
王子は、のし、と座り直してイーゼに顔を寄せてきた。
「義母だ。」
ベルロット王后。
「辺境伯と同じだ。コーチ殿も言っていたな。クレアと同伴したものだから、婚約者のいる身で不祥事をおこさないかと気をもんだらしい。義母はアゼリア贔屓だから、彼女があらぬ誤解をしないかと、そちらも心配だったようだ。」
俺とおとこおんなのクレアで、どうなるっていうんだまったく、と、クレアの膝蹴りが飛んできそうな悪態をつく。
「クレアも同じことを言いました。…殿下と彼女の友情は、まだまだこの王国では、理解されないものなのでしょうねえ。」
「学院で出会わなければ、俺も義母と同じ考え方になったであろう。平民も貴族も男も女もない、学び手が主体である学院のおかげだ。」
王子は、うっすら笑みを浮かべた。
イーゼは想う。
彼の青春は、あと1年と少し。
卒業すれば、王太子として実務に当たる。
それこそ、階級と、役職とにがんじがらめになりながら、彼の理想を追わなければならない。
今しばらくの、やんちゃがしたい。この旅も、彼にとってはそうなのだろう。
(我が儘王子も、致し方ないですね)
イーゼは苦笑する。
「湖視察の、しのびも、地下の彼だったのでしょうか。」
「そうだ。彼の任務は俺の監視。大勢はともかく、一人の女性と一緒にいるときは視ていたらしい。」
ああ、クレアと山登り。私もいたのに。
アオイと卓球。私もいたのに。
私は空気ですか、そうですか…
「イーゼ殿?」
「ああ、いいえ。…侍従さんもガードも、いたなあ、と。」
「ーその侍従達も、グルだ」
「え」
「あやつら、旅のお供に選ばれた時から、義母に丸め込まれおって!あろうことか、しのびを列車にかくまっていたのだ。毎日しのびは義母に報告を出しておった!」
この王国では、報告とはつまり伝書鳩をさす。
旅の日数分、7羽連れてきていたのだろうか…手品か。
「さあ、決まりましたか?紙を出して、出して!」
アオイはうきうきと声を張る。
「えーと。バルザックくんは一人ね。
ミュージアさんレーナさんミアさんは、グループなのね。
フローラさんは、一人。
バルト君とパトロ君は、兄弟ペアかあ。なるほど。」
「質問ですわ。」
「はい、ミュージアさん。」
「おうちへのお土産などは買ってもよろしくて?そのお土産はプランに書き込んでもよろしいの?」
「そうねえ。んー。」
アオイは、現実世界の<るるぶ>などを思い出している。
「いいですよ。シエンの宣伝になる目玉商品が見つかるかも。
でも、良識の範囲で。お買い物ツアーではありませんからね。
明後日の午後は、お土産をお買い物する時間をつくりましょう。それも考えて過ごして下さい。
他には?」
ありませーん。
「では!紙はゴランさんに転写していただいたら、お返しします。夕食まで、解散!」
皆はうきうきと、階段へ向かう。
残ったアオイはゴランに
「せっかくのしおりだったのですが、ごめんなさいね、我が儘言って。」
と声をかけた。
「なんの。よい案です。若い彼らの視点でシエンを再認識できます。何よりお客目線は喉から手が出るほど欲しい情報です。いや、さすが教師。ー自主プラン、ねえ」
ゴランは、ふふ、と笑って大きなお腹を揺さぶった。
「私の娘も行きましたよ、自主プラン。かわいいこけしを買ってきましたね…」
「…ゴランさん?」
王国ではありえない単語に、アオイは凍り付く。
こけし??
「ゴランさん、あなた…」
「貴女も、ですね、リーゼンバーグ先生。」
まさかまさかまさか!
でも!
岩盤浴 スパ プール…
まさか!
「はい。私はこの世界に転生した者です。どうやら向こうの私は、事故で死んでしまったようなのですが、こちらでこの身体に転生しまして。」
「ひ。え??」
「貴女から、耳慣れた言葉が、ぽんぽん出てくるものですから、確信しておりました。」
どうも。前世は、柴崎御藍という僧侶でした。
いまや生臭坊主でございます。
このシエンで、前世の記憶を使って、温泉王になろうと野心をもっております。
「ひええ…!んなことあるう?」
アオイは椅子から転げ落ちながら、イーゼーぇ~~~とビブラートの悲鳴をあげた。
みなさんはどんな自主プランにいったかな?
読んでくださって、ありがとうございます。




