報告
各国の貴賓が素晴らしい!
ああ、眼福の一日。
おかげで投稿が遅れた上に、説明ばかり。
ごめんなさあい。
「あ、イーゼ、大丈夫?」
「アオイ~終わりましたよ~疲れました~へにゃあ~」
旦那様は、へとへとの猫になって部屋に帰ってきた。なんかげっそりしてる。
「なんか、食べる?それとも、シャワーにする?」
「いえー、それより」
イーゼは私の横に座って、へた、と膝に頭を乗せてきた。
「それとも、あたし?って、言って欲しいものですー」
すりすり。膝頭を撫でてくる。
馬鹿。にやけるじゃない…っと?
すーすー
寝るんかい!!
マーレ・コントロールって、こんなに疲労困憊するものなのね。
大丈夫かしら、私たち。
ていうか、私。教師も辞めたくないし、でも、こんな風に仕事をしてくる夫を支えられるのかしら。どっちかっていうと、現状私の方がイーゼに甘やかされているのよね。こんな姿一緒の時に見せたことなかったし。
いえ、現実でもそう。
中学校教師で部活持ってたら、土日もない時期があるわ。夜勤のある伊勢を支えながら、私働けるのかしら。今は、結婚して、旅行して、楽しい時期だし、周りも遠慮してるし。でも、「日常」になったとき、私は「家庭」を作ることができるのかしら。
「だあいじょおぶ、です、よ」
はえ。寝てたんじゃないの?心読んだ?
イーゼは目をつむったまま、へら、と口角を上げてつぶやく。
「こおんな風に、へたれになる時も、ありますよ~。でも、貴女がいると思うと、充電されますねえ」
「…」
「いいもんですねえ。奥さんの膝枕。アオイは私の栄養剤です。」
イーゼ…
「やわらかくて、あったかくて、大好きですう…。」
イーゼ。
ふふ、本当に寝ちゃった。
どうぞどうぞ、旦那様。こんな膝で良かったら。
よくない。
ねえ、かれこれ1時間経つんだけど!
しびれてるんだけど!血が滞っているんだけど!
微動だにしないイーゼを乗せて、おしりまで上がってきたしびれに耐えていると
ピロピロピロ
内線電話がかかってきた。
「っよいこら、しょ!っと! はい、リーゼンバーグ」
イーゼを起こさないように、左手を伸ばすだけ伸ばして、やっとこ受話器をとる。
「クレア様から、伝令です!」オーナーの緊迫した声。
「…私の部屋へよこして。それと、王子をこちらの部屋に。」
「フェーベルト様のお部屋ではなく?」
動けないのよ!しびれてんのよお!
(コーチ、いちゃついてるのを見せつけるために?)
お風呂に入ったようで、王子は濡れた髪のまま、新しいトレーニングウエアで現れた。
(そんなわけ、ないでしょ。まさしく死んだように寝てるんだから。ガカロのコントロールで、こうなってるんだから、仕方ないでしょ。)
こそこそと、王子と私は会話する。イーゼを起こさないように。
(ガカロは爆睡中だ。イーゼ殿には、感謝する。だが、このままでは話もできないな。よし)
パチン、と王子が指を鳴らすと、侍従がささ、と近寄ってきた。
わ。すごい。寝た形のまんま、イーゼを持ち上げて、ベッドへ、さかさかさかと運んでいく。
イーゼ、起きない。
もしかしたら、膝から落としても、起きなかったかも。
うわ。血が、血が。流れるう。
う~しびれが一気にくるう!来るよお~
(コーチ。新しいダンスか?)
うるせえわい、しばらく近寄るな、近寄るなよお~
「はー。治まってきた。さて、王子、クレアからの伝令を呼び寄せました。侍従さん、入れてあげて。」
侍従さんは無表情のまま、戸口に向かった。なんか、怯えてません?
入ってきたのは、おまわりさん。
黒い角張った帽子と、黒のマント。白い手袋、腰にはサーベル。
ぴし、と敬礼して声を張った。
「シエン警察の!ジェックであります!クレアお嬢様より!ご報告うぉぉ?」
私と王子は、必死におまわりさんの口をふさぐ。イーゼが起きちゃうじゃない!
…ふう、大丈夫だと、もう一人の侍従さんが、手で○をつくってる。
「ご苦労。小声で伝えてくれ」
(はい。クレアお嬢様からお伝えするようにと。
ーお爺様の所に行ってくる。一日かかるので、明日の昼に報告する。こちらは問題ない。つかまえた男は警察に引き渡してくれ。皆に今後危害は一切ないと保障するー
との事です)
「伯爵の?」
(はい。ヴァレリオーズ伯爵様は、シエンからさらに奥山の国境近くにおいでます。)
クレア、何をつかんだのかしら。
「では、わたくしは、男を署に連れて行きます。お供の方、ご案内下さいますか」
びし!と、小声のまんま敬礼。
「…よかろう。案内してやれ。ただし。俺が伸ばしたしのびは、そのままに。」
王子は侍従さん達に指示を出す。
「わかっておろうな。」
「ーおおせのままに」
ん?王子、シリアスなままなのはいいけど、なんか、あった?やっぱり侍従さん、おどおどしてません?
「ね、クレアは何か分かったのかしら。」
「伯爵がからんでいるのであれば、同じようなものなのか…くだらん。実にくだらん。」
王子、シリアスに静かに怒ってます?
なんか、断罪の時のモードに感じるけど。
ああ、そうか。あの時の王子は、怒っていたのね。
クレアとアゼリアの、画策に。愚策に。
もともと王子は、人を貶めることとか、駆け引きとか、嫌いなんだよね。きっと。
卓球をやってみて感じた。この人は、まっすぐな人。誠実な分、信頼できない相手には容赦ない。だから、寡黙の王子。
クレアが、バルトが、王子を慕うのは僥倖。
後継者争いとか、枢密院との関わりとか、魑魅魍魎の中で上に立つ運命の若者に、仲間がいる。学院という閉鎖された、貴族も平民も「同い年」というくくりの中で、繋がれた絆は一生ものだ。
「本当に…。でも、それも親心という愛情なのですよ。」
振り返ると、寝室の入り口にイーゼが立っていた。
「起きた?大丈夫?あ、うるさかった?」
「大丈夫です。爆睡できましたから。王子、あなたの方も、同じですか?」
王子は、こくりと見えない首(肉が!)を縦に振った。
「同じ?」
んん?話の見えない私は、王子とイーゼを右左と見比べる。
「ガカロから、つかんだか?」
「はい。あちらは、クレアがご立腹でしょうねえ。」
「一応、ご説明いただこう。イーゼ師。」
「仰せのままに。」
イーゼまでシリアスモードで、胸に手を当ててお辞儀を返す。
もったいぶらずに、早く話して!




