お飲みなさい
友だちに「この国の通貨はどうなってるんだ」と指摘されました。
書いたことない、と思ったら、「おやつは300円まで」と地の文でいってました(笑)
「バナナはおやつですよ」に変えたいと思いますう。
通貨は、貨幣にしたいと思います。多分出てこないけど(笑)
再びのフローラです。
馬車がつづら折りの坂道を登り切ると、ブドウ畑が丘一面に広がります。
「もう少し前だと、収穫期だったんだが。」
クレアはちょっと残念そうです。先生の代わりにクレアの引率で、私たちはワイナリーに参りました。女の子馬車はクレア登場で、質問の嵐でしたわ。
身長、好きな詩人、好みの仕立屋、苦手な食べ物…クレア辞典でも作るおつもりでしょうか。
「ねえ、クレア、殿方は、どんな方がお好みなの?」
うおう。ミュージアさんの直球が飛び込みます。
「…男を好きになったことは…格闘家とか騎士団とか、個人と言うより職業はあこがれるが。」
「いけませんわ。貴女も17。そろそろ殿方を意識するのも、おつとめですわよ。」
ピアさんが鼻息あらくつっこみます。
「ね。今回の旅に、よさそうな方はいらっしゃらないの?」
レーナさん、ついに剛速球です。
クレアは、きょとん、としたあと、わはは、と破顔しました。
「ははっ。あの三人組は、アゼリア嬢にぞっこんだよ。バルトはないない。あんな腹黒。」
アゼリア・アズ・ローレイナ侯爵令嬢。王子の婚約者ですわね。
「まあ。」
「パトロ様、かなわぬ恋を」
「道ならぬ恋に焦がれる美青年…」
ああ~。
そっちにいきましたか。お三方、戻っていらして!
「クレア、お婿は、考えてるの?」
妄想しているミュージアさんの代わりに、私がどストライクを決めましたわ。
「婿?んー。」
首をかしげて、クレアが苦笑します。かわいい。
「お爺さまが、決めた方なら、私はきっと愛せると思う。でも」
でも?
「リーゼンバーグ先生を観ていると、互いに思いを重ねることが大事だと思うようになった。互いの人格を尊重し合う、そんな、対等な相手が欲しいな。お前もそうではないか?トールマーレの跡継ぎ殿。」
ーそうね…。家にとらわれて、小さくなっていられるには、私たちは学び過ぎたわ。
お父様が、家が決めた配偶者を私は愛せるかしら。
私は愛して、尊重してもらえるのかしら。
なんだか、寂しい気持ちになって、私はクレアの肩にそっと頭を預けました。
馬車は、ゆるやかに丘を下り、ワイナリーに向かいました。
「やあやあ、クレア嬢ちゃん!お待ちしていましたよ。さあ、皆さんこちらへ」
シャトーはこじんまりと可愛らしい館です。
「ただいま、仕込みの時期でして、こんなおじいちゃんしかお相手できませんが。」
「何を言う。マイスター=ジドー。私の賓客だ。よろしく頼むよ」
ジドーさんは、日焼けした白髪のおじいちゃまです。優しそうな目に白い眉が垂れ下がって、人柄のよさが際立ちます。
「ここがセラーですわい。」
「ひんやりしてますわね。」「大きい樽だな」「これみんなワインなんですね」
階段を下りて、みんな巨大な樽を見上げました。
天井は高く、居並ぶ樽がそびえ立っております。
「寒すぎず、暑くならず。ワインは我が儘なお姫様でしてな。絞り汁のころから主張するのですよ。発酵の時間、寝かせ方、それぞれの性格によってお相手をしなくてはなりません。美人にも不細工にもするのは、姫様の声を聞く職人次第というわけですな。」
おじいちゃまは、いとおしそうに、樽を叩きます。
「その年々で、作り方が異なると言うことですね。大変だ。」
「坊ちゃん達のお勉強ほどではござらんよ。」
「ねー、どんな味?どんな感じ?」
ガカロさんの正直な発言で、テイスティングが始まりましたわ。
私たちは17歳ですからお酒OKですけど、あ、ガカロは17でした。
まだ浅い。これは渋い。ん~いろいろなんですね!
これは是非、トールマーレ慰安旅行に入れなくては。
「こちらはティスティングカフェですわい。利きワインをやっております。いかがですか。」
階上の円形ホールは、食堂のようなレイアウトです。
「いいな。みんな、どうだ?何年ものか、当ててごらん。」
めずらしくクレアが勧めてきました。
「ね、ペア対抗にしない?」
「ま、素敵。バルト、今日は無礼講ということで。弟さん達も混ぜてあげて」
「未成年だが…いいでしょう。パトロはかなりいける口だったね。」
「兄さん、負けませんよ」
盛り上がってきました。そしてちゃっかり三人娘は、ご贔屓とペアです。
あら。気がつくと、他の従業員さんもいるのね。
給仕さん以外にも円形ホールには2・3人の男の人が右に左にしていますわ。
給仕さんは、プレートにおつまみを盛って、テーブルに運んできました。皆さん、お酒が進みますわ!
「ん。これは5年。こっちは10年だよね。」
「わたくしは、これが5年かと。」
わいわい、皆さんたのしそうにワイングラスを揺らしております。
私は一応、バルトとペアなのですけれど、お酒は私さっぱり分からなくて。バルトがとってもスマートにペンを走らせていますわ。それでも、時折私にグラスを勧めて、確かめて?と言ってくるところが紳士ですわ。
パンパンパン!
「さあ、みんな、決まったか?紙を出して。」
クレアが回答を集めました。
「優勝者には、ジドー爺からプレゼントがあるぞ。…お、全問正解が、いる。」
「「「誰」」」
「ーガカロとレーナ嬢!」
「やったあ!レーナちゃん!賞品、なあに」
レーナさんはどさくさにガカロに抱きついています。淑女淑女!
ん?
今、従業員さん、こちらを睨んだような。
「わしの秘蔵ですぞ。お嬢のお友達なら譲りましょう」
ジドーさんは、透明のボトルをガカロに渡しました。
「わあ!好きなやつう!」
あ。
あああああ。
「バルトっ」「クレア、何てことを!」
私とバルトは叫びました。
クレア!きょとんとしている場合ではありません!
いやあああ!
ガカロがっ、ガカロ~!!
「ジドーさん、そのお酒…」
「舶来のグラッパですわい。絞りかすを蒸留した」
きゃあああ…
ガカロにぃ、蒸留酒はぁ~
「いるう!ここにへんなやつがいるう!ゆるさないんだからあ!!」
ガカロのオレンジ色の髪が、発光し出す。ゆらっとガカロの身体が、浮き出して…
ガカロの幼い身体全体も次第に発光し、その赤い瞳が怪しく揺らめいています。
きゃあああっ。三人娘は身をすくめてガカロを見つめています。
「どうした!何があった!」
クレアは、まばゆい光から手をかざして、片手は剣から離さずに尋ねてきましたわ。
「お前、知らなかったのか、ガカロのマーレは」
「蒸留酒で発動するんですわ!」
一度、ただ一度、中等部卒業パーティの二次会で、やらかしているのですわ!
あの時は、ブランデーでした。
マジメなクレアは帰ったのでしたね。
「みんな!伏せて!何かに、つかまれ!」
ゴウ!という風が、ガカロ中心に吹き始めました。今やガカロは地上2メートルに浮いております。
テーブルが、グラスが、かたかたと小刻みに揺れています。
「れーなちゃんやおともだちをみてるう、わるいやつ、ゆるさないんだからあああ!!」
「そ、ん…な」
ジドーさんを柱につかまらせて、クレアは私たちと壁に貼り付きました。
「二次会会場は、荒れ狂いましたの。今と同じ、わるいやつとガカロが言って」
その時、そう、女生徒に狼藉を働いた輩が
「ゆるさなああああいぃ!!!!」
「きゃああああ」
ごおおおっ オレンジの炎の渦に
「ぎゃああああああっ」
その男が巻き込まれて…飛んで…墜ちて…
あきれましたわ。
あの時と同じ、すやすや眠っています。ガカロ・ボラリナ。
「で」
バルトは全員の無事を確認してからジドーさんに尋ねました。
「この男は、誰ですか」
「ーみない顔だ。このシャトーの者ではない。」
従業員の身なりの男は、完全に伸びていました。
「ここの者ではない…」
私とクレアとバルトは、顔を見合わせました。
しのび?
さあ、伏線回収回収(笑)
グラッパはイタリアのお酒です。
何か気になることがあったら、教えて下さいね。




