まきばは招くよ シエン3日目
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「わたくしは絶対ナレック・バルザック様よ!」
「あら、貴女パトロ・アズ・ミズリ様を皆さんで称えたではありませんか」
「ガカロ・ボラリナちゃんを!外見と内面のギャップをご理解されて!」
きゃいきゃいする女子生徒の手がさっきから止まっておりますわ。
フローラ・トールマーレです。
今日はシエン観光三日目。
牧場体験です。もこもこの羊さん達と牧羊犬に癒されました。
ただいま、そのもこもこさんから紡いだ毛糸で、機織りをしていますの。
こっとんこっとん、なかなか面白いですわ。
昨日。私は決意しました。
クレアを守り隊として、クレアの名誉を守りきるために、この旅を大成功させることを。
あの王子、すがすがしいくらいクレアを臣下としてお認めになっていたわ。どこがいいのかと常々思っていたけれど、ただの第一王子ではなかったのね。私のクレアが将来の王と嘱望しているだけのことはあるわ。
二人にひびが入った事件があったそうだけど、言語学教師がとりなしたのよね。クレアはそれ以来、この先生と親しくしているわ。リーゼンバーグ先生、なかなかの胆力よね。昨日も密談を仕切っていらっしゃったし。
「ねえ、さっきから彼女たち、何を言ってるの?」
その先生が、きょとんとして話しかけてきました。
「…先生が教えたのでは?腐女子のあそび。」
私はこそっと先生に耳打ちしました。腐女子…ぃ。先生があんぐりされましたわ。
「…誰をターゲットに?」
先生もこそこそ話を続けます。
「ふふ。先生。ークレアです。」
クレアー??
「うーん。確かに。クレアで妄想…面白いわね…あれだけかっこいい女の子はいないし。BLとして妄想するのは、…うん、いける。なるほど!」
ほおら。この方やはり先進的です。先生、私たちの領域へようこそ。
「そうなのです。旅のつれづれにカップリングで楽しもうと。」
「おお。あの3人組ね。やるわね、親衛隊。」
先生、にやり、です。
「でも、昨日以来、状況が変わってしまいました。みなさん馬に同乗した男子生徒に夢中なのです。」
こっとんこっとん。
横糸を小管にまきつけて、上下に開いた縦糸に通し、とんとんと打ち込む。その単調な繰り返しなのに、楽しい。私こういう手芸が得意でしたのね。
「あら、旅先で、恋?いいじゃない。ピクニック大成功ね。」
「とんでもない、先生。」
私若干ため息まじりに説明いたしました。
「みなさん、それぞれの男性が、いかにクレアにふさわしいかを力説なさっているのですわ。昨夜の私の気持ち、先生は分かってくださいますよね?私はあくまでもクレア一番!男性は、クレアを美しく妄想するための添え物でしか無いはずです。ステーキのソース。パンケーキのバター。紅茶のミルク。妄想の男などそういうものです!」
「う…推しメン、つまり、ご贔屓が彼女たちに出来たということね。
フローラさんが困る理由は?」
「自明の事です!
彼女たちは本気でそのご贔屓をクレアのお婿さんに想定して、いかに素晴らしいかを語るようになりましたの。もはや、クレアはどこかへいってしまいました…」
「は?婿~??」
「ああ、ここでしたか、先生、フローラたち。」
そのクレアがまばゆい笑顔で工芸室に入ってきました。
今日のクレアはいつものブーツと細身のパンツ。ゆったりとした白いシャツを腰のベルトで締め、皮のベストを羽織っています。髪を束ねて皮の帽子をななめにかぶっております。
今日も男前ですわ!
「まあ、クレア!」「ごきげんようクレア。」「いらしてくれたのね」
3人娘も、そのかっこよさに、頬を赤くしています。
ほおら、皆さん、クレアが足りなかったのです。
上手ですね、なんてお世辞を言うクレア。
微笑み返すクレア。
手を添えて、教えるクレア。
クレア、最高、ですわ~。
「男子たちは、どうしてる?」
先生が尋ねました。
「ソーセージ作りが面白いようで、はまってますよ。男子の厨房というのも、絵になりますよ。」
きゃああ、と3人娘から軽い悲鳴があがります。
妄想しましたね?今、妄想しましたね?
「こちらが一息ついたら、合流して昼食にしましょう。彼らのソーセージを味わえます。」
ひやぁぁ、という3人娘のにやけた悲鳴があがります。
以下同文。
「やあ、先生。上出来ですよ。こちらへどうぞ。」
まあ。バルトの破顔した笑顔なんて、久しぶりに見ましたわ。
男の子達、そろいの黒いエプロンをつけております。かぶっていた頭巾をはずして前髪をなでつける仕草が、3人娘にはズギュンのようでした。
皆さん、いそいそとそれぞれの推しメンの隣をキープです。おかげで私はクレアを独占できそうです。
一枚板のテーブルに、丸太の椅子。クッションを敷いてみなさんちょこんと座りました。
焼きたてのパン、自家製バター、自家製チーズ、ゆでた野菜、地物のワイン。
そしてソーセージ。
「わ、ガカロちゃあん、美味しい~!」
「すごおい、ナレックさん、お強いだけでなくお料理まで」
「器用ですわねえ。さすがですわパトロさん」
も、皆様、勝手になさって下さいませ。
「先生達は、タペストリを?ああ、いいですね。お上手だ。」
「ふふ。面白かったわ。」
バルトは昨日から変わらず先生にべったりです。クレア首をかしげています。
「…昨日のピクニックで、何かあったのか?」
そうよ、クレア。
すべては、馬が悪いのよ。
「でも」
クレアはにっこりして
「仲の良いのは、楽しんでいる証拠。良かった。フローラは大丈夫か?」
「大丈夫よ。昨日は驚きましたけど、クレアが抱えている重圧に比べたら、私の責任なんて軽いものだわ。」
本当に…。
「それはそうと、クレア、私本気でこの旅を広めたいと思っているの。」
「え?」
「温泉施設、ホテル、カルデラ湖観光、そして牧場体験。素晴らしいわ。王都には無いものばかり。そして鉄道。これも魅力よね。」
「ありがとう。」
「そして、美味しい料理。私、お父様に、まず従業員の旅行を勧めてみようと思っているの。日頃貢献してくれている従業員の家族を慰安する旅行の旅先として、最適だわ。
トールマーレ商会としても、そういう福利厚生って、いい宣伝にもなると思うし。ね、是非話を進めさせて?帰るまでに、オーナーのゴランさんと、相談したいわ。」
クレアは、しばらく目を見開いておりましたが、ふ、と微笑んでうなずきました。
「お前も、次期商会会長、だったな。ー感謝する。」
そして、洗練された仕草で、そっと、私の手を取って
上目使いに、口づけ、ましたあ?!
「あ~、そこお、いちゃいちゃしてるう」
クレア、どこ、で、こんな、テクニックを~~~!!!
「ああ、みなさあん、お食事でしたか。やあ、美味しそう。」
ひょこひょことイーゼさんです。
よかった、皆さんの目がそちらに向きました。
汗が、汗が、引きません。
「イーゼ。やっぱり、筋肉痛。」
「いいんです。筋肉が育っている証拠です。それよか、アオイ、もう召し上がりました?」
「ええ。後は、デザートの果物を」
「あ、それ、テイクアウトで。ちょっと、ご用が。」
「え、何、何?
わたし、この後、めーめーさんとお散歩を~」
女教師はマーレ師に連れてかれました。
王子がらみでしょうか。
ちょっと、クレアが心配げですが、こちらはこちらの目的を全うしましょう。
「皆さん、昼食の後は、お昼寝かお散歩。その後、ワイン工房の見学です。」
わたくしは、班長!
修学旅行を大成功させますわ!!
本気でこの旅に行きたい(笑)




