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いじめ対応マニュアルー転生教師はクビをかけて貴族令嬢を糾弾するー  作者: 神埼 アオイ
第2章 頑張れアザラシ!ーヴァレリオーズ温泉修学旅行ー
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情報整理 危機管理マニュアル始動

説明が続きます。

列車でGO!の「電車」を「列車」に直しました。なぜ私は電車と書いたのだろう…

イーゼです。

王子が本格的に眠りたくなったと言うので、一同は私たちの部屋に移動しました。新婚スィートのリビングは、白を基調としたロココ的な家具と調度、広さと明るさはたっぷりあります。

窓からの眺望は最上階だけあって見事でした。今は夕日が完全に沈んでしまってますけど。


「…情報を整理して、今後の方針を立てましょう。」

すっかりシリアスモードに入ったアオイは、場を進行しております。

危機管理には強い女教師です。「不審者情報・不審者遭遇の場合」というマニュアルを発動!…てなわけで。私とバルト君がソファに座り、向かいにクレアの席とトールマーレさん、テーブルの短いサイドにアオイというメンバー構成。私はやっぱり書記でしょうかね。


「まず、旅の端緒から。王子の視察はどこまで情報が広がっているの?」

これには、バルト君が説明してくれました。

「王子のスケジュールは王と王妃および王家直属の侍従や執事には周知されています。しかし今回はお忍びですからご両親とごく一部のお抱えだけかと。視察ですので財務官僚の上部は知っているかもしれません。公費を使う場合、侍従が申請書を出しているので。無論、私たちは私費できています。」

クレアにたかってるのは、私とアオイだけってことですね。滞在費だけでも、とオーナーに支払っといて良かったあ~。

「バルトの父上の宰相殿・騎士団長・準教皇もご存じだな。そこから他の貴族に漏れる可能性も。今回の旅は結構な範囲で把握されているということか。」

クレアがルームサービスで頼んだワゴンの軽食を運んで、会話に加わりました。


「どちらの敵かしら?…王子とクレアの」

私とフローラは、さっさかスコーンやサンドイッチをテーブルに並べました。こういうまめさが私の持ち味です!

「私の?」

「なるほど。王子もその可能性を言っていたな。田舎の辺境地が、いまや鉄道と電力で脚光を浴びている。妬みや利害が絡んで、クレアの失態を望んでいる貴族や商会はあるだろうな。」

「…。」

「電力…」

アズーナは電気が通じています。でも、電話は王都にしか普及していませんし、電灯として電気を使うことが一般的です。工業的な発展はこれからでしょうし、電線もまだ抵抗が大きい素材で非効率的で改良には時間がかかるでしょう。ちなみに王都の電力は、沿岸の火力発電でまかなっております。


「…私とお爺さまの念願なのです。シエンは、火山の地熱を利用して地熱発電を行っています。地熱発電によって温泉の泉質が変わるのではないか、という輩もいますが、私は共存できると踏み切りました。私が率先してシエン観光を推進しているのも、そういった事情があります。」

なるほど。

「そうなると、このシエンの関係者にも、クレアに嫌がらせしたい輩はいるやもしれないな。」

出る杭は敵が多いものです。

ん?

「じゃあ、なんで、湖に視察を?発電所視察なら分かりますが。」

私は話に割り込みました。クレアが説明してくれます。

「王子は、リーズ川の水量安定を画策している。リーズ川は、ヴァレリオーズ領を下り、ローレイナ領・ミズリ領そして大海へ流れるパルノ河に合流する。そのパルノ河は、合流地を中心に氾濫を繰り返している。」

「ーダム、か。」

「そうだ。今日視察したマロ湖を拡げ人工湖を造る。今の5倍は貯水できる湖を。そしてダムでリーズ川をせき止め、安定的供給を図ると共に」

「水力発電」

「ご明察。ヴァレリオ山脈とヴァレリオーズ山地の採鉱と製錬に電気を活用する。電気を使う鉱山機械を導入すれば、製錬技術は格段に進歩する。地金も電気製錬し純度を高めることも可能。一気にヴァレリオーズは工業先進となるだろう。」


すごい。マジメに王子いいこと考えているんですね。

あの急勾配の地の利を活かして、落差の大きい水圧で、電気を造るつもりなんですね。

そして、ダムによって、農耕を安定化させる。一挙両得。

この世界で、賢いじゃないですか、王子。

「もちろん、王院の研究者グループがこのプロジェクトに参画している。枢密院を動かすには、しっかりとした計画書が必要だからな。…10年はかかるとフェーベルトは考えている。」

その頃には、王子は立派な王太子、クレアは伯爵ですね。


「でもそれって」

アオイが発言です。

「それって、ヴァレリオーズに利がありすぎない?工業発達も水利も、なんて。」

「製錬はアズーナ王家の企業となる予定だ。出資が王家だから。」

「それでも、水瓶を占有されたら下流の地方はヴァレリオーズに下手はできないわ。」

辺境の伯爵が一気に王国の重要人物となりますね。

一同うなずきます。

クレア、なんだか元気がなくなりました。


「では、次に王子の敵を検討しましょう。」

アオイが話を振ると、バルトが手をあげました。

「その前に…。先生、パトロ達に今晩の行動を伝えなくては。予定通り温泉街の散策をしてもらいます。計画通り、とフェーベルトのお達しですから。」

「あ、じゃあ、私行って参りますわ。スパから帰っていないかもしれませんしね。」

トールマーレさんが気を利かせてくれました。

さすがです。

バルト君は、一般市民のトールマーレさんに聞かせたくない話もあるのでしょう。

私とアオイも、一般市民ですけどね。


「王子の生い立ちを考えれば、お分かりかと思いますが。」

バルト君は、ひそっと切り出しました。

バルト君、大丈夫です。ここは新婚スィート。

壁は他より分厚いので、だって…ぐわっ!アオイ、エスパーですかっ!なんで小突くんですか。

顔に出ている?そうですか。

「こほん。…王子の母君シャルネット妃は、王子を産んでほどなく身罷(みまか)られた。

妃の妹君のベルロット妃が正妃となり3人の王女をお産みになられた。ベルロット后は王子の叔母として義母として、王子を愛している。」

バルト君は私のメモ帳に家系図を書き始めました。

「そしてロゼリナ宮妃は隣国からの王女で、第二王子・第三王子の母だ。」

「つまり、フェーベルトの反勢力は、ロゼリナ派ということ?」

アオイがその家系図に

アザラシ 敵 と落書きします。

「このプロジェクトに苦虫をつぶしている反クレアの貴族も、王子を擁するより第二王子たちにつくだろう。第一王子を廃するきっかけは欲しいだろうな。」

「ダム予定地で王子が事故にあったりすれば、この話はおじゃんでしょうね。それ見たことかと騒ぎ立てるわ。」

「そうですね…さらに王宮や学院では、事故より暗殺が疑われる。旅先ならば、反勢力にとってアリバイもあり都合がいい。バルト、そういうことか?」

「まあ、な。お前には悪いが、クレアが濡れ衣を着てくれれば、一挙両得という訳だ。」

「…。」


「えーっと。整理するわよ。いい?

クレアの敵は

 1.地熱発電にクレームのある人物

 2.ダム建設に反対する貴族 

そして、王子の敵は

 1.ダム建設に反対する貴族

 2.第二王子第三王子擁立派 で、いい?」

アオイがペンをとんとんさせて、書き込みます。

「ん?」

また何か思いついたようです。

「待って。じゃあ、なんで未遂なの?尾行してたんでしょ?なんで襲ってこなかったの?」

クレアもバルトも無言です。


「…王子がご存じかもしれませんね。」

私はふと思いついたことを述べました。

「アザラシ?」

「ええ。彼は私たちが暗殺だ襲撃だ、と言っているのに、しのび、なんて言い張ってましたよね。しのびというのは隠密という意味ですよね。」

隠密。スパイ。エージェント。ミッションインポシブル。007…アオイがぶつぶつ唱え始めました。何を考えているか手に取るようです。

今度DVD借りましょうね。

サンドイッチ食べませんか、アオイ。あ、あ!


「ああっ!!!」

「「「!!!」」」

「イーゼっ!何っ!!」「先生!!」

バルト君とクレアが剣を手にしましたが、私の焦りは止まりません!

「クレア。これ、ルームサービスですよ、ね?」

「……はい。内線で。」

がばっと私は受話器をとり0を押しました。

「もしもしっ。イーゼです。私の部屋以外にルームサービスのオーダーは?

ある?どこ?何っ!やっぱり!!」

「ーイーゼ、どうしたの?!」

私はがばっと戸口に突進しました。

「王子です!」

「フェーベルトが!」

「敵か?」

そうです!

「あの王子、こっそりルームサービス頼んでるんです!!人払いしたのは、一人で間食するつもりですよ!許しません!!」


そっちぃ~~~というアオイの声を背に、私は階段に突っ走りました…



 







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