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いじめ対応マニュアルー転生教師はクビをかけて貴族令嬢を糾弾するー  作者: 神埼 アオイ
転生教師アオイとのアズーナ王国物語
25/45

退院

私も手術→入院してきましたあ。

退院してから病院シーン書けばよかった。

絶食後のおかゆ、おいしかったです。

「…貴女、そのうち、体罰教師で、懲戒処分…ですよお」

氷嚢で、ほっぺをさすりさすり伊勢が文句。


大丈夫、手首の回転が絶好調の高速チキータだから、指の形にはなりません。


「だあってぇー。…変なこと、言うから」

「至極、マジメです」

「私!あなたのこと、全然知らないし!」


「…知らない、ですってぇ~」

伊勢さん、ニタリ。ドキ。

「お忘れになったとは、言わせませんよぉ。…あんなことやら、こんなことやら、うわっち!!」

今度は枕にしてやったわよ!(ビンタよりいいでしょ)


んなんてことを、なんてことを口走るんだ、この男ー!!全年齢対象なんだぞ、この話。


「貴方は、イーゼじゃありません!私も、アオイじゃないんです。ないんですぅ~。」

ぐすっ。ひくっ。

私って、こんな涙もろかったっけ。でも、止まんない。

会いたいよお。こんなバッタもんじゃなく。(かなり失礼)



「ー少し、急ぎすぎましたね。」

伊勢さん、真顔で優しく枕を戻し、泣いてる私を寝かしつけた。


「あちらでの、貴女。こちらで眠っている貴女。私にとっては、どちらも愛おしい女性です。あちらの貴女が語ったこと、思ったこと、どれもアズーナの女性ではあり得ないものでした。貴女の強さ、優しさ、人を見るまなざし、生徒へのいたわり、まっすぐな生き方、どれもこれも、イーゼにとっても伊勢朋成(いぜともなり)にとっても、新鮮で心に刺さりました。」

伊勢さんの声が甘くなる。


「あちらの貴女の笑顔を見るたび、こちらの私は眠る貴女の笑顔を見たいと、強く願っていました。」

伊勢さんは、右頬を氷嚢で押さえたまま、左手で私の髪をなでる。

イーゼみたいに。


「私はアオイの本質に惚れました。その自信があります…こうしましょう。貴女がお休みをとっている間、私、毎日貴女に会います。それでも気持ちが変わらなかったら、変わる気まったくしませんが、もう一度プロポーズさせて下さい。」


なんて愛おしげに見るんだろう、この人は。


「ーそれでも、私の気持ちが動かなかったら?」

泣いたことが恥ずかしくなってきて、布団を目元まで引き上げると、指が髪を撫でていた伊勢さんの指と触れあった。


「がんばりますよ。」

伊勢さんは、私の手を取って、とっても近距離でにっこり微笑んだ。

ドキドキドキ。

中学生か。浮気もんか。私。

イーゼじゃないけど、イーゼだよぉ…



はい、ごちそうさまでした。

この昼食で、病院食はおしまい。午後は退院だあ。


「碧さーん。私非番なんで、車出しますぅ」

今日も伊勢さんは病室に来た。も、タイムカードかラジオ体操カード持たそうか、っていうくらい。医師としては白衣、伊勢としては私服、とけじめをつけて日参した。IDカードぶら下げてる段階で破綻してるけど。ひまか、お前。


おまけに

(いろいろ調べて健康体でえす。倒れた原因は、心因性かもしれません。心療内科医として私が面倒見ますので、ご安心下さいーキリッ)

と、母と弟丸め込んじゃった。長く職場離れたんだから、母も慶もそれじゃあ、と、帰っちゃった。

伊勢さん、まんまと作戦成功である。


「いーですよ。大した荷物もないし、バスで」

「いえいえ。まだお花も咲いてるしーコーヒーサーバーもあるしー読みかけの本も溜まってるしー」

みんなあんたが持って来たんだろうが。

毎日毎日、ルンルンしながら、ほんとに甘やかしてくれましたよ貴方。


今も、返事も待たずにいそいそと私のキャリーケースを転がし、紙袋に窓辺のものをほいほい入れだした。


じゃ、着替えたら、ロビーで!

ナースセンターからはクスクス笑いが聞こえてくる。もはや私は伊勢医師のスリーピングビューティーだそうだ。いやはや。



「あれから、私、ちょくちょくあちらに行きましてね」

え!!


「貴方には、伊勢の私を見て欲しくて、しばらくあちらを忘れて欲しかったので。言わなかったんです。…気になるじゃないですか。あちらのアオイも倒れちゃってたでしょ?」


赤信号で車を停める。

真っ赤なアルファロメオジュリエッタ。へそくり絞り出して買いましたあ、って、それで送るって言ったな。自慢か。

んなことより!


「どおだったんですか、あちらは!私は!」

あれっ、イーゼに貴方は入ってるけど、アオイはアオイのまんまですよね!

ええっ?私なしでもう世界は動いてるってことぉ??

私、存在しない(いない)ってことぉ???

ねえ ねえ ねえ!



信号が赤になって、しっかり右折してから伊勢は話し出した。


「運転中なんで、時々話が切れますけど、いいですか…結論から言うと、あのまんま、ですねえ」

ん?どゆこと?


「戻ったら、アオイが倒れたシーンでした。貴女がこっちに帰ったショックであちらも昏倒した訳です。でも程なく気がつきまして」

それでっ!

「アオイは貴女のまんまでした。コルセット締めすぎたかしら、あはははって、照れて、シャンペンくいーっと。みんなも笑って、私だけ置いてけ堀でした。あちらのアオイは貴女が入った時の記憶をなくさず、貴女らしい言動でした。」


え。でも、私ずっとここにいるよ?行ってないよ?


「不思議でした。アオイ・リーゼンバーグは、私の物語で上書きされた。私はそう結論を出したんです。ところが」

おっと、車が坂の多い住宅地に入った。気をつけてね。


「2回目に転移すると、日にちが経っているのです。…私の知らない物語が、進行しているんです。マーレによって私はそのイーゼと完全にシンクロできてその間の記憶を得ました。不都合はありませんが、ね。」


「それって、あちらの世界は、もう、伊勢さんの世界じゃなくって」

「そうです。アズーナの世界は独立して進行し始めた。貴女の干渉の賜です。」



えっとお。

伊勢さんがコントロールしていたイーゼの世界。そこに私が入り込んだことで、世界が一人歩きし始めた。


でもマーレによって伊勢さんはイーゼと同化(シンクロ)して存在できる。創造者(マスター)だと思っていた伊勢さんは、訪問客(ビジター)になったってこと。


「約4倍の時間進行、と教えましたよね。その計算で私は、イーゼの活動時間に合わせて転移を繰り返した結果、出した結論です。私たちは旅行者に格下げになり、よりリアルに異世界は存在し出しました。」


あ、そこ、左に入って下さい。そいで電柱3つめで、はい狭い方の道です。はい、停めて下さい。


「…ありがとうございました。」

「いえいえ、荷物運びますよお。まだ話もありますし。」

うへ。片付いてるっけ?っけ?



お母さん、ありがとお!

私の技術ではありえない整った部屋で、コーヒーサーバーをスイッチオン。伊勢さんのこだわりのやつね。


「で」

小さなリビングでソファを勧めて、自分はクッションに座る。


「私の問題に話を進めましょう。碧さん。」

ドキ

「…はい」

「ちょっと早いのですが、やはり私の意志は変わりません。貴女と会うごとに、貪欲な気持ちが沸きます。こんな風に女性を慕うのは、そりゃ今まで経験がないわけじゃないですけど」


「まだ、休暇は、終わってません」

ドキドキ。

私、楽しんでるよね。

伊勢さんに押されて、甘やかされてることを。

でも、それはどうなんだろう。

恋に恋する女子高生じゃあるまいし。

私は、伊勢さんのこと、どう思っているのかな。

イーゼじゃない、伊勢さんを。

私に甘い気持ちをくれる伊勢さんを。


ああ、コーヒーできた。

いいカップあったかしら。


「伊勢さん」

「はいっ!!」

コーヒーをテーブルに置いて、私はにっこりと伊勢さんを見つめた。


「休暇の間、毎日私と会って下さいますか?それから、アズーナへも連れて行って下さいますか?…それから、その後のことは、成り行きに任せませんか?」


伊勢さんは、赤く赤くなって、コクコク首をふってくれた。



ジュリエッタは、ちょー可愛い、かっこいい車です。

次回、いよいよ、最終回!!

ただいま、番外編準備中!

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