伊勢朋成
説明ばっかりです…読むの、いやかも。でも、読んで下さい。
あっけ。である。
「じゃ、また、診察終わったら来ます!」照れるなあーいや照れるわ~と、人が固まっている間に伊勢=イーゼ(?)は出て行った。
なに?
え。…と、
私だけじゃなく、アズーナに転移してたってこと?
イーゼも、転移してた、あの医者だったってこと?
んで、私と一緒に、戻ってきたってことお??
ことおぉ????!!!!
「神埼さあん、朝ご飯ですよー」
………
とりあえず、ごはん、たべよう。
はい、ごちそうさまでした。
私って、どこのご飯もおいしく食べられるのよね。アズーナでも院のごはんパクパクだったし。
シャクシャク歯磨きしながら、今更自分の順応力に感心した。
この状況も、ちょっと落ち着いてきた。ふう。
情報を整理しよう。
あの、平たい猫顔の、伊勢朋成、さん、が、イーゼだとして。いやイーゼって名称を知っているってことで、すでにイーゼなんだよね(混乱)
夢じゃなかった。
私はアオイとして、あそこで生きていた。アゼリアもクレアもイケメン3人組も、アザラシも、あの世界で実在する人物なんだ。あの世界は、確かに存在する。
そして、イーゼも。
「え」
プロポーズの最中で、戻ったんだよね、ふたりとも。
歯磨き中の、鏡のわたし…
やばい!
「もしもし!お母さん。私の部屋だよね!
こっち来るとき、化粧品持って来て!」
私、イーゼにすっぴんとくしゃくしゃの頭さらしてたよ!!
アゼリア仕様の美人アオイから、直後平たい碧の素顔を見たんだよ、イーゼが、やっべ~。
「ことのほか診察が混みまして、遅くなりましたあ」
口調はイーゼの平たい猫顔の伊勢さんが、なぜだかお花を持ってやってきた。
お見舞いのライラックです。香りがよいので…伊勢さんは、白衣のままいそいそ持参した花瓶に生け始める。フラスコにみえるよ、花瓶。
「ありがとう、ございます。」
大丈夫かしら、パジャマだし浮くのはいやだから、ベースメイクと眉とリップクリームに抑えたんだけど…アオイ=碧になれているかしらん。平たいけど。
いやだ、私、伊勢さんに好かれたいみたいじゃない。いや、イーゼだと思うと、幻滅されたくないっていうのが、むくむく沸くのよね。伊勢さんだって、朝より、髪の毛整ってる気がする。
「それから、アオイさんの好きなコーヒーを」
「わ、ありがとうございます。飲みたかったんですよ、コーヒー!」
…まったくおんなじ、返事ですねえ…
にこにこ顔の伊勢は朝のようにスツールに座って碧と向き合う。
「さて、どこからお話しましょうかね…」
私があっちの世界にトリップしたのは、1年ほど前でした。アメリカに研修でおりましてね。碧さんと同じように、ぶっ倒れたわけです。ハンス・イーゼの姿と記憶のままの伊勢朋成が、存在しちゃたんです。貴女と同様、大変混乱しました。後でこっちで調べたら、アズーナは乙女ゲームの仮想世界と似ているんですね。私とイーゼがシンクロしたのは、多分イーゼがマーレ師であったことと関係していたと思います…
ああ、コーヒーがおいしい。ちゃんとトールサイズを買ってきてくれたのね。
「マーレ師の説明はしましたね?」
「マーレが発動した覚醒者に脳の働きをコントロールするスキルをつける人」
「正解。私はイーゼもマーレが使える人物だと推察します。そして私も。私はイーゼとシンクロするパーセンテージが高かったのでしょうね。」
貴女も同じです…。
なるほど。私と伊勢さんは、アズーナでいうマーレを持ってる。脳が異世界の同調できる人物に転移できるってことね。
「私たちは、突然発動したのですね。そして脳がこちらの機能を停止して、異世界の人物に転移し同調させていた。
初めての時どうやってこちらに戻れたのか、謎でした。戻った私は貴女同様、点滴で生命維持していました。貴女と違って、3日でしたけどね」
で、それから試行錯誤したんですよ。あ、看護師さん、今カウンセリング中なので、はい、検温はやっときます、夕食は預かってもらっていいですか?…って、看護師追い払ったよこの人。
「で?」
「はい。試行錯誤ですね。何がきっかけかと、ぶっ倒れたシチュエーションを調べました。そしたら、分かったんです。この花だと」
「ライラック?」
「そうです。あの時私は夜勤明けの診察中でした。欧米の女性は香水が強いのですよ。ぶっ倒れた時の患者さんがつけていた香水はベースがライラックだったんです」
ふえ。お母さんの本棚にあったSFみたい。あれは、ラベンダーだったな。タイムワープの奴だな。
私は花瓶の白と薄紫の花を見つめる。なるほど、いい匂い。
「じゃ、今…」「転移きませんよ。貴女ぐっすり休んだ後だし、私も徹夜はしていません。つまり、しびれるほど脳が疲れていて、ライラックの香りがする、そんなシチュエーションが転移のカギなんです。」
そうか。私、あの時かなり疲れて立ってた。そして、
「多分、生徒さんの洋服の柔軟剤か、制汗剤が香っていたのでは」
アオちゃんさよなら…ああ、そうか。
「で、私、幾度もあちらに行ったり来たりしたんです」
「え!」そんなこと、できるんですか?!
死んじゃいませんか?
転移を繰り返す間、身体はどうなるの?
行ったり来たりされてる本来のイーゼはどうなるの?記憶は?
ねえ、ねえ、ねえ!
「そんないちどきに答えられませんよ、って、やはり貴女は、まんまアオイですねえ~」
伊勢さんは上機嫌で、はい体温計~と手渡してきた。私の手首をとって、脈拍数を測る。うーお医者さんだけど、なんか照れる。
「ーはい、OK。熱も下がりましたね。…で、まず私は死んでません。回数重ねるうちに、就寝時に転移することにしたんです。で、戻るために、朝タイマーでエキスを噴霧するアトマイザーを仕掛けまして。作りましたよ、自分で。」
なるほど。こっちで調整したんですね。身体はお布団ということ。一晩だからダメージが少ないと。
「繰り返す内に、面白いことに気がつきました。まるで読みかけの小説を開くように、前回の転移の続きに転移するんです。貴女もおわかりのように、向こうとこちらでは時間の進行が違います。大体4倍ですかね…ですからこちらで6時間睡眠している間に、私は1日向こうで生活していたわけです。」
「二重生活ですね。よく身体が、脳が、持ちましたね」
「んー。そこが、マーレ師のスキル発動ですね。繰り返すうちに私=伊勢、は、向こうで活動している脳と伊勢としての脳と使い分けることができるようになりました。ですから、伊勢としてはちゃんと眠って脳を休めているんです。大脳の普段あまり表だっていない部位が、転移とイーゼの活動を保障していました。そのうちこちらで生活しながら向こうにも行けるようになりましてね」
「だって、脳は。ああ、そうか、サヴァンと同じ、マーレってそういうことですよね。」
「そうです。私は、マーレ・コントロールを会得しちゃったんですねえ」
にまにま口調はまるっきりイーゼだね。
うん。イーゼが平たい顔になったら、こんなかも。年格好も、同じくらい?んで、私の目がイーゼ仕様だもんで、なんかときめく。いやん、二人きり、なんて。
おい。節操ないぞ、碧。こいつはイーゼじゃない!私はアオイじゃない!って、思うけど。
心は、アオイに戻っちゃう。そいで、イーゼを想っちゃう。
「貴方が、イーゼから離れた時は…」
「イーゼは存在しません」
え?!
「さっき言いましたね。小説の続きのように、と。そうなんです。転移を繰り返すと、転移している間だけ向こうの時間は進行するんです。つまり、私が転移しない間、あの世界は時が止まった状態なんです。転移前のイーゼは存在しました。いえ、存在したという履歴はあります。ですがもはや、あの世界のイーゼは、私なのです。イーゼのスキルと記憶をもつ、私、伊勢朋成なんですよ」
それって。
「はい。異世界は、私、伊勢=イーゼの世界なのです。」
「でも!私ひと月も!!」
「そうなんです。私の創作世界だと想っていたところに、貴女が現れた。貴女も、アオイ・リーゼンバーグとして碧さんの人格のまま存在していました。驚きましたよ。イーゼとして、私、王院でかなり調べ上げました。で、出た結論が」
長冗舌に喉が渇いたか、伊勢さんは冷めたコーヒーをごくり。
そういえば、イーゼは猫舌だったなあ。
「碧さん=アオイもマーレを発動し、私の世界と融合した、と。そして貴女の方が強かった。貴女がむこうにいる間、私は戻ることが困難でした。辛かったですよお。時には仕事しながら、貴女と面談したこともありますから。も、お休みとって部屋に引きこもろうかと思ったくらい」
「…私の担当医だったから…」
「はい。貴女の脳を維持しないとね。それからどんな弾みで戻ってくるか、分かりませんでしたからね。でも、貴女戻る気配がなくて、身体も心配だし、こんな症例初めてだと副院長が騒ぎ出すし…で、ライラックのエキスをエアに混入させました。」
戻ってよかったですう~、話を終えて伊勢さんは、またコーヒーをごくごくした。
そうだったんですか。
異世界は、私と伊勢さんの世界なんですね…。って
「碧さん?」
真っ赤ですよお?熱が出ましたか?
って。
出るよ。恥ずかしいよ。29歳で、二人の世界なんて言葉!
「んで、私はね」
察しろお。ああ、どきどきしてきた。
「アオイに伝えきれなかったので、お伝えしにきました!」
「は」
何を?
「結婚してください。神埼碧さん!!」
・・・なんだとお?????
ごめんなさい、気がついたらやらかしてました
くされ王子じゃないのに 横回転バックハンド=チキータを炸裂させてました…
伊勢さん、生きてますか?
伊勢さあん!!
チキータを座ったまま打つとは。上級者だなあ。




