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いじめ対応マニュアルー転生教師はクビをかけて貴族令嬢を糾弾するー  作者: 神埼 アオイ
転生教師アオイとのアズーナ王国物語
22/45

反転

王子をどうしようかと迷いましたが、こうなっちゃいました。


ところで

いえすたでー まい ばーずでー

あい えいと もんぶらんぱいしゅーくりーむ

こんぐらっちゅれいしょん わたし

笑ってはいけない。

この状況は、笑ってはいけない。息を止め、どこか自分の痛いところをつねろう!

耐えろ!平静を装え!

がんばれ!みんな!!


「フェーベルト王子、お越しいただき誠にありがとうございます」

「うむ。」

「殿下、こちらでしばしご歓談を。後で踊って下さいますか」

「わかった。練習もしたことだし。今日ぐらいは、空気を読もう」

「ありがとうございます」

ローレイナ夫妻とアゼリアちゃんが殿下ににこにこ対応している。ご夫婦、素晴らしい忍耐力だ。

なあに、アゼリアったらアザラシを懐柔してるじゃん。

それより、アザラシ!


「クレア、よく耐えましたね…」

「先生、自分で自分をほめていますよ…」

女の子集団になって、ようやくクレアも私も息をついた。

アザラシったら!

もっさり前髪をオールバックになでつけて、形の良い額をだしてるの。銀髪はつやつや。眉も整えてりりしい形。そしてそして、まつげがとっても長いアーモンド形の双眸は、鋭い銀色!お肌はアゼリア仕込みかしら、無精ひげが消えてつやつや。色白だったのね殿下。薄い唇が今日は口角あがって感じがよいわ~。

っが!


顔がでかい!

首が埋まる!!

腹が出ている!!

おい、王子、幸せ太りじゃん。つやつやお肌がぱんぱんで、ベルベットの上着からはみ出した胸元のレースがね、がね…うぷぷ。よだれかけに見えます!

白いアザラシ。

パーツが整っているだけに、うううぷぷぷぷ。残念な容物。トドに近いよ身体わ。

めちゃくちゃアンバランス。



「アゼリア、あなた私たちの美容より、アザラシを何とかするべきだったのでは」

ひそひそと扇で口元を隠し訊ねると

「-わたくし、がんばったんですのよ…。殿下って、あのご気性でしょ。よいと思うことには必ず論破なさろうとするのですわ。」

アゼリアも扇でこそこそと不平を伝えてくる。


「1か月…。そういえば例の件をおじい様と後終いしていて、フェーベルトにろくに会っていなかったような。その間にああなったのか?」

クレアも眉をひそめながら参加する。お泊り3人組の仲良し内緒話である。


いいえっ!アゼリアが語気を強めて主張した。

「健康のために、お痩せいただきたくて、私料理人を王宮に派遣しましたわ。食べながら痩身できる献立を手配していましたの。そして、少しは身ぎれいにと、王宮を訪問するたびに美容と理容を施しましたの。」


ううん、うぷぷぷ。笑っていないぞ!がんばれ頬の筋肉!

「それで、どうして、ああなったの?」

「はあ。…殿下ったら、人の見えないところでお菓子や揚げ物をお夜食にしていたのですわ。何でも、勉強するには、頭に糖分が必要だと。おまけに座学ばかりで運動もなさらない。口うるさく言うなとお叱りされますと、わたくしも、どうしようもありません。」


ほお、つまり、

少しは見栄えをよくしようとダイエットメニューを押し付けたのに、当人にやる気も根気もなくて、アゼリアや侍従に叱られないように、部屋でファーストフード喰ってたってことね。ほいで、アゼリア流エステだけ効果があって、パーツだけ見目麗しくなったってこと!

リバウンドじゃん。

どうすんの、アゼリア。


「この夜会に間に合わせようとしたわたくしが浅はかだったのですわ…殿下にやる気を見せていただかないと、どうにもできませんわ!卒業まで2年半。立太子式には、すっきり王子になっていただかないと!」


先生、いくらでも罵倒下さいまし!王子の目を覚ますのは、先生の悪口雑言が一番!この夜もぜひ!…って、あんた、今度やったら本当に首がとぶよ。


お、助かった、ダンスの音楽に変ったよ。


ファーストダンスは位の高い順。今日は、王子とアゼリアだ。アゼリア、今眉をひそめて唇をとんがらせていたのに、王子に振り向いたら、いつもの絶品の微笑。すげえわ、あんた。



いや。笑ってません。

ほおら、微笑みです。顔のインナーマッスルが頑張っています。


アゼリア、あんた、やっぱりすげえわ。

王子のカクカクした動きを、これでもか!という流れるような力業でターンでカバー。おお、足下を見てごらん。王子同じ場所でのしのし足踏みしてるだけなのに、小鳥がさえずるが如く、蝶が羽ばたくが如く、アゼリアは軽やかに華やかにステップし回転しイナバウアーをキープしながらのターン。自力ホールドだよ!すばらしい。なにやってんの王子。


最後の決めのポーズ。一同拍手。アゼリアに。


美少女息があがっているのに、顔に汗の一滴もかきません。プリマドンナかシンクロナイズかと疑うような笑顔でご挨拶。アゼリアの消費カロリー凄いだろうな。唐揚げ食っていいよ、アゼリア。


「先生、貴婦人って、あんな凄い、もの…なんですか」

「男を選びなさい、クレア。けっしてまねしちゃいけません。」

そしてあのランク(王子)はめったに先生みたことないから!


さあ、アーボルトがうずうずしてる。はやくこの若葉マークをさらってあげて!


「アオイ、踊っていただけますか」

あら、イーゼ、今日は男前モードだわ。も・ち・ろ・ん♪


せ、せんせ~というクレアの泣き言を無視して、私たちはステップを踏み出した。

アーボルト君、後は頼んだぞ。




綺麗。

クリスタルに光が反射して、天井が煌めいている。

柱の一つ一つに飾られた生花(葬式ではない!)が淑女の華やぎに邪魔をせず夜会の格を引き立てる。弦楽の面々も麗しい。鳴らす楽器の音色も素晴らしい。


くるくる回るたびに、イーゼの目が優しく私を見つめてくれる。

ああ、楽しい。


「アオイ、上手ですね」「ふふ。イーゼも意外。」


お、クレアが緊張しながら踊り始めた。アーボルト君にこにことリード。さすがアゼリアのお兄ちゃん、慣れたもんだ。よし。


お、パトロ君かわいい女の子だと君も初々しいぞ。バルザック君!柔道じゃないから!お嬢さん投げるんじゃないぞ!ガカロ君身長差をモノともせずリードしてるね、可愛いね。


アゼリア&アザラシは、再び踊り出す。えらいなアザラシ。へたくそでも参加することに意義があるんだ。


ちらちら二人を見てたら、イーゼが耳元でささやいた。

「…王子惜しいですね。あれは痩せるととんでもなくイケメンなのに」

へ?…またあ。そんな漫画みたいな。

眼鏡取ったら美少女!みたいなあ。ないない。


「大ありですよお。顔をごらんなさい。すべてのパーツが整ってますよ。お肉に埋もれているだけで」

そ、なの?

「実はね、先ほど見せていただいたんですよ。王子の幼い頃の写真絵。控えの間にアゼリアが飾ったそうで」

で?

「それはもう、砂糖菓子のように可愛らしい男の子でした。アゼリアさん、メンクイです」

うわお!

でも、今は頑固なトドだよ?


「先ほど、イヌを飼いなさいとアドバイスしました。アゼリアがイヌがなつく王子が見たいと嘘をつきまして。」

ん?どゆこと?


「それから寝る前の睡眠導入剤も処方しますと。早く寝て早く起きて、散歩する。夜型から朝型に生活をかえて、適切に動けば、効果的かと」

なるほど。イーゼお医者さんみたい。

「医者ですよ。マーレ師は医者の資格も持ってます。」

そなの?じゃ、アザラシ痩せるかも!


アオイは再び二人をちらり。

アゼリア嬉しそうだなあ。アザラシでもアゼリアはちゃんと恋してる。よかったなあ!

イケメンのアザラシと超絶美少女が国民の前に並ぶ立太子式が、たあのしみ!!



「…アオイ、ちょっと夜風にあたりませんか」

「いいけど。」

まだワルツが鳴っているのに、イーゼはアオイの手をとり、バルコニーに誘った。


あ・れ?

夏とは言え、夜風は涼しい。もともと王国は夏涼しく冬穏やかな気候なのだ。ちょっと汗ばんだ頬に気持ちがいい。


「アオイ。出会って1月とまだ浅い私たちですが」


お。こ・れ・は…


「女性が働くことに私は偏見はありません。アオイの好きな人生を選択してほしいと思います」


ま・さ・か・の


「貴女の歩む人生を私は見たいと思っています」

…か・ら・の~

「私ハンス・イーゼは、アオイ・リーゼンバーグを」



んんんんん?ぐらぐらする?

…フラッシュ・バック…

え、まさか、今?

「…アオイ、アオイ?」

た・お・れる…

「アオイ!!」

ブラックアウト…!



わたし・また・しぬんですか?



ーバルコニーで倒れたリーゼンバーグは、目を開けることのないまま、青ざめたイーゼに抱かれていたー







イーゼってハンスだったんですね

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