審議2 お茶会事件
あな番のおかげで書いてる場合じゃなかったんです考察してたんですう。
長いけど辛抱して読んで下さいー。
お茶会事件
論点:クレアがドレスを裂いた行為をアゼリアは納得できるか
証拠2:ドレス
そのドレスは胸下で切り替えがあり、そのまま体のラインに沿ってすとんと落ち、膝あたりから優雅にドレープを描くという最新のものだった。初夏にふさわしい水色の、バラの地模様のみで何の飾りもない分、生地の上質さと仕立ての良さ、プロポーションが際立つドレスだ。さすが侯爵令嬢、おしゃれ番長である。
しかし
ドレスのすそから太ももあたりまで、見事なスリットが出来上がっている。糸のほつれが痛々しい。
家政学科から借りてきた人形に着せられたドレスを中央にセットして、アオイは審議を始めた。
まず、パトロ君が証言。その時を思い出したのか、アゼリアはまたフルフルし出した。
貴族令嬢にとって、他人の前で生足見せたなんて、お嫁にいけない恥ずかしさだよね。いや末端の貴族のアオイですら、膝より上は露出したことないわいな。この世界の習わしでは、女性のファッションはとても保守的だ。
「パトロ君ありがとう。アゼリアさん、証言はあっていますか?」
「はい。孔雀が鳴いて・・・ガラス瓶が倒れて、座っていたわたくしの足に中身がかかりました。わたくしびっくりして悲鳴をあげてしまいましたの。そのとたんクレア様がばっとしゃがみこまれて、わたくしのドレスのすそを・・・」ぐすっ。しくしくしく。
えい泣くんじゃない!
泣くから悲しくなるのよ、悲しいから泣くんじゃないのよ女の子って!!
「ふー、クレアさん。私との面談でお話された子細を今一度話してください。」
「はい。」
クレアは淡々とお茶会に招待された時点から語り出した。
お茶会に関しては自身の行動と判断に非はない、とクレアは自信をもっている。アオイとの面談でも、教科書事件は概略だったがお茶会事件は詳細に説明していた。
先ほどの謝罪はクレアが納得したものではなかった。王子に促されてのことだ。とすれば、少なからずクレアの謝罪は本心ではないとアオイは受け止めている。クレアにとってアゼリアとの事は、アゼリアの取り違いであり、浅はかな思い込みからクレアを恨んで被害者ぶっているという不満がある。
王子の面前で、アゼリアの過度な反応をさらし、自身を守る、つもりだったのだ。
それが。
(王子がクレアのプライドをへし折って、恥をかかせた)
多分クレアのプライドは、エベレスト並に高いだろうに。・・・そう思うとアゼリアは、割と素直かも。いや単純なのかも。
アオイが考えをめぐらせている間、クレアは語りかけるように話を進めていた。
温泉水は強酸水であること。肌を傷めたのではないかと咄嗟にとった行動であること。マーメイドラインは下着が薄く太ももまで体に沿っているため裂いた方がめくりあげるより露出が少ないと判断したこと・・・。
「強酸水・・・」
「酸性が強い溶液ですね。そんな危険なものを貴女はアゼリアに渡したというのか!」
パトロ君はおかんむりである。
「パトロ。わたくしがお願いしたのよ?皮膚炎にとても効くとわたくしの主治医も言っていたわ。ヴァレリオーズ山地の源泉がよいと」
こういうところがアゼリアの素直さである。ちゃんと公平さを忘れない。
うーん。この子が策を弄してクレアを貶めるって、あるのかなあ。
「その通り。わざわざ長逗留して湯治する患者もいるんだ。湯治場へは源泉から長い管に通して温度を下げ、患者たちは湯につかる。」クレアが自慢げに続けると、
「ただし」イーゼがペンごと挙手。
「湯に浸かれるのは2・3分が限度。一晩ナイフを浸けておくと、刃がすべて溶ける・・・でしたかねえ。」
えっ!
「え」「ええっ」「ひえ」「わあ!」
さて誰のびっくりでしょう?
イーゼが主導権をとる。
「目には絶対つけないこと。口に入れたら必ず真水でゆすぐこと。胃液かそれ以上に強い酸性でしたねえ。湯治場では、源泉を薄めた湯舟と真水を沸かした湯舟があるそうです。酸でぬめった体を洗い流したり中和したりしなければなりませんからね。」
「ま、あ!わたくしてっきり化粧水のようなものだと。」
「あ、そうですよ。皮膚炎の部分に塗るのはよいそうです。これだけ強い酸ですと殺菌作用が強いですからねえ。そういう意味ではお医者さんやクレアさんの言う通りなんですよ」
ただし
「今の様なことを渡したときに説明していれば、貴女は蓋を開けなかったでしょうがねえー」
クレアがさっと青くなる。一方のアゼリアは再び紅潮している。
「・・・私が謀ったと?」
「・・・どうなんですか」
「私が倒してアゼリア様にかけたとでも?!」
激高直前のクレアに対し、イーゼは冷静に受けている。
「いいえ。貴女はそんなことしませんよ。でなければ、慌ててドレスを裂いたりしませんよねえ。」
イーゼとクレアが睨み合う中、「そうでしたの!」という可愛い声が割って入った。
「わたくし、クレア様に本当に助けていただいたのですね。たかが水ごときと・・・」
がば、と、アゼリアがクレアに近づいて手を握る。
「誤解していましたわ!クレア様!わたくしの怪我がないよう最善をとってくださったのですね!」
「・・・え・・・え」
そう説明してたじゃないか、というのは置いといて。包丁の刃が溶けるってのが効いたんだね。
「そうです。クレアさんは強酸水の怖さを知っていた。その性質も熟知していました。ですが、ものの2・3分ならばそう害はなかったはずです。しかも常温です。けれど絹は吸水性がある。こぼれた酸が素足にすぐに達しているだろう、布地が肌にまとわりつく分浸る面積は大きい、と貴女は瞬時に予測した。」
美少女はここで最高の微笑みをたたえてクレアを見つめる。
「遅まきながら、感謝申し上げます。クレア様・・・」
「いえ。結果的には私が辱めたこととなりました。こうして直接釈明ができたこと嬉しく存じます。」
「クレア様」「アゼリア様」
きら
きらきら
うあ。まぶしいよう。美しいよう。
バルザック君なんか、感涙にむせいでるよお。
大団円だよお。
(でも、ね)アオイが口を開こうとしたとき、
「双方、気のせいたことよ。」と、上座の王子が声を張った。
でたー。もっさり王子―!!も、私あんたの名前忘れちゃったよ。
「ドレスを裂いて酸から守る。まことにそれが最善か?もっと簡単な方法があることではないか。」
言うのね!ばっさり言うのね!
手を取り合う美女とイケメン3人組は、再び爆弾を落とそうとする王子の言葉を恐々と待つ。
「先ほど書記の者が言っていたではないか。湯治場では、源泉を薄めた湯舟と真水を沸かした湯舟があると。酸でぬめった体を洗い流したり中和したりするのだと。クレア。」
びく、とクレアが怯える。かわいそうに、パブロフの犬だよ。呼ばれただけで断罪だよ。
「なぜ、ドレスの上から水をかけなかった?」
「!!!」
(そうなんだよね・・・)
クレアの弁にみんな騙されている。お茶会の席だ。侍女に伝えればすぐに水差しなど届くはず。希釈する方が速いに決まっている。そして、強酸水を薄めれば何の害もないことをクレアならば熟知していたはずなのだ。ましてや人が浸かる温泉水である。いかな令嬢の柔肌でも、水差しの水一杯をかければそれでいい。ドレスは台無しになるけれど、酸のかかったドレスなど染色が落ちてしまっている。肌をさらす必要など、なかったのだ。
「わた・・・しは、混乱して思いつかず・・・」
「苦しいな。」
クレアはがくんと膝を折る。ざわざわとイケメン3人組は色めき立つ。
ん~~。クレア、謝ろうか?
「そしてアゼリア」
うお、まだ王子のターンかい。え。アゼリアちゃんにも、まだ隠し事があるの?
「お前、自分でかけたんだろ?」
え。
「「「「「「「ええ?」」」」」」
「化粧水程度の水だとお前は思っていた。だから太ももの付け根あたりまでざっぱりかけたのだ。見ろ。ドレスの膝上中心に円を描くように広く色落ちしている。テーブルに立てた瓶が倒れたのなら、もっと膝下に、そしてもっと量は少なくかかっただろう。テーブルにも広くシミができていたはずだ。」
「・・・・・・」
アゼリアは白魚のような指で目を覆う。肯定してるも同然だね・・・。
「無理を言って取り寄せてもらったものを粗相でこぼしてしまった。大方ああら大変、もう一度お手数をおかけします、とクレアを困らせるつもりだったんだろ?」
裏目に出たな、と王子は言って、ふ、と笑った。(きもい)
2人の淑女はうつむいて、無言だった。
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イーゼの記録
お茶会事件
温泉水の害を知らずに自ら膝にかけたアゼリアのドレスをクレアが次善の策として裂いて辱めた。
双方、謀事あり。
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「茶番は終わりでよいな?校長。」
なんだろう。この尊大さ。いや王子だから当たり前なんだけど。なんかむかつく。なんかさ、女の子に対する礼儀とかいたわりとか、ないよねさっきから。
「アゼリア」
どS男があごをくいとあげて婚約者を呼ぶ(きもい)
「はいここに」
「学院を出ていけ」
え。えええええええええええええ!!!!!!!!
アゼリアの顔が蒼白になった・・・。
次回アオイさん本領発揮です




