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いじめ対応マニュアルー転生教師はクビをかけて貴族令嬢を糾弾するー  作者: 神埼 アオイ
転生教師アオイとのアズーナ王国物語
16/45

審議 1 教科書事件2

「クレア様がわたくしを侮辱されたからですわ!!あんな・・・ひどい事おっしゃって。まるで、まるでこの学院には不似合いだと言わんばかりに!!」

アゼリアは堰を切ったように訴える。


「お話いただけますか、アゼリアさん」

「・・・は、い」


確かに教科書を投げ捨ててしまいました。わたくしそのころ幾何の授業が辛くて・・・明日までの課題があって、課題の後は小試験、その来週は定期試験で・・・。いろいろお友達も教えて下さるのですが、一つの問題が変わるごとに難しくて・・・途方に暮れておりました。そして思ったのですわ。本がなければ明日は逃れられる。本さえなければ・・・。


「それで、池に投げ込んだのです。誰に見つかることもなく、その時は。」

「本がなくなれば、よいと。」

「恥ずかしながら、そのように・・・」


――後を追って誰かが渡しに来るとは思わなかったのに、来たのだ、クレアが。

お慕いする王子と『仲のよい』というクレアが。


「わたくし、恥ずかしくて、胸がどきどきして・・・こんなことを殿下に知られたらどうしようと、そればかり・・・」

アゼリアはその時そうであったろうという風にスカートのすそを膨らませ、ぺたりと座り、絨毯の毛足をか細い指で握りしめ、羞恥に紅潮した頬に涙をこぼしていた。


「それだけではなく、クレア様はわたくしの家名を引き合いに侮蔑を重ねました。あ、あのような・・・」「誤解です、アゼリア様」「何が!」

わああん、と今度は幼子のようにアゼリアが泣き崩れた。クレアは困った顔でアオイを見る。

やれやれ。


「では、どんなやりとりがなされたか確認いたしましょう。ここに先ほどのバルザック劇場・・・おほん、バルザックさんの証言記録があります。クレアさん。」

「何か」

「順序良く、思い出す限り、正確に、中庭でアゼリアさんに話されたことを今一度おっしゃってください。」

「・・・了解した」


クレアが上目遣いに記憶をたどって思い出した会話を再現する。その後をアオイが記録を読み上げる。


「アゼリア様、ご機嫌よう」

<アゼリア嬢、ごきげんよう>


「よくないですよ。来週は中等部も試験でしょう」

<ずいぶん余裕ね?来週は中等部も試験でしょう?>


「まあ、ローレイナ家はエリートぞろい。よいお家柄ですよね」

<ま、お家柄で何とでもなるかしら>


「兄上様に続いて、難関の学院に貴女もご入学されたのですし」

<この学院にねじこんで入学されたくらいですし?>


「・・・ひっく。やめ、やめてくださいませ・・・」アゼリアの嗚咽が大きくなる。


「止めてやれ」

王子が再び割り込んでくる。

「クレア。分かったか」


ん?今度はクレア嬢が顔を赤らめる。やばい、王子のターンにするもんか。


「クレアさん。お判りになりましたか?本を捨ててまで学業と向き合いたくなかったアゼリアさんに、捨てた本を届けたあなたの姿は・・・責め苦以外の何物でもなかった。貴女のおっしゃる通りです。拾った貴女がアゼリアさんに恥をかかせた、のです。

侯爵令嬢として大切にお育ちになった彼女の自尊心はズタズタです。しかも、本さえなければ、というところまで追い込まれた彼女の心理からすれば、貴女の言葉ひとつひとつが刺さったのです。

悪気のない貴女の言葉をコンプレックスで受け止めたアゼリアさんの心に届いた言葉が、今私が読み上げた証言なのです。」

よっしゃあ、長セリフかまないで言い切ったぞ!

この件寄り切るぞ!


アオイはそっとアゼリアの腕をとり、立たせようと促す。その姿をクレアは亡と見つめていた。

「アゼリアさん。泣くのはもうやめなさい。侮辱などなかったのです。すべては、貴女の心が歪めてとった結果です。」

「ごめ・・・ごめんなさい!!わたくし・・・わたくし!」


――普通泣きじゃくるとどんな娘も容貌が半減するもんだけど。無敵のアゼリアちゃんは泣いても美しいなあ。真珠の涙だよ。キラッキラだよ。

さあ!和解へGO!



「何の。まことにクレアに悪意はないと?」

―――ち。もっさり王子、だ ま れ よ。

手打ちさせろよお。


「クレア」

ぼさぼさの前髪がうざったらしくその目を覆っていて、王子の表情は分からない。が、呼ばれたクレアはかすかに肩を震わせた。


「本を拾った段階で、お前ならアゼリアの状況がつかめたはず。そっと戻してやるのが親切だ。手渡すのみならず、アゼリアの家に言及して圧をかけるなど嫌味この上ないな」

うえ?王子、それって・・・


「飛ぶ鳥を落とす勢いのローレイナ家。その至宝の令嬢だ。手負いの鳥の泣き顔を見たい気持ちもわからぬでは、ないがな?」


クレアたんが、クレアたんが、真っ赤になってる。


(クレアにとって、アゼリアは目の上のたんこぶだったってことか。おっ、弱点みーっけ★みたいな軽い悪意はあったってこと。)


「クレア」

「・・・承知しました。・・・アゼリア様」


ガカロ君にもたれてかろうじて立っているアゼリアの前で、クレアは片足の膝をつき、かがみこんだ。そして

「非礼、お詫び申し上げます」

深く頭を下げる姿は、その所作も、イケメンである。


「クレア、様・・・ごめんなさい。いえ、申し訳ございませんでした・・・。」

アゼリア嬢も、美しいカーテシーで返す。


―・-・-・-・-・-・-・-

イーゼの記録

 教科書事件

 アゼリアの行動に非をほのめかしたクレアの言葉がアゼリアを追い込んだ結果、教科書を破りバルザックに訴え、クレアを貶めた。

 双方、非を認め、謝罪。

―・-・-・-・-・-・-・-


それにしても、アゼリアちゃん。ここまで学業に劣等感もってたなんて知らなかったなあ。確かに文系はいいんだけど、理系はメタメタだもんなあ。蝶よ花よと育てられた彼女の初めての挫折というわけね。担任として、気をつけなくちゃ。

しかしながら。


この、もっさり王子の尊大さをどうしてくれよう。ちっともアオイサイドで話が進まない。美味しいとこ、ひょいひょい顔を出して裁いてしまう。

喰えない王子である。


こほん。

「では、次の事案に、移りましょうーーー。」


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