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いじめ対応マニュアルー転生教師はクビをかけて貴族令嬢を糾弾するー  作者: 神埼 アオイ
転生教師アオイとのアズーナ王国物語
13/45

面談4 クレア・レア・ヴァレリオーズ

いつもありがとうございます!

辛抱して読んで下さい。

なんというか。


クレア嬢は男前である。

紺のハイウエストミディスカートに、何の飾りもない黒のシャツブラウス。教師の私以上に実用的なスタイルだ。


ただし、その下半身の長いこと長いこと。胸から上の写真絵からは伝わらない細身の長身は、優に170を超している。さらに、編み上げブーツの底を足すと175を超えるだろう。つややかな黒髪を緩く後ろで束ね、正面から見るとショートカットのようだ。顔はすっぴん。細めの眉、勝ち気そうな黒い瞳、整った鼻梁、きり・と結ばれた珊瑚色の唇。


ああ・・・いけない世界に溺れそう。

あれである。

劇場入りの宝塚トップスターの私服と素顔を見て更にときめく、あれである。


素敵・・・。写真絵の嘘つき。

ずっと見つめていられる。

ご飯3杯は、いける。


「お久しぶりです・・・中等部の先生が、何のご用でしょうか」

ハスキーなアルトの声も、イケメンボイス、である。

「リーゼンバーグ先生?」

を・と。


「・・・覚えていただいていて、光栄ですわ。直接担任したことは、なかったのですよね」

「はい。すれ違いでしたね。でも、先生のご教授は、生徒の中では好評でしたので。」

「ますます光栄です」


こんな麗しい生徒だったなんて、お姉さん知らないで中等部卒業させちゃったよ!

「本日は、生徒の安全安心の維持保全、という立場から、貴女を呼び出しました」

いけないいけない。

いよいよ、<加害者>クレア嬢の面談なのだ。


お座りなさい・・・きゃあ、アームチェアの肘当てに、ほおづえついて、足を組んで、長い指を軽くほおに当てて、膝の位置たかあい!白い指ながあい!メンズノンノもジュノンも欲しがるよ!


「安全保持?」

「私は生徒のトラブルに際し、常に中立の立場であると堅く約束します。ですので、もし私の言動がどちらかに偏った時は、遠慮無く異議を唱えて下さい。不快なこともお尋ねします。お答えいただける範囲でかまいません。ただし

「おっしゃらない、もしくは偽りを申し立てた際は、貴女に不利益が生じるやもしれませんー。


「まるで罪人ですね」

美しい眉をひそめてクレアがいぶかしがり、ふっと不敵な笑みを浮かべる。

ああ、お姉さんズギュンだよ。。。。。。でも負けないよ。


「ほほ。罪を犯していない方には容易いことですわね。ちなみに、私と貴女のやりとりは、この方に記録していただきます。ー貴女にとっても公正を期すためです。」

王院のイーゼです・・・今日のイーゼは気配を消した黒子モードの様だ。

では、はじめましょう。



「貴女は、フェーベルト王子と同じクラスですね。」

「ーそれが、何か?」

「どんな方ですか?」

「あの方は、優秀だ。学業に専念していらっしゃるが、卒業すれば優れた王太子となるだろう。」

お、口調が男前らしくなってるわ。これが地なのね。取り調べに礼節は必要ない、と。


「寡黙の王子などど、ふざけた通り名で呼ぶ輩もいるけれど、信頼に値する友人に対しては饒舌だ。知識欲は貪欲で、底を知らない。社交の場を嫌うのは少しばかり次代の王として如何なものかとは思うが・・・将来私が伯爵として、臣下の礼をとるに値するお方だ」

ご立派です。恋する乙女のモードではないけどね。

うークレアぞっこん説は崩れたかなあ。


「男性としては?」

「私が?はは。こんななりだが、私が王子の前で女であったことなどない。」

ラブはない、ないのね!


「私が女になるときは、伯爵となり婿をとる時。家を継ぎ子孫繁栄をなすことが私の義務。私がいわゆる男性と認識するのは、未来の婿ただ一人だ。」

王子は、どうなのかなあ。宝塚好きかも。それはそれで、ボーイズラブっぽいけれど!

やっぱり王子の面談も必要かなあ。


「それに、王子はすでに婚約者がいらっしゃる。馬鹿な妄想をしていただいては、我が家名はおろか、王家をも汚すことになりますよ?リーゼンバーグ先生」

にやり、と笑みを浮かべるクレアは一回り年下とは思えない貫禄である。

負けてる、お姉さん負けてるよ。


「・・・では、質問を変えましょう。その王子の婚約者はご存じね?」

「ーアゼリア・アズ・ローレイナ侯爵令嬢。中等部にご入学されたご令嬢ですね。」

「面識は、おありね?」

「ええ。」

「どのような?中等部と高等部では、なかなか接点がないのでは?」

「・・・・・」

ちょっと唇をすぼめて、考えるしぐさ。

罪だよ、クレア。絶対陰で親衛隊できてるよ。


「先月・・・5月の終わりごろに、放課後お会いしたでしょ?」

「放課後・・・」

「中庭の噴水のあたりです。」

「ああ!あれですね!」

んー、計算?すっとぼけ?それとも本当?


「おかわいそうに、教科書が噴水池に浮かんでいた。かなり痛んでいたが、裏表紙の名前が読めた。乾かしてお届けしようと中庭からバラ園に向かったところ、アゼリア様にお会いした。試験も近いことですし、がんばってくださいと申し上げて、お別れした。」

ほう。

中庭 噴水池 教科書 バラ園 試験 がんばって

合っている。シチュエーションは合っている。

クレアの話では、シロ。


じゃあ、真っ黒を示しましょう。

「こちらの調書を読んでいただける?」

私は、イーゼ作バルザック劇場の詳細な記録をクレアに渡す。几帳面なイーゼの端正な文字が並んでいる。よくあの速さできれいに書き留めたよね。

ぱらぱらと読んでいくうち、クレアのほおがバラ色に紅潮する。

「・・・・これは、何の、ふざけた小説だ?」

「アゼリア嬢の友人から聞き取った話を写しました。一語一句。」

「ばっ・・・!!」

この私がこんな化粧くさい言葉遣いをするか!!・・・って、怒りポイント、そこ??

「え、と、ご友人の過剰な演出は、あったかも。で、どうなの?内容は」

クレアは朱に染まった顔を少しゆがめて、口惜しそうに爪をかんだ。


「今の貴女のお話と、この内容は、かなり人間像が違うわね。逆さに読んでも、高等部の貴女がひよっこの1年生の女生徒を虐めているように感じるわ」

「・・・この友人は、近くにいて聞いていたというのか?アゼリア様を私が泣かせたことを見ていたと?」

「いいえ、バラ園には、貴女とアゼリア嬢の二人だけでした。これはアゼリア嬢の訴えを友人が再現したものよ。」

「アゼリア様の・・・・・・・」

クレア嬢は、ぽい、と調書をテーブルに投げ、額に手を当てて、声を絞り出した。


「・・・黙秘する」

「は」

「何も言うことはない。黙秘だ。」

えええ・・・

「認める、ということ?潔白ではなく?嘘をついた、と?」

「判断はさせない。黙秘だ」

それはクレア、不利になるよ?俄然、グレーになってるよ?

「・・・では、次の話を」

「・・・まだあるのか」

あるんです。


「6月2日、ユーナ伯爵令嬢が開いたお茶会で」

「私がドレスを破ったことか?」

ふ、と、皮肉に鼻で笑ってヴィクトリアンチェアにもたれかかる(耽美)。

お認めになるんですね。

「お話、いただけますか?」


私とて、独身の娘。茶会は煩わしいが、社交の場は大事だからな。ユーナ伯はわが祖父と親交があるので、出席した。東の国の趣向をこらした美しい拵えで、めずらしい花と鳥が佇み、面白いものだった。そのお茶会に、私は土産を持って行った。アゼリア様のたっての希望で、弟君の皮膚炎に効能がある温泉水だ。私の領地は温泉が湧いているのでね。ガラスの瓶に入れて、お渡しした。


アゼリア様はとてもお喜びだった。蓋は開けないよう申し上げたが、彼女の興味が勝って、開けたのだ。その時、けたたましく鳥の鳴き声がして気を取られたとき、悲鳴があがった。慌てて見ると、ガラス瓶が倒れている。その温泉水は強酸だ。とっさの判断で常に携帯する短刀で彼女のドレスの裾を切り、けがのない様、手で裂いた。すぐに侍女に水とタオルを持ってこさせ、手当てした。


いかに湯治で人の使う温泉水とはいえ、ご令嬢の弱い肌に何かあっては我が家名にも傷が付く。他のご令嬢のように、ペチコートが重なったドレスならばよかったのだが、膝上がおみ足に接した、その、大人びたドレスだったので、めくるより裂いた方が、露出は少ないと判断した。大事がなくて何よりだった。非礼をわびて、後日改めてシルク地を送らせていただいた。


「成程。」

「ご友人の証言に合っている?それとも、また()が入っている?」

「いえ。私のメモと整合しています。ただ」

「何か?」

「貴女のしたことをアゼリア嬢や周りの令嬢は、そのように捉えてはおりませんよ。」

「・・・乱暴を働いたと?」

「そうです。アゼリア嬢は、貴女から酷いいじめを受けている、とアゼリア嬢の友人は訴えています。そして、彼女の不勉強を恥じろと責めている、と」

「・・・」

「どうなのです?貴女の言動は、彼女の尊厳を傷つけるものでしたか?または、無自覚だったけれども、それ相応の言葉を発しましたか?」

す、と長身が立ち上がった。


「黙秘する。」

「ヴァレリオーズさん!お待ちなさい」

すたすたと戸口に向かう彼女に、私も立ち上がり焦って声をかける。クレアは振り向いて、冷たい眼で私を()め付けた。

「アゼリア様、そのご友人に引き合わせていただこう。その場をあなたに作っていただく。それまで私は何も言わない。釈明もしない。」

それから

「王子に裁定をいただく。私と王子の色恋などとほざいた教師に私の名誉を託すわけにはいかない。よろしいですね、リーゼンバーグ」

失敬、と短く言って、彼女は退室した。



「どうしましょうお!怒らせちゃいました!!あわわわ!!クビがクビがちかいいいいい」

あわあわと私はイーゼをばたばたたたく。今日に限って、なんで助け船だしてくれなかったのお!カウンセリングスキルを発動しなかったのよお!


「だって、彼女は何一つ偽りを騙ってはいませんよ?貴女も、そんな失礼な誘導はなかったですよ?ほら、記録させていただきましたよ」

「でもお!辺境伯令嬢を本気で怒らせました!綺麗だったけど、どうしましょお!!!」

「いいじゃないですか」

は。


「彼女は、関係者全員の前で、身の潔白を証明すると言っているのです。貴女の仮定Bですよ。もしくは、彼女の言動を歪んで受け取ったアゼリア嬢に真意を理解させたいのかも。いずれにせよ、両者相対する必要はありますよね。」

でも、でもおおおおおお!


「・・・王子を引っ張り出した時点で、『断罪』じゃないですか。私は嫌です!」

断罪も、ざまあも、嫌!

生徒が不幸になるのは、絶対いやだ。

「・・・真実は、どちらかに辛いものになることでしょうね。でもね、アオイ。辛いことが不幸とは限りませんよ」

「・・・」

「乗り越えなくては、人は変われません。辛い真実に向き合ってこそ成長ではありませんか。」




「校長と副校長に報告しなければなりませんね・・・」そして『場』のセッティングをお願いしなければ。

やはり、断罪イベントからは、逃れられないということ。どんなに碧=アオイが頑張っても、シナリオは補正されるということ・・・。

「アオイ」「はい」

「私たちは、まだ、アゼリア嬢と王子に会っておりません。『主役』の二人に」

「?」

「この不確定要素が、どう転ぶか、見てみようじゃありませんか。」












シアタークリエでミュージカル観た翌日、同じビルのホテルのカフェレストランから宝塚劇場の入り口が見えました。・・・息を飲むような美しいお方が、長い手足と小さい頭で闊歩されてて。ファンの皆様とお話されておりました・・・そんときの私は、マジで3杯コーヒー飲んでたよ。見とれて。

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