アオイの推理
ペンネームは、主人公の二人から取りました。実在の漢字の異なる作家さんや、メディアのキャラクターと被っていることは、後から知りました。無知なんです。ごめんなさい。
私の先入観が邪魔をしていたんだ・・・。
ヒロイン顔でパトロやナレックたちを攻略してたアゼリアは、てっきりフェーベルト王子とも、ラブラブだと思ってた。
しかも婚約者だし。
だったら初めからクレア嬢が入り込む余地なんてないわけで。
よほどのことがあって、クレア嬢が王子に惚れ込んでいたとしても、上位貴族の王家の婚約者相手にかないっこないわけで。秘めたる恋心をその胸に押しとどめてすごすか、アゼリアにバレないよう、こっそり王子の愛人(浮気相手)に納まるよう努めるか。
待って待って。
(もっさり王子がクレアに攻略されていたら?)
つまり。
王子が同じクラスのクレアに心惹かれてしまい、焦ったアゼリアが王子の気持ちを取り戻すためにシナリオを組んだとしたら。
クレアはヒロインで、王子を攻略し、アゼリアはやはり悪役令嬢というポジションで考えてみよう。
そうなると、アゼリアがクレアに意地悪をしたり王子を諫めたりして、あの手この手を使おうとしただろう。けれども。
うまくいかなかった。
アゼリアはクレアより3歳年下。学院に入学してまだ3か月である。人脈づくりに手をとられ、気づけばセオリー通り、ヒロインのクレアと王子の絆は深まってしまっていた。
アゼリアは焦る。
では、どうするか・・・。
そう、逆転すればよい。自分がヒロイン枠に収まり、クレアを悪役令嬢に落とし込めばよい。
事実ならなおのこと。そうでないなら「事実」を創れば良いのだ。そしてバルザックを信じ込ませ、取り巻きの令嬢たちを証人とした。
これで廻りは動く。
アゼリアはそう思っただろう。はかなく悪役にいじめられているかわいそうなヒロインの出来上がりだ。そして、いじめられた「事実」を積み重ねてクレアを断罪する。
ここまでは、周到。
教科書の件は、証人がいない。しかし、クレアにしても目撃者がいないため、やっていないと言い張っても証明はできない。
お茶会の件は、3名の令嬢が証人となっている。パトロが「一人ずつ」聞き取ったのは、口裏を合わせないよう公平を期したものだ。これはアゼリアにがぜん有利となっている。
ぼろぼろの教科書と、裂かれたドレス。
心証は大きくヒロイン=アゼリアに傾く。
これをもとに、王子に泣きついて、クレアを排除しようとしたのだろう。
けど。
(思う通りにはならなかったのね)
なぜか王子の心はアゼリアに戻ることはなかった。
焦ったアゼリアの次の手。
テンプレ通りなら、「階段突き落とし事件」発生である。クレアがアゼリアを階段から突き落とし怪我をさせる。命をも危うくする狼藉に、さすがの王子も立腹しアゼリアに寄り添うー。
ところが
おそらくその企てが実行できなかったのだろう。高等部と中等部という器の違いは、2人と関係者が揃ったシチュエーションを仕立て難い。
アゼリアだってバカではない。目撃者も物証もない状況で芝居しても、クレアを犯人に仕立て上げるには無理がある。
そこで、悲劇のヒロインとして、颯爽と自殺未遂をやってみた。
そうまで悩んでいたのかと、王子はきっと戻ってきてくれる・・・。
多分、ここまでくると、クレアを排除することより、王子を振り向かせたい女心の一念が勝っている。のだろう。
アゼリアの誤算はここにある。
兄の存在。兄は、王子を動かすことより学院の教師を巻き込んだのである。
第三者の介入に、どこまで自分のシナリオが通用するか、アゼリアの焦燥はいかばかりかと思われる。
「さて、アオイ。貴女どうします?」
教官宿舎まで送りますよ、と、いうイーゼと石畳を歩きながら、アオイは深く思い悩んでいた。
「・・・仮定A。クレアのいじめが真実だとします。少なくともバルザックさんとパトロ君の証言の件はね。関係者の中で、クレアを断罪したとして、王子がアゼリアに戻るかは分かりません。
仮定B。全てが狂言でアゼリアのシナリオだった場合。断罪はアゼリアに下ります。しかし・・・」
私は思わず足を止め、イーゼの白衣の袖をつかんだ。
「断罪が誰かの名誉を回復するのでしょうか?誰かが幸せになることで、誰かを傷つけてしまいませんか?もしかしたら、みんなが不幸せになりはしませんか?!」
…実に、教師らしい、貴女らしい想いですよ…
イーゼが優しく私の肩を抱き、とても穏やかにつぶやいたー
感想よかったらくださいね。




