会いたい
ある日にんげんが犬に乗って森を歩いていると、しばらく先の方向にうろうろと木立の間で右往左往している影が見えました。
これはなんだろうと思って犬に近寄ってもらうと、美しい……つまりはお母さんに似た形の……上半身と、小さな脚が生えたトカゲの下半身の兄弟がなにやら悩んでいる様子でした。
「こんにちは、どうしたの?あとあなたは兄、姉?胸が無いだけじゃわかんないや。」とにんげんが声を掛けると、その兄弟はにんげんと犬の方を見ると、「ん?あ、ああ。にんげんと犬か。俺は金蛇の兄、よろしくな。」と挨拶しました。
にんげんもよろしく!と返してからどうしたのか聞くと、金蛇の兄の悩みはこんな感じでした。
お母さんに会いたい、でも乳の日にあっているし、用も無いのに顔が見たいだなんていう理由だけで湖に行って呼び出してもいいのかと、もうかれこれ太陽と月が数え切れないほど追いかけっこをするほど長い間悩んでいる、乳の日ができる前はずっとお母さんの傍に居たのに。
というものでした。
にんげんはそれを聞くと、「会えばいいじゃん。誰も会っちゃいけないなんて、言ってないんだよ?」と言いました。
でも金蛇の兄は、「俺の身体、足がなければ結構、その、お母さんに似てるだろう?一度離れてみると、こんな中途半端に似てる身体の子供はお母さんは嫌じゃないかって思ってさ……」などと言います。
にんげんは少し怒って、「ばか!お母さんはそんな事くらいで私達子供を嫌ったりしないよ!会いに行けばきっと喜んでくれるはずだよ!」と言います。
金蛇の兄は、「そう、なのかな。自信が無いよ。」と性別の薄い美しい顔を俯かせて瞳を閉じて言いますが、にんげんはそんな事お構いありません。
「大丈夫だったら大丈夫!犬もそう思うよね!」と力強く言います。
犬もこれに、「ああ、そうだな。安心しろ金蛇の兄。お母さんは外見の事程度で嫌ったりなんかしないさ、だって俺達兄弟は色んな姿で産んでもらったんだから。」と続きました。
すると金蛇の兄は、「そうか。そうなのかな……うん、分かった。会いに、行って見るよ。」といって儚げな笑顔を見せました。
にんげんは、「うん、それがいいよ。お母さん喜ぶよ。ね、犬。」と言い、犬も、「そうだ。ついつい皆お母さんと顔を合わせる時は用がある時、というような感じが出来上がっているが、誰もそんな事決めちゃいないんだ。きっと用が無くても顔を見せたら喜ぶさ。」と答えました。
金蛇の兄は、「助言ありがとう。じゃあね、またねにんげん、犬。」と言って湖の方へ去っていきました。
にんげんと犬はまたね、と言いながら金蛇の兄とは反対に山の方へ向かっていきました。
こうして、金蛇の兄はちょくちょくお母さんと顔を合わせるようになり、話す事も用も何も無いけれど顔が見たいというと、大層お母さんに喜ばれたそうです。




