温泉
にんげんと犬は山の中腹にある温泉を目指してえっちらおっちらと山を登っていました。
その温泉は溜まっている場所の上から流れ込み丁度いい按配に温もる温度になっている、怪物達にとっても人気のスポットです。
そんなわけでいざ温泉についてみると翼狼の姉がどっぷりと温泉に浸かってくつろいでいました。
「あ、翼狼の姉ー!こんにちは!」と挨拶するにんげんと、「よぅ、翼狼の姉。」とちょっと残念そうに言う犬。
なぜ犬が残念そうなのかと言うと、「こんにちはにんげん。良く来たねぇ。一緒にはいろ。でも犬。あんたはそこで待てよ。私とあんた、二人は入りきらないからね。」というわけです。
犬はにんげんと入るつもりでしたが、先客が居てはそれもままなりません。
温泉に浸ってにんげんにじゃばじゃばとお湯を掛けてもらって、わしわしと毛皮に埋もれられるように洗ってもらうのはことのほか気持ち良いので、これは結構な問題です。
先に狼の胴をお湯に浸していた翼狼の姉とたっぷり温まったにんげんにさらに犬を洗わせたりしていたらにんげんがのぼせて、ふやけてしまいます。
なので、無邪気に翼狼の姉に呼ばれるままに温泉に入ってから、「お湯に浸かった後はどうするの。」という翼狼の姉と、「うんとね、犬とひなたぼっこ。ちゃんと太陽で乾かさないと寒くなるもんね。」と話すにんげんに、犬は未練たらしい視線を送ってしまうのでした。
そして、にんげんがほかほかになったら、犬はさっと温泉の中でくるりくるりと身体を廻して全身をお湯につけると素早く出てきて、「日向ぼっこに行こうにんげん。」というのです。
にんげんは、「お湯、もっと浸からなくていいの?」と聞きますが、犬は、「別にいい。」と言います。
にんげんはこんな時、なんで二人の時はもっとゆっくり入るのに、一人だとこんなさっぱりしてるんだろうと不思議に思いましたが、「そっか。じゃあお湯ぶるぶるしてからいこっか。」と深く追求はしませんでした。
こうして犬は翼狼の姉に「あんたも大概にんげんにやられてるわね。ゆっくり入ってもにんげんが冷えないように私が抱いててあげたのに。」と呆れたように言われつつ、身体を思いっきり振って水を払うとにんげんと温泉の畔で日向ぼっこを始めるのでした。
犬はにんげんが自分にべったりだと思っていますが、他の皆に犬はにんげんにべったりだ、やっぱり末の兄弟だから甘えん坊だな、と思われていることには気づいていませんでしたとさ。




