巨豚熊の兄
にんげんと犬が森を散策していた時です、遠目にふごふごと鼻を動かす、豚の頭と、熊の胴体、そして兎の足を持つ大きな兄弟が居たので近づいてみました。
すると巨豚熊の兄は、「こっちに来るんじゃないぞう!絶対にだ!」と叫びました。
そこでにんげんはなんで行ったらいけないのか大声で聞きましたが、要領を得ません。
巨豚熊の兄は、「こっちには凶暴ないのししが…」とか、「実は俺の周りには穴が開いているんだ」とか。
見え見えのでたらめを並べ立てるので、逆に不審に感じた犬は巨豚熊の兄に近づいていきました。
すると巨豚熊の兄はもう涙声で「来るなったら!こっちには美味しいきのこなんかないぞ!ほんとだぞ!」と言い始めました。
その様子があんまり必死なのでにんげんはもう止めようと言ったのですが、犬は近づくのを止めません。
そして巨豚熊の兄が目前まで迫ると、彼は明らかに何かを守るように犬の前に立ちはだかったのです。
「ぜ、絶対に渡さないぞ!茸蝉の兄の極上のキノコが生え始めてるのをようやく見つけたんだ、絶対渡さないぞ!」と叫ぶ巨豚熊の兄に、犬は「なんだ。やけに必死だと思ったらきのこか。巨豚熊の兄も食い意地が張ってるなぁ。」と言いました。
それから「きのこ、食わないよ。俺にはあんまり美味いもんじゃないから。」というと巨豚熊の兄は一旦安心したのですが。
「きのこ、美味しいのあるの?」というにんげんの期待に満ちた声に、「う、美味くない!にんげんには美味くないぞ!」とまた必死になりました。
どうやらよほどキノコを独り占めしたいようです。
そこでにんげんが「ねぇ、ちょっとでいいから分けて。」というと、巨豚熊の兄は、「分けるだなんてとんでもない!茸蝉の兄の茸は木でもあっという間に育つこの森で、ちょっとずつ、本当にちょっとずつしか育たないんだ!それを分けるなんて…考えたくもないね!俺はこれからキノコが十分な大きさになるまでここでずっと見張るんだ!乳の日だっていかないぞ!」とまで言うのです。
その情熱は並々ならぬ物があります。
これにはさすがのにんげんも気圧されて「う、うん。解った…見張り頑張ってね。」としか言えず、犬に別の場所に行こう、と囁くのでした。
犬はそんな巨豚熊の兄に「確かに貴重なキノコかもしれないが必死になりすぎだ。ちゃんと乳の日には顔をだせよな、巨豚熊の兄。」と言うと身体を翻して別の場所へとにんげんを乗せていきました。
さて、そんな巨豚熊の兄でしたが…結局その後の乳の日を一回抜かし、さらに太陽と月が二十回ほど追いかけっこをした後、森中に響く声で「うんまいぃぃぃ~~~~~~!」と叫んだとさ。




