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美の形

 その日にんげんはまた蟹の兄の綺麗な殻をにこにこしながら撫でていました。

すると突然蟹の兄は「しかし、にんげんはほんに綺麗な形をしておるなぁ。」と言いました。

 にんげんは自分が綺麗な形をしていると言われてもぴんときません。

そうかなぁ、と思いながら自分の身体を見回してみましたがよくわかりません。

 そんなにんげんの手を鋏で優しく挟んで撫でる蟹の兄、「この腕の形、頭の形、まぁ髪の色と耳の形、肌の色と足は我的にはちと容色を損なっているが、母様と同じような形に近いというのは我等兄弟にとっては共通の美しさの計りになるといえるのぅ。」と感慨深げに言います。

にんげんは、「髪、黒いのダメなの?犬とお揃いで気に入ってるんだけどなぁ」とちょっと落ち込みました。

蟹の兄は、「いやいや、美の規格からずれるというだけで一概に悪いとは言わぬぞえ。母様と同じ形に自分と同じ色を持たれていると言うのは嬉しい事でもあるしの。まぁそこは兄弟それぞれという所かの。」と言って慰めます。

 するとにんげんは、「美のきかく?」と不思議そうな顔をします。

蟹の兄は鋏の外側でにんげんの頭を撫でながら、「ふむ、美の規格とは…美しさの、こうだったら美しいという決まり事、かのぅ。」と教えます。

にんげんは、「うん、なんだか難しいんだね。でも蟹の兄が褒めてくれるのは解るよ。ありがとね。」といって蟹の兄の泡を吹き出す口の近くにキスしました。

「ほほほ、母様に似た兄弟からの接吻は誉れよな。にんげん、そなたは本当に良い子よの。」と上機嫌になる蟹の兄。

にんげんは、「せっぷ…なに?」と不思議そうな顔をしましたが、蟹の兄が上機嫌ならま、いっか、と納得してしまいました。

犬はそれを見て、ちょっとふてくされたように尻尾をぽすんと地面の小石に打ち付けましたとさ。

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