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湖に浮かぶもの

 お昼の乳を飲んだ後、にんげんが寝そべった犬にもたれかかってゆったり湖を見ていると、なんだか妙なものが見えました。

にんげんは目元を擦って確認しますが、それは現れたり消えたりします。

そこでにんげんは、「犬!犬!変なのが出たり消えたりする!」と言いました。

犬は、「落ち着け。どこに出たり消えたりするんだ?」と言いました。

にんげんは、「んとね、湖の真ん中の方の…あ!また出た!」と言いながら犬の毛皮を引っ張ります。

どれ、と犬が湖の真ん中の方を見ていると、確かに何か白っぽい物が湖面から出たり引っ込んだりしています。

 ですがそれを見ると犬は興味をなくしたのか顔を元の寝そべった状態に戻しました。

そしてこう言いました、「アレは海月の兄だ。いつもは水の中で漂っているんだが時折ああやって出たりすることがあるんだ。」と。

にんげんにはそれが生き物には見えなかった…どちらかと言えば湖にもきのこが生えたような感覚でした…ので、大層驚きました。

「ええ、あれ兄弟なの?凄い変ってるんだねえ。」とにんげんが言うと、犬は、「兄弟は変わり者ばかりさ。とりあえず普通の動物っぽいのは…まぁそこそこいるな。栗鼠の兄とか目が四つなだけでちょいと普通のリスより大きいだけだし」などといいます。

 それで納得した様子のにんげんは「ふーん、そっかぁ。ねぇ犬。ここから声かけたら海月の兄に届くかな?」と聞きました。

でも犬は、「俺ならともかくお前の声は聞こえないだろうなぁ。にんげんの声はあんまりにも小さいからな。」と言いました。

それににんげんががっくりしていると、「いや、でも」と言ってひとしきり考えた後。

「噂じゃ海月の兄は目も鼻も口も無いらしい。でも夜には水中でピカピカ光るんだとか…もし海月の兄が声は聞こえなくても、世界を感じているなら、分かるかもしれないな。」と言いました。

そしてにんげんに、「まぁ物は試しだ。声、掛けるだけ掛けてみたらどうだ。」と告げるのでした。

 なので、にんげんは「おーい!海月の兄ー!私にんげん!よろしくねー!」と叫びました。

しばらくその声は辺りに響くほど大声でしたが、海月の兄に届いたかどうかは解りません。

 そして、やっぱりダメなのかな、と思い始めたその時、海月の兄が沈むのをやめて、一本の触手を水上に揚げてゆらゆらと揺らしました。

それがにんげんに対するあいさつなのかは、声が無いので確かにとは言えませんでしたが。

にんげんは自分の声が届いたような気がして、大変満足して犬に寄り添うのでした。

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