犬にも、難しい話
犬がふと目を覚ますと、まだお母さんのてのひらの上でした。
お母さんは慈愛に満ちた眼差しで犬とにんげんを見ています。
そこで、犬はずっとまえからお母さんに聞きたかったことを聞くことにしました。
「お母さん、聞きたいことがあるんだ。」そういう犬にお母さんは、「お言いなさい。」と言いました。
犬は、「にんげんは、拾ってから数年、ずっと育ってるよな。」と言いました。
お母さんは「そうね。」と静かに答えました。
犬は若干声を震わせながら言いました、「じゃあ、にんげんは俺が食べてる動物みたいに死ぬのか。」と。
お母さんは無情にも犬が一番聞きたくない言葉を告げました、「そうよ。だから生きている間に精一杯愛してあげなさい。」と。
犬は自分の腹の上で寝ているにんげんを起こさないように、でもはっきり言いました。
「なんでだ、にんげんはお母さんの乳ももらってる。強くなるんだろう?なんで死んでしまうんだ。嫌だよお母さん。俺、にんげんが死ぬの嫌だ。にんげんが死ななくなるなら俺森の動物食うの止める。だからお母さん、にんげんが死ななくなる方法を教えてくれ。」
必死な犬の懇願も、こればかりはお母さんにもどうにも出来ません。故に返す言葉は。
「無理です。にんげんは人間。私達とは根本から違う存在。命に限りある故に運命という枷を与えられず、自由に在る獣の一種。私達のように寿命無き身にはどうしてもなれません。」
その言葉を聞くと、犬はヒャウンヒャウンとしゃっくりを上げ始めました。
犬がしゃっくりを上げるたびに揺れる腹ににんげんはぼんやりと目を覚ましました。
そして、「泣いてるの?犬。なんで泣いてるの?泣かないで、いいこいいこ、いいこだから泣かないで。」と言いながら犬の腹を撫で回しました。
それでも犬は犬は泣き止みません。クンクンクンクン泣くのです。
にんげんはそんな犬を泣き止むまで撫で続けました。
これまで自分が泣いた時にずっと犬が舐めたり身体をこすり付けたりし続けてくれたのを真似て、ずっと撫で続けました。




