好きなもの
犬は果物を食べるにんげんを見ながら、「お前の好物は果物で決まりだな。」と言いました。
にんげんは、「こうぶつってなあに?」と聞きます。
犬は、「お母さんの乳以外に好きな食べ物の事だ。俺なら肉とかだな。」と言います。
これにはにんげんも頷いて、「果物、好き!」とにっこり笑います。
そんなにんげんの頬を犬はペロリと舐めます。特に意味はありません。舐めたくなったのです。
そして、ひとしきり果物果物と言っていたにんげんですが、ふと首を傾げると、「ねぇ犬、馬鹿の姉さんの草の匂いを楽しむのは好物?」と聞きました。
犬は、「いや、あれは食べないから好物とは言わないんじゃないかな。」と答えました。
にんげんは、「そっか。じゃあ鱗の兄の石集めも好物じゃないんだね。」と言いました。
「そうなるな。」と犬も言いました。
じゃあ食べない好きなものってなんていうんだろうと二人で考えましたが、好きなものは好きなものだろう、という結論に達したので。
後はお互い毛繕いしあったり、お母さんの乳を貰いに行ったりしました。
そしてにんげんは寝る前に、「犬とは私は好きなもの同士だね。」と言いました。
犬はただ黙って尻尾を振りました。
にんげんは、「犬はうれしいことがあると尻尾をふるんだねぇ」と言ってぐりぐりと犬のお腹の毛の中に埋もれていきました。
犬は、そういう自分だって嬉しいことがあるとすぐ顔に出るじゃないか、と思いましたとさ。




