乳の雨
これはにんげんが人間と出会ってからのお話。
魚の姉に、にんげんに似た形の生き物に棒で叩かれた事を話したら、魚の姉は酷く怒りました。
「女の子を叩くなんて!乱暴者の猪頭の兄でもやらないことだわ!」と。
にんげんは「でもあれは私が飛び込んだんだよ?」と言うと、「飛び込もうとするのを見てとめればいいのよ!」と返します。
これにはさすがにあの生き物が可哀想になった犬は、「いや、でもあれは俺で言うなら飛び掛ろうと跳んだ後に間に入られたような具合だった。あれを止めろと言うのはちょっと…」と庇ってやりました。
そうまでにんげんと犬にいわれるとさすがの魚の姉も引き下がらざるを得ないのかしぶしぶと、「そう?そこまで貴方達がいうならいいけど…」と矛先を収めようとしました。
そこにさらに犬が、「にんげんも強くなったからなぁ。多分もう俺がとびついたくらいじゃ潰れないよ。」というと、魚の姉はきらりと瞳を光らせて、「そう、そんなに強くなったの。」と思わせぶりに言いました。
犬がちょっと警戒しながら、「何考えてるんだ魚の姉。」と聞くと、魚の姉は腕を組みながら言いました。
「そんなに強くなったならもう犬に乳をもらう必要はないでしょう。私達小さい兄弟と一緒に乳の雨をあびましょう、にんげん」と。
これに慌てたのは犬です、「乳の雨なんて!いつもにんげんの心配をしてる魚の姉とは思えないぞ!」と言うのですが、魚の姉は、「犬が飛び掛っても潰れないのでしょう?乳の雨なんて優しいものよ。大丈夫大丈夫。」と取り合いません。
にんげんがあまりに慌てた犬の様子に「どうしたの?」と聞くと、犬は、「乳の雨というのは背が小さい兄弟のためにお母さんが乳房から乳を搾り出して雨のように降らせる乳のやり方だ。」と答えました。
そういわれるとにんげんも、遠くの方でお母さんの影に入って白い塊をバシャリと被る姿に見覚えがあります。
なぜなら魚の姉も乳の雨を受ける兄弟の一人だからです。
犬は納得した様子のにんげんに、「なぁ、乳の雨なんか怖いよな?俺に乳をもらうだろ?」と聞きましたが、にんげんは輝く笑顔で「乳の雨、浴びる!」と言い放ちました。
これを聞いて犬はしょんぼり、耳を伏せて尻尾を垂らしがっくりうな垂れてしまいました。
「どうしたの犬?元気ないの?一緒にお母さんの乳の雨浴びる?」とにんげんが元気付けようとしますが、犬は、「いや、俺くらいの大きさののがいると乳の雨は独り占めにしちゃうからな、一緒は無理なんだ。」と落ち込んだまま答えます。
にんげんは犬が落ち込んだままなのは嫌だったのですが、魚の姉は、「なんでも経験。一回くらい犬も我慢なさい。」といって今日の人間の食事は乳の雨で取ることが決まってしまいました。
そしてお昼、魚の姉がお母さんを呼び出し、にんげんに乳の雨でごはんをあげる事を話すとお母さんは快諾しました。
そして魚の姉はにんげんの隣に這いよって雨が降るのを待ちます。
「あれ?魚の姉さんや犬は月に一回お乳もらえばいいんじゃないの?」というにんげんに、「貴女と一緒に貰いたいのよ。それに、一回でも大丈夫だけど一回以上もらっちゃいけないなんて決まりないし。」と涼しい顔。
そうなのかと納得したにんげんは魚の姉と共に乳が降ってくるのを待ちます。
さぁ、にんげん達の上で身を乗り出したお母さんが両手で乳を搾ります。
するとお母さんの乳首の周りに白い点々が見え始め、それが徐々に大きくなります。
「さぁ、来るわよ。」と魚の姉が言うと、見る間にその白が見上げる視界一杯を埋め尽くします。
そして一滴ビシャンとにんげん達の上に振ると、続けてビシャンビシャンと数滴落ちてきます。
魚の姉は巧い事一回ごとに乳を飲み込めたようですが、にんげんは呆然としている間に口から乳を溢れさせてしまったのか、大きく開いた口の中に乳が残っています。
そして、それを飲み込んで顔をぬぐうと一言、「うんとね、やっぱり犬にもらうや…私に乳の雨はちょっと無理みたい。」と言いました。
魚の姉はこれを残念がりましたが、耳聡く聞きつけていた犬は嬉しそうに尻尾を振ったのでした。




