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百頭の犬

 犬とにんげんがいつものように森を周っていると、がやがやと大勢が話している様な声が聞こえてきました。

にんげんは「すぐに見に行こう!」といいましたが、犬はあまり乗り気では無い様子です。

それをにんげんはちょっとふしぎに思いましたが、自分で歩いてでも見に行くと言うと犬は仕方ないな、という感じににんげんを乗せて声の元へと歩いていきました。

 そして着いた先で待ち受けていたのは犬の五倍ほどの大きさで、体のあちこちから犬の頭を小さくしたような顔が生えている犬よりも巨大な犬の怪物でした。

 がやがやと声がしていたのは全てこの怪物の頭がお互いに何事か話し合っていた声だったのです。

にんげんが「すごーい!頭一杯!どれが本物!?」というと、全ての頭が耳聡く聞きつけて。

「俺が本物だ」、「いや俺だ」、「いやいや俺こそ本物だ」、「ふふお前達など我々頭の中では一番の小物」などといい始めて収集がつかなくなり始めます。

なにせにんげんと犬を放っておいてどの頭が本物か喧々諤々やりあうのですから。

 にんげんはそれを見て、なんで犬がここに来るのを嫌がったのか理解しました。

これは見てたらきりが無い。

だからにんげんはそっと犬の耳の中に頭を突っ込んでひそひそ声で、「帰ろ。」と言いました。

犬は何も言わずにその言葉に従いました。

風の噂、というかお母さんのいう事には、結局あの百の頭を持つ犬の兄弟は乳を貰いにきた時までどれが本物かやりあっていて、お母さんの「全て本物です。」という太鼓判でようやく大人しくなったという事です。

 でも、お母さんは笑って言いました。本物の頭の問題が片付いてもあの子は一日中それぞれの頭で今日何をするか、いや今日は話し合いで時間がなくなるから明日やる事を、と延々続けて、結局何も出来ない日々に戻ったでしょうと。

そんなちょっと可哀想な百頭の犬の兄のお話でした。

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