88話 卒業だね
つつがなく卒業式が終わった市立深原中学校・高等学校。
校庭の一角では葵 月夜が高校を卒業する元部員の先輩たちを前に別れを告げていた。
「部員になってくれて本当にありがとう! お礼に卒業する先輩方にこれをプレゼントするよ!」
持参した紙袋から家で作ったクッキーの小袋を茜先輩をはじめ、ギャル先輩の4人に手渡す。
「ありがとぉ~ツッキ~! 大好きーー!」
皆が葵に抱きつき感謝する。
「ハッハッハ。わたしもだよ先輩!」
抱きつく先輩たちを撫で回す葵。ひーんと泣く先輩もいた。
名残惜しそうに思い出話に華を咲かせた後、葵は笑顔で先輩たちと別れて行った。
そんな葵の背中を見ながら、ギャル先輩の1人が茜先輩に声をかける。
「告らなくていーの?」
「ゲ!? な、なんで!?」
ギギギと驚いた茜先輩が顔を向ける。すると他の4人は笑い始める。
「アハハハ! モロバレじゃ~ん! ずっと、わかってたし!」
「うっそ! バレバレ!?」
最初は引きつっていた茜先輩だったが、フッと余裕の笑みを含ませると手を腰に当てる。
「それは前の話だよ~。今は空ちんだったけどフラれたよ~」
言いながら悲しくなってきた茜先輩は目に涙をためる。
その様子にギャルたちは茜先輩を中心に抱き合って慰め始めた。
やっぱ仲間ってサイコーじゃん! 茜先輩は仲間に感謝した。
もう悔いはないと学校に背を向けた茜先輩とギャル先輩たち。
すると後ろから声をかけられた。
「せんぱ~い! 待って~!」
まるで葵と入れ替わるように夏野 空が小走りで駆けて来た。
まさかの展開に茜先輩は顔が崩れる。ひょっとしてワンチャンあり!?
両手を広げた茜先輩が呼び込む。
「いいよー! 胸に飛び込みなよー!」
目の前で急に止まった夏野が叫ぶ。
「付き合いませんから!」
「も~、照れ隠し?」
「違いますから!」
さんざん拒否されてガッカリの茜先輩。ワンチャンはなかったようだ。
しょぼんとしている茜先輩の肩を仲間を慰めるように叩いた。
そんな彼女ら先輩に夏野は頭を下げる。
「いままでありがとうございました。部活は楽しかったです。これからも元気にいてくださいね」
「やっぱ空ちん天使!」
ギャル先輩たちが夏野に抱きつく!
嫌がる夏野を先輩たちがもみくちゃにしていく。
「ちょ、先輩たちやめて!」
笑う先輩たちは気が済むと夏野を解放した。
髪の毛はボサボサになり、服も乱れた状態で先輩たちの輪から出された夏野は涙目で吠えた。
「なにやってんですかー! 怒りますよ!?」
「ごめーん! みんなでなで回したらぐちゃぐちゃになっちゃったね」
1人のギャル先輩が眉を下げて謝る。つられて他の先輩たちも謝ってきた。
「代わりにやっていいよ?」
「しませんよもー!」
プリプリした夏野はさようならと告げてギャル先輩たちと別れた。
「気が済んだー茜は?」
「ありがと。でも、やりすぎだよー」
去り行く夏野の背中を見ながら先輩たちは話し出す。
結局最後まで騒いで終わったような気がする。
でも、葵 月夜たちと出会ってからは充実した学校生活だった。
ちょっとセンチになった茜先輩たちは学校帰りに喫茶店に寄り、思い出話に花を咲かせていた。
その頃、学校の校門横では倉井 最中が中学の卒業式が終わった葵 海を待っていた。
春休みが終われば同じ校舎で会えると思うと胸が弾む。
しばらく待っていると海がやってきた。
「遅くなってゴメンね。みんなと話してて、なかなか離れられなったから」
「ううん、大丈夫だよ。海さんは友達が多いし」
取り繕う海にいつものことと倉井は微笑み、2人は歩き始める。
倉井はふと思い出したように海に顔を向けた。
「卒業おめでとう、海さん!」
「ありがと! これからもよろしくね!」
「はい」
笑顔の倉井に頬を染めた海がなによーと照れ隠しで文句を言う。
クスリと笑った倉井は楽しそうに海と帰り道を歩いていった。




