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46話 都会だ!

 放課後の部室。

 地底探検部の部長、葵 月夜(あおいつきよ)は長机に揃っていた皆の前にタブレットを取り出し、そっと置く。

「最近、部活動してなかったから、今日はバーチャルで行こうと思う」

 夏野 空(なつのそら)倉井 最中(くらいもなか)がパチパチと拍手をし、腕を組んだ冬草 雪(ふゆくさゆき)は意味がわからず頭をかたむけた。

 岡山(おかやま)みどり先生は近くに座ってお菓子を広げて、その様子を見ている。


「よし! 誰かリクエストはあるかな?」

「はいっ! 今日は東京の地下街が見たいです!」

 葵の質問に夏野が元気に手を上げて意見を述べ、おーと倉井は感心していた。

 ニコニコしている葵が冬草に振る。

「雪は?」

「どこでもいいよ。大体知ってるし」

 ぶっきらぼうに答えた冬草だが、顔を向けた葵たちが固まっていることに気がついた。何か余計なこと言った? 冬草は不安になった。

「おい!? なに?」

「か、確認したいのだが、雪はどこから転校してきたんだ?」

 かろうじて葵が聞くと冬草はつまんなさそうに言う。

「東京の中野区ってところ。別に普通だぞ」

「聞いたかい? 空君、最中君?」

「はい、確かに!」「うん」

 葵が聞くと夏野と倉井が同時に(うなず)く。

 ビビる冬草の手を笑顔の葵が両手で包む。

「凄いぞ! 雪! これで我々も都会っ子だ! 東京について、いろいろ教えてほしい! 今日は東京講座に変更だ!」

「はぁ~~!?」

「何をそんな(あき)れた顔をしているんだ。まさか雪が大都会に住んでたなんて凄いな!」

「い、いや、そんな大したもんでもないけど……。手を離せよ」

 照れた冬草が手を引いて葵の両手から逃れる。ドキドキするからやめてほしいとは言えなかった。

 前に胸で泣いてから、冬草は葵を少し意識するようになっていた。


「ミドリちゃんもどうだい?」

「え!? 私? いいわよ、知っても行かないし」

 みどり先生が、ちょうどお菓子を口に入れようとしてたところに葵に振られ答える。

「そんなんではダメだよ、ミドリちゃん。岩手先生と東京に行ったときに知ったかぶりができるぞ?」

「そ! そうね。先輩と行くことがあるかも」

 岩手先生の名にがぜん興味が出てきたみどり先生がイスを持って葵たちのそばへと移動してきた。

 そこに冬草が皆に聞いてくる。

「ちょっと待てよ! だいたいお前ら、東京の何を知ってるんだ?」

 葵たちは顔を見合わせる。視線で代表を選んでいるようだ。仕方なしに葵が口を開いた。

「そうだな…たしか、何か祝い事や行事があるとシブヤに人々が集まって暴れることとか、東京ではハチオオジって所に大雪が降るんでしょ?」

「微妙に一部合ってるが、違うからな?」

 完全に否定できない冬草は、地方の情報収集力に頭を抱えた。

 葵たちはテレビやネットから伝え聞く東京の情報は断片だけで、誰も詳しくはなかった。夏野は東京や大阪に行ったことはあるが、それはディ○ニーランドやユニバー○ルスタジオに家族で遊びに訪れただけだった。

 冬草を囲んで葵たちは東京について聞いていく。

 タブレットに地図や写真を表示させて説明する冬草にみどり先生は感心していた。ただの不良じゃなかったのね、と。都会の不良はITも洗練されていると勘違いをしていた。


 夏野と倉井は楽しそうに質問しながら聞いて、タブレットの情報に目を見張った。

 みどり先生は主にデートに使えそうな店を中心に聞き、ギンザ、ギンザと(つぶや)いている。

 葵はしばらくして飽きてきたのか、腕を組んで目を閉じている。夏野たちに説明しながら冬草は、ふざけんな! お前が言い出したんだろ! と目の端で船を漕ぐ葵に心の中でツッコミを入れていた。

 とりあえず自分の知っていることを話し終え、差し出されたお茶をがぶ飲みして喉を潤す冬草。

「ありがとうございます! すごく楽しかったです!」

 満面の笑みをした夏野に褒められると照れた冬草が頬を赤くし、慌てて誤魔化すためにマスクを装着した。

 そんな冬草を前に倉井と夏野はタブレットを操作しながらキャッキャと感想を言い合っている。

 みどり先生はスマホにメモを残すようで、せっせと入力していた。

 その様子に、あれ? あたいが適当に言ったことで、実際に見て失望させたらどうしよう……冬草は、はたと思いつき胃がキリキリと痛くなってきた。せっかく友達になれたのに、見切りをつけられるかもしれない……。

 そこに冬草の肩に手が置かれる。

 顔を向けると微笑んだ葵がいた。いつの間に起きてたんだ? 冬草は驚く。

「なかなか為になったよ雪。しかし、空君に最中君、それにミドリちゃん、東京は常に変化する街だ。雪の情報は引越前だということを肝に銘じてくれ! 今、チェックしたあの店もこの店も来年には無いかもしれないから! ああ、恐ろしや東京!」

 葵の言葉に、なるほどと納得した夏野たちは力強く(うなず)いた。

「つきよ……」

 冬草は自分をフォローしてくれた葵に感謝の目を向けると軽いウインクが返ってきた。

 くそ! なんだコイツ! 寝てて聞いてなかったじゃなかったのか? ドキドキが止まらない……冬草は思いっきり動揺していた。

 そんな冬草を夏野は目を丸くして見ていた。


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