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36話 作戦会議するよ!

 駅前のマクド〇ルド。

 (あかね)先輩が夏野 空(なつの そら)春木 桜(はるき さくら)の前にテーブルを挟んで座っている。

 チューっとストローでマ〇クシェイクを吸い込みながら茜先輩が夏野たちを見る。

「空っちがいるのはわかるけどー、なんであんたがいんの?」

「付き添いです。いいじゃないですか、知ってるし」

 クリームソーダのクリームをスプーンで取りながら春木が答える。

 茜先輩が片眉を上げてニヤリとした。

「まぁ、同じ部員だからいっかー」

「違いますよ。あたし吹奏楽部やってます」

 驚いた茜先輩がストローで春木をさした。

「うそー! あんた文化祭のとき、メイドしてたじゃん?」

「あー、あれは臨時で手伝っただけです」

「まじで。そんじゃー部は大丈夫なの空ちん?」

月夜(つきよ)部長の妹さんが入ってますから大丈夫です。でも、来年はわからないですけど…」

「そーなんだー。(うみ)ちゃんも入ったのかー。そんじゃあ安心だ」

 夏野から聞いた茜先輩は安心したのか再びストローに口をつけた。

 というか、茜先輩って妹さんのとこ知ってたんだ…夏野はちょっと嫉妬した。


 オレンジジュースを飲んで喉を潤した夏野が茜先輩に聞いてくる。

「今日はなんで呼び出したんですか? 学校でもいいじゃないですか」

「そりゃ困るだろ? お互いに。だってツッキーのことじゃん」

「えっ、そうなんですか!? 早く言ってくださいよ!」

 ニシシと笑う茜先輩に夏野はかしこまり、姿勢を正した。

 おっ! ここから本番かー。春木はこれからの展開にワクワクしてきた。

 それまでふんぞり返って座っていた茜先輩が身を乗り出す。

「で、どこまで進んだんだよ?」

「またそれですか。前と変わってないですよー」

 ウンザリした顔で夏野が答える。

「そっかー、よかった。」

「よくないです!!」

 安心して微笑む茜先輩に夏野が怒った。春木はやりとりを見て笑っている。

 今度は負けじと身を乗り出した夏野が真剣な表情で茜先輩に問いかける。

「ところで、どうして茜先輩は部に入るようになったんです? 部活してても他の3人と遊んでましたよね?」

「聞きたいの? マジで?」

 茜先輩が確認すると夏野は(うなず)く。

 ズズーっとシェイクをすすってから茜先輩が話し出した。


 ──あれは、2年に進級して少したった頃の事なんだけどー。

 あたしら4人は元々学校で浮いててさ。何つーの? ちょっと人より服装が派手だったり、髪を染めたりしてたからかも?

 そんなわけで、授業してても頭にまったく入ってこないからつまんなくて、校舎裏でよくサボってたわけ。

 ほら、校舎裏って意外と陽が当たるからさ、ポカポカしてていいわけよ。寝るにはさ。

 んで、いつものように4人で校舎裏でダベってたらさ、なんか見慣れない茶髪の背の高いヤツがうちらの所に来るじゃん?

 したら、そいつが1年のツッキーだったわけ。で、あたしらの所へくるなり、

『新しい部を作りたいから先輩たちの力をかしてくださーい』とか言ってくるわけ。

 わかる? お前、誰だって話じゃん? それまで一切、会ったこともないんだからさ。

 んで、仲間の1人でガタイのいいフランってやつがいてさ。もちろんあだ名だよ? 顔が四角いから、あたしらフランケンとか言ってたけど短くしたらフランになったわけ。

 フランはさ、ああ見えても細かいことが得意でさ、よく刺繍してたんよ。あたしの服にもさ、キテ〇ちゃんをつけてもらったわけ。

 なかなかカワイイできだったな、あれは。

 で、そのフランはさ、喧嘩が強いんでたまにあたしらの盾にしてたんだけど、このときも面倒な奴が来たからテキトーにあしらうつもりだったんだけどさ、そうもいかなかったんだよ。

 ツッキーのやつさ、フランを1発でのしちゃてさ、あたしらビビったわけ。わかる? 涼しい顔してフランをぶん殴ったんだよ?

 ボクシング? 空手? わかんないけどメチャ強かったね。っていっても、あれっきりツッキーが殴ってるところは見た事ないけど。

 そんでさ、ツッキーがさっき言ってたことを繰り返すんだよ。ロボットかって、そのとき思ったね。

 あまりの迫力に怖くなったあたしらはさ、わかったって言って、部員になったわけよ。

 次の日、ツッキーが嬉しそうな顔して部員届の紙を持って来て名前書かされたなー。

 フランはビビりながらだったけど、紙に書くときブルブル手が震えてて笑えたね。まーあたしらも同じだったけど。

 そんな感じで部に入ったわけ。わかった?


 聞いていた春木は、話が無駄に長いし余計な情報が多いと思った。“フラン”って! 内心、笑っていたが顔に出さないように頑張って耐えていた。

 だが、身を乗り出していた夏野はそのままで動いていない。

「肝心なところが抜けてますけど先輩?」

「やだよー。だったら自分から先に言えよー」

 互いに目を合わせて眼力で勝負しているようだ。

 春木は、これって何? 好きになった切っ掛けが知りたいわけ? 疑問に思いながらもソーダを飲む。

 しばらくすると頬を染めた夏野が目を逸らして店の窓に顔を向けた。

 勝った茜先輩は満足そうにストローに口をつけた。

 そんなんでいいの? あんたら仲良しね…春木は意外と似た者同士の2人を見て思った。

 すると茜先輩が春木に疑いの目を向けた。

「なんだかんだいって、あんたも狙ってんじゃないのー?」

「ええっ!? やめてくださいよ、あんなのゴメンです!」

「そう? ならいいけど…」

 カップを持って茜先輩がつまらなそうにしている。仲間を増やしたいわけ? 春木は混乱した。


 いまだ恥ずかしがっている夏野を見て茜先輩は思い出していた。

 そういえば入部してから、なにかとツッキーがあたしらの教室に来てたなー。頼んでもいないのに勉強とかみてくれちゃってさ、おかげで授業をサボることが無くなったっけ。

 部活に行くのも迎えに来てくれたなー。よく考えたら、ツッキーって面倒見がいいよね。

 ふと、夏野がジッと見ていることに茜先輩は気がついた。

「茜先輩。絶対に思い出してましたよね? 月夜部長のことですよね?」

 ググっと迫って来る勘の良い夏野に、ヤバい! ニヤケてたのがバレたと茜先輩は慌てた。

「ち、違うよ! なに勘違いしてるんだよー」

 手を振って否定しているが目を細めた夏野が疑いの目で見ている。前からこんなやつだっけ? 後輩の威圧に冷や汗を流す茜先輩。


 本来の目的を忘れ、3人がグダグダしていると声をかけられた。

「空君に桜君? それに茜先輩まで、楽しそうだね!」

 3人がハッとして声の方を向くとジャージを着た葵 月夜(あおい つきよ)とおしゃれ着の倉井 最中(くらい もなか)がマ〇クの大きな紙袋を持って立っていた。

 急に立ち上がった夏野が2人を指さす。

「な、なななななんで月夜部長が…。それに最中ちゃんも!?」

「いや、ちょっとしたお使いでね。君たち3人が一緒とは…仲が良くて羨ましいな。それじゃあ、明日! さ、最中君行こうか、(うみ)が待っているぞ!」

「はい! 空ちゃん、桜ちゃん、先輩、また明日!」

 ニコニコと手を振って倉井と葵が3人と別れて店を出て行った。

 ポカンと遠ざかる後姿を見送る3人。

 ふと気がついた夏野が2人に言う。

「ひょっとして、勘違いされました? わたしたち」

「そうかもねー」

 歯を見せ苦笑いで茜先輩が答える。

「ところでなんの会合だったの、これ?」

 ソーダを飲みえ終えた春木が茜先輩に聞いてくる。

「あれだよ、あれ。ツッキー攻略の作戦会議だったんだよ」

「全然、攻略してませんけどね」

 頬杖をついた夏野が(つぶや)き、ため息をついて続けた。

「…結局、最中ちゃんが美味しいところを取っていくなぁー」

「ひょっとして、最大のライバルは最中じゃね? 部長には興味なさそうだけど」

 笑って言う春木に夏野と茜先輩はバツが悪そうに顔を合わせた。


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