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35話 ほんとなの?

 『地底探検部』一行は広く入り口の開く岩を掘った洞窟の前に並んで立っていた。

 部長の葵 月夜(あおい つきよ)、部員で副部長の夏野 空(なつの そら)、同じく部員の倉井 最中(くらい もなか)。そして顧問の岡山(おかやま)みどり。

 満足そうな葵が皆を見ると夏野が洞窟を見て一言。

「奥が丸見えですね。これって洞窟?」

「いい質問だ空君。なんと奥行きは5メートルほどだ。正確には横穴かも……」

 自信なさげに葵が答えるとギロリと夏野が目を向けた。

 倉井は穴の近くに立っている看板に近づき読みあげる。

「えっと…旧石器時代の日本でも珍しい横穴式住居跡。太古の人々は横穴や竪穴で厳しい環境の中を暮らしていました」

「……」

 葵と夏野が目を丸くして倉井を見た。

 みどり先生は笑う。

「あはははは、確かにそうよね。あんまりにも近くに洞窟があるんでビックリしちゃった。でも、横穴なら納得ね。せっかく来たから見ましょうよ」

 葵たちに目配せすると穴へと歩き出す。

 つられて葵たちも後を追った。


 横穴の奥には丸く掘られた部分や火を焚いていただろう黒ずんだ部分があった。

「思ったよりもヒンヤリね」

 みどり先生が感想を言う。

「うむ。しかし、何も無くて寂しいな…」

 キョロキョロと周りを見ながら葵が同意した。

「そこは想像したらどうですか? 昔、どんな生活してたとか」

 夏野が葵の隣に来て言うと倉井は何もない天井を見て想像を膨らませた──



「あ! お帰り~! 月夜部長!」

 何かの動物の毛皮の服を着た空ちゃんが横穴に戻った月夜部長を出迎えた。月夜部長もこれまた毛皮を着ている。

「ただいまー」

 皮で作った袋を持った月夜部長が入って来る。

 空ちゃんが月夜部長から袋を受け取り中を(のぞ)いてガックリする。

「また木の実なの…もっとがんばってよー」

「ううっ、すまん。次はがんばるよ…」

「昨日も言ってましたよね? その前も。いつになったら“がんばる”んですか?」

「そんなこと言わないでおくれよーー。頼むよ~空君~~」

 ヨヨヨと泣いた月夜部長が空ちゃんの腰に抱きつく。(あき)れた空ちゃんは大きなため息をついている。

 そこへ海さんとみどり先生が大きな袋を2人がかりでかかえてやって来た。

「戻ったよー。最中はお腹空いた?」

「はい!」

 嬉しく出迎えたわたしが答えるとニコリと笑った海さんが袋を下ろした。

 みどり先生が袋を開けると、そこにはイノシシがひょっこり出てきた。

 空さんの腰に抱きついている月夜部長を見て海さんはニヤリとする。

「あれれ~。お姉ちゃんはまた木の実なの?」

「ぐぬぬぬ…」

 悔しがる月夜部長に海さんが近づく。

「ほら! 早く料理して。最中もお腹空かせてるよ? お姉ちゃんが一番料理上手だから…」

「海っ!!!」

 空ちゃんの腰を離れた月夜部長が海さんを抱きしめる。

「かわいいなぁ~海はーー」

「ち、ちょっと離れてよ! ウザい!」

 周りを見ながら照れた海さんが月夜部長をどかすと空ちゃんが来た。

「もう! 月夜部長を甘やかさないで!」

「厳しくしてるよ!」

 海さんが反論する。

 2人は月夜部長を放っておいて言い合いを始めた。

 話題の主である月夜部長は関係ないよとばかりにイノシシを軽く持ち上げると、土を掘ったかまどへと向かう。

 みどり先生はたき火の前に腰かけ果汁の飲み物を飲んでいて、楽しそうに笑いながらわたしたちを見ていた──



「最中ちゃん、ボーっとしてる?」

「あっ! いえいえ、大丈夫です!」

 空想にふけていた倉井に夏野が声をかける。

 ハッとした倉井はニコニコしながら背を向けて誤魔化す。今、想像したことを言ったら夏野が腹を立てそうだ。

 短い探検も終わり、横穴を出ると太陽の下で手を腰に当てた葵が聞いてきた。

「さて、どうしよう? 思いっきり時間があまってるな…」

 プッと吹き出したみどり先生が提案する。

「そうね。今日は休日だし、駅にでも行って何か食べる?」

「いい案だミドリちゃん! そうしよう!」

 笑顔の葵が賛同する。

 夏野と倉井は目を合わせると互いに笑って(うなず)いた。


 やがて駅についた一行。

 そこで葵が何か思いついたのか皆を見渡して言ってきた。

「ちょうど、駅の反対側にある喫茶店でバイトをしているんだ。よかったらそこにしないか? 少しサービスできるかも」

「あら、いいわね!」

 ニコリとみどり先生が両手を合わせて賛成する。

 いつかは行こうと思ってたけど、ちょうどいい機会に夏野は笑顔になる。やった! 職場訪問ね!

 倉井は前にあったサービスを思い出して、お腹の調子はどうかなと手でさすった。


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