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32話 そもそも知ってた?

 文化祭も終わり、学校が落ち着きを取り戻した頃。

 夏野 空(なつの そら)が『地底探検部』部室に入ると、部長の葵 月夜(あおい つきよ)倉井 最中(くらい もなか)、顧問の岡山(おかやま)みどりがすでにいてお菓子をつつきながらくつろいでいた。

 トトトと夏野は葵に近づくと質問する。

「月夜部長。ケイビングって知ってます?」

「ん? なんだそれは? ダイビングなら知ってるよ」

「違いますよー。なんでも自然な洞窟なんかを探検するスポーツらしいですよ。うちの部と同じじゃないですか? 詳しくはこれに載ってますけど…」

 そう言って夏野が手に持ったスマホを葵に見せる。

 スマホ画面には検索されたケイビング情報が並んでいた。

 夏野の手ごとスマホを(のぞ)き読む葵。ふむふむと一通り見ると手を戻す。


 そして夏野の両肩に手を乗せると首を振った葵が話す。

「これは違うよ空君。この部はそんな危険で怖いところは行かないんだ。考えてもみたまえ、岩場にはゲジゲジが、天井を見上げればコウモリがいるんだぞ? それは恐ろしい場所に違いない!」

「そんなの月夜部長だけですよ。だいたい何で“探検部”なんですか?」

「それは……カッコイイからだ!」

「……」

 無駄に力強い葵の言葉に(あき)れた夏野が目を細めた。

 急に夏野が怖くなった葵は、ピューっとみどり先生の後ろへ隠れて、顔だけを出す。

「そ、空君! なんでそんな怖い顔をしているんだい?」

「ホントに月夜部長はー!」

「まあ、まあ、夏野さんもその辺で…」

 プンプンしている夏野をみどり先生がたしなめる。情けない葵の姿を見て倉井は吹き出していた。


 場が落ち着いたところで、ごますり顔の葵がお茶を入れて夏野に出す。おべっかを使っているようだ。

 無言で受け取る夏野。早く機嫌が直って欲しいと葵は冷や汗を流していた。

 どうも文化祭が終わってから空君の態度が少しおかしいと葵は感じていたが黙っていた。

 なるべく気を使っているのを顔に出さないようにして葵がテーブルに地図を出した。

「さて、部活動をしよう! そこでこの地図を見て欲しい。丸印があるだろ?」

「これは?」

 赤丸を見つけた倉井が聞く。

「フッフッフ、よくぞ見つけた! そここそが次の探検場所だ!」

「ここから近いですけど何かあるんですか?」

 学校の位置から指でなぞって不思議そうに夏野が聞いてきた。

「何だと思う? フフフフ、それは! この間、わたしが見つけた洞窟だ!」

 ドーンと拳を握って葵が宣言する。

「さっき洞窟怖いって言ってたじゃないですか月夜部長!」

 夏野が鋭い突っ込みを入れる。

 すると葵はヒヒヒと不敵な笑いをしながら、みどり先生の肩を叩く。えっ!? 何!? みどり先生は焦る。

「甘いな空君。わたしたちにはミドリちゃんがいるじゃないか!」

「意味がわかりません」

「この間、それは恐ろしい獣と遭遇したときに、ミドリちゃんはわたしをかばって不動の姿勢で相手と対峙(たいじ)していたのだ! その姿に感動したわたしは、なけなしの勇気を振り絞り前へ出られた。全てはミドリちゃんの物怖じしない態度のお陰だ。だから洞窟で何かと遭遇したらミドリちゃんが助けてくれるから安心だ!」

 握りこぶしを頭上に上げ、葵は力強く宣言した。

 あの時、そんな風にわたしを見ていたのかと、みどり先生は驚いていた。実態はむしろ逆で、あまりの恐怖に体が動かなかっただけなのだから。

「い、いえ、それはちょっと大げさ…」

 否定しようとするみどり先生の言葉をさえぎって夏野が食ってかかる。

「その話しは聞いてますし、獣ってタヌキですよね!? だいたい何で学校に泊まるのにわたしを呼んでくれなかったんですか!? ずるくない?」

「いや、だって空君は最中君と一緒に帰ってたし…」

「電話くれれば、すぐに戻りました!」

「それに両親が心配するだろ?」

「説得するから大丈夫です!」

 だんだん話の筋が変わってきて、宿泊について葵が夏野に責められている。自分のことを訂正したかったが、2人のやりとりを見ているうちに面倒くさくなったみどり先生は諦めた。

 倉井はそんな3人をスマホで写真を撮ると葵 月夜の妹、(うみ)へメールを送っていた。


 とりあえず次に訪れる場所は、葵おすすめの洞窟に決まったようだ。

 訪れる日程とルートを確認すると葵は手帳に書き込んだ。

「よし! これで決まりだな! 楽しみだな~」

 ふんふんと嬉しそうにしている葵を(うらや)ましそうに見ている夏野。

 なんでこの人はわたしの気持ちとか(あかね)先輩の気持ちとかに全然気がつかないの? 1人だけ楽しそうにしてて、なんだか腹立たしい……。

 そんな夏野の雰囲気を察した葵は思った。アノ日だからイラついてるのだろうか? と、とにかく、当たり(さわ)りのないようにしないと……。

 みどり先生は無言のやり取りをしている2人を見て、互いに勘違いしているよねたぶん? と思っていた。

 倉井だけはせっせと海とメールをやりとりして、ニヤニヤと口元を緩めていた。

 ちなみに内容はというと、最近流行の激カワうさぎ画像を2人で交換しあっていた。


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