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31話 文化祭だよ!

 文化祭当日。

 『地底探検部』が借りた教室では準備が進められていた。

 3年生は受験や就職のため文化祭には参加してはいなかったので、空いた教室を割り振って部や他の組が使用していた。もちろん、自主的に参加している3年生もいた。

 他にも模擬店があったが、くじ引きで負けた所は校庭の集会用テントへの出店となっていた。

 メイド服に着替えた部長の葵 月夜(あおい つきよ)をはじめ、夏野 空(なつの そら)倉井 最中(くらい もなか)と顧問の岡山おかやまみどりが慌ただしく動いている。


 そこに教室の扉が開いて、助っ人の2人がやって来た!

「海さん! 桜ちゃん!」

 ぱあっと顔を輝かせた倉井がパタパタと葵 海(あおい うみ)春木 桜(はるき さくら)の元へと駆け寄った。

 倉井は迷わず海の手を握り中へと導く。あれ!? あたしは…? 春木は扱いの差に戸惑いながらもついていった。

 そこには葵と夏野がクッキーを分けたり、マフィンを並べている姿があった。

「やあ! 来てくれたね! ありがとう海。それに桜君!」

 海と春木の姿を認めた葵月夜が笑顔で迎える。夏野も手を振って喜びを表していた。

「べ、別に助けに来たわけじゃないから! お姉ちゃんと最中がヘマしないようにあたしが手伝うだけ!」

「あたしは部のレギュラーとれなかったから暇で来たよー」

 海と春木がそれぞれ答える。すでにイスに座って紅茶を飲んでいたみどり先生は、聞いて笑っていた。

 葵は妹に近づくと肩を叩いて、「あとはお願い!」と言うとピューっと厨房へと移動していった。

 あっけにとられながらも姉の背中を見ていた海は気を取り直して皆に向き直った。

「まず、空と桜は接客担当。最中は食器下げとテーブルふき。手が空いている場合は接客して。あたしは最中を手伝いながら接客していくから。あと、岡山先生は会計ね。いい?」

 後から来たのに勝手に役割を決める海に夏野と春木はポカンとして、倉井は両手に拳を作って(うなず)いていた。

 みどり先生は、わたしだけ名字なの? と、少し疎外感を感じていた。

「えっと、わかった! エヘヘ」

 夏野は笑顔で了解している。あっ、これはゴマすってるな。春木は葵月夜の妹に好印象を狙っている夏野をジト目で見ていた。


 こうして2人が加り6人となった『地底喫茶』はオープンした。

 すると、待ちわびた在学生たちがゾロゾロと入ってくる。

 こんなに人が来るなんて予想していなかったメイド服の部員たちは目を丸くした。

 前日の家庭科室で、下級生や同級生を手伝ったことが原因で口コミが広がり、お菓子が美味しいと評判になっていたのだ。加えてメイド服姿の部員が可愛いとの噂が立ち、男子生徒も押し寄せている。

 来場者が少ない予想で用意した、4卓しかない机を合わせて作ったテーブルを分割して、2人用に変更してなんとか倍の8卓へと変更して対応した。

 目まぐるしい忙しさの中、海の指示は的確で、慣れない最中たちを助けながらテーブルを回っている。

 厨房では月夜がせっせとパンケーキなどを作って、急なオーダーにも対応していた。


 午後になると客足も落ち着いてきて、夏野たちも休憩できるようになって一息つく。

 思った以上に好評でプリンとマフィンは完売していた。

 そんな中でも海は、明日が本番よ! と皆に声をかけていた。こういうシチュエーションに燃えるタイプのようだ。

 夏野はふと一人の金髪の上級生がふらりと入ってくるのに気がついた。

(あかね)先輩!」

「お~! 空ちん! 遊びに来たよ~」

 キシシと笑って茜が立つ。

「こ、こっちへ! 飲み物もってきますから!」

 勝手に茜を教室の隅へ案内すると、紅茶とクッキーを用意して夏野は急いで戻った。

 着席している茜の前に飲み物などを置くと、対面に夏野が座った。

「あれ? メイドやってんじゃないの?」

「いいんです! それより聞きたい事があります!」

 不思議に思った茜が聞くと夏野が身を乗り出し、目を細めて茜を見つめる。

「この間、屋上で月夜部長のほっぺにチューしたのってどういう意味ですか!?」

「あーあれね。気になる?」

「なりますっ! ってか、何なんですか!?」

 憤慨している夏野を余所に紅茶をすすった茜は顔を寄せてきた。

「あいつさ、そーとー(にぶ)いだろ? だけど、空ちんは気になるんだろ?」

 チラと厨房で調理しているメイド姿の葵を見てから苦笑いを向けると、真っ赤になった夏野が目を逸らす。

「あたしも同じなんだー。いろいろアプローチしてるけど、あいつ全然気がつかないしー。だから、ライバル宣言ってやつ?」

 片手を銃の形にすると夏野に向けてバンと撃つ振りをする。

 ハッとした夏野は茜を見つめる。やっぱりあのときに月夜部長の頬にチューをしたのは、わたしへの当てつけだったんだ。

 ま、負けてられない……!


 顔つきが変わった夏野の見て茜が笑う。

「ニヒヒヒ。目標が同じだから、たまに情報交換しない? というか、あんたたちどこまで進んだの?」

「茜先輩と変わりませんよ。情報交換は考えときます」

「よろしくねー空ちん!」

 楽しそうにウインクを送る茜に夏野は困惑する。ライバル同士が情報交換って何? 抜け駆け禁止ってこと?

「でも、茜先輩がそうだとは思ってもなかった…」

「そりゃあ、隠してたからさー。やっぱ学校一の才女とギャルって不釣り合いな感じじゃん? でもないかー」

「そんなの以前にダメです! 許しません! わたしが許可しません!」

「プッ! なにそれ!? あはははは!」

 ムッとした夏野の言葉に茜は爆笑した。

 その後、海に呼ばれた夏野は、しぶしぶ茜先輩のテーブルを離れていった。


 残ったクッキーを口に放り込みながら茜は葵たちを観察していた。

 新入りが2人も入ったみたいだなー。しばらく部は大丈夫そうだ。一応、元部長として気がかりだったけど良かったー。

 ツッキーに良いところを見せようと無理を言って部長になったから、ちょっと負い目があったけど安心だ。

 空ちんのことは入部時から知ってた。なんたって、キラキラした目でいつもツッキーを見つめてれば誰だって気がつくし。

 フフフと思い出し笑いをすると残りの紅茶を飲み干して、月夜のいる厨房へと茜は向かった。


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