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28話 出し物を決めよう!

 ──放課後の『地底探検部』部室。

 部長の葵 月夜(あおい つきよ)をはじめ、部員の夏野 空(なつの そら)倉井 最中(くらい もなか)、顧問の岡山(おかやま)みどりが集合していた。

 珍しくホワイトボードを出したみどり先生が手に黒マーカーを持って、長机に並ぶ部員たちに聞く。

「それで、文化祭の催し物は決まったの?」

 今度開かれる中等部と高等学校の合同文化祭に向け、部としての出し物を相談していたのだ。

 腕を組んだ葵が隣にいる夏野を見る。

「うむ。ミドリちゃん、わたしは去年と同じでいいと思うのだが、空君が…」

「はい! はい! 地底喫茶やりたいでーーす!」

 葵の途中で夏野が手を上げて割り込み主張する。

「みんなでメイドのコスプレしましょう! 月夜部長ならきっと似合いますから! ついでにみどり先生も!」

「えーと、地底人ってメイドだっけ?」

 夏野の勢いに押されながらも、眼鏡を持ったみどり先生が聞く。

 首をかたむける倉井。

「わたしたちにはメイドはいませんよ?」

「そんなの知ってるって! イメージなの、イメージ!」

 ふくれた夏野が言い返す。

 ふーっと息を出したみどり先生がホワイトボードに“喫茶店”と書いた。

 すると葵が立ち上がる。

「ちょっと待って! わたしは去年と同じがいいのに!」

 再び倉井が首をかたむける。

「去年って何をしたんですか?」

「うむ。先輩がたの発案で“地下スペース”という名の休憩所を作ったんだよ。教室を薄暗くしてイスを並べただけだったんだが、本当に休憩にはピッタリだった。ミドリちゃんも入り浸ってたし」

 責める夏野と不思議そうな倉井が視線をみどり先生に向けると気恥ずかしそうにする。

「…だって寝るのにちょうどいいんだもん」

 背を向けてブチブチ言い訳をしていた。


 そんなみどり先生を無視して夏野がツカツカとホワイトボードに行くと書いてある喫茶店に花丸をつける。

「そんなのダメです! わたしが許しません! だから地底喫茶に決まりです!」

「いや…だから、空君?」

 葵がやめさせようとするが、夏野の勢いはとまらない。なぜか葵を追い詰め始める。

「服装はメイドでも出し物は地底ゆかりのものにしましょうよ。そうしましょう!」

 夏野の迫力にタジタジとなった葵が壁に背をあずける。

 上目づかいで凄む夏野。

「いいですよね?」

「あ、ハイ…」

 葵はラクしたかったが観念した。


 こうして地底探検部として喫茶店が決まる。葵は下唇を噛んで押しに弱い自分を悔しがった。

 ルンルン気分の夏野がホワイトボードに“メイド服”と記入し、“メニュー”と続けた。

「最中ちゃんはメニューのリクエストあるかな?」

「えっと、特には…」

 夏野に指名された倉井が首を振るのを見て、顎に指をつけたみどり先生が言ってくる。

「あれは? ミミズの…」

「ミドリちゃん!? 待ってくれ! そ、それは貴重なものだから我々が使うのはダメだと思う!」

 危機を察した葵が慌てて声を上げた。

 そんなことないよと倉井が口を開こうとすると、葵が手で塞いだ。

「もごもご」

「最中君、言わなくてもわかる! そうだとも! わざわざ地底から持ってくるのも大変だろうし!」

 すかさず葵は倉井の耳元に口を寄せる。

「頼むよ~~最中く~~ん。どーーーしても苦手なんだよ。わかってくれよ~~」

 情けない小声で(ささや)くと倉井は吹き出した。


 その後、メニューを話し合い、地底湖ソーダ、地底沼紅茶、地層パンケーキ、地中スパゲティなどが決まった。

 ネーミングはともかく、誰が料理をするかとなると皆の目が葵に集中する。

 ガックリとうなだれた葵が長机に両手をつく。

「…わかったよ。わたしが厨房をするよ」

「あ、でも、メイド姿でお願いしまーす!」

 両手を握りキラキラの目で夏野が言ってくる。なんでそんなにノリノリなんだ…空君。葵はドン引きだった。

 自分の主張を諦めた葵をよそに喫茶店の内容が次々と決まっていく。

 最後に難しい顔をした夏野が尋ねる。

「これが重要なんだけど、メイド服はどうしよう? 作る?」

「……」

 全員が押し黙る。

 シン──とした部室内に皆が視線を交わし合う。

 裁縫は得意だが面倒なので絶対にイヤだ…葵は指名されたくないので下を向いた。

 夏野は期待している目で葵を見つめていて、倉井は今晩のおかずを考えていた。

 部員たちを見渡したみどり先生は含み笑いを浮かべる。

 まあ、予想通りね。

「いいわ。私が用意するから。いい?」

「えっ!? みどり先生、ツテとかあるんですか!?」

 驚いた夏野が聞いてきた。

「まあね。というか、去年の衣装があるのよね」

「それって使っていいんですか? 他の教室とか、部とかで必要じゃあ…」

「大丈夫よ。去年廃部になったミシン部で作ってたものだから。私、掛け持ち顧問してたのよ」

 ちょっとノスタルジックに昔を思い出しながら、みどり先生が説明する。

 それを聞いて、世の中変わった部があるもんだと、自分の部を棚上げにして葵は思った。


「よし! 話がまとまったところで後は助っ人だな! こちらは任せて欲しい。1人はアテがある!」

 キリのいいところで葵が自信満々に言ってくる。

「偶然ですね! わたしも1人います!」

 嬉しそうに夏野が続く。

 倉井とみどり先生は、おなじみの2人の顔を思い浮かべていた。

 月夜部長の妹、(うみ)と夏野の友人、春木 桜(はるき さくら)。間違いなくこの2人だ。

 こうして『地底探検部』は、文化祭の出し物が決まった。


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