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24話 鍾乳洞にゴー!

 県境に近い山の中腹。

 駅からバスに揺られ40分。

 『地底探検部』4人は地元では有名な鍾乳洞前に立っていた。

 部長の葵 月夜(あおい つきよ)を筆頭に部員の夏野 空(なつの そら)倉井 最中(くらい もなか)。そして顧問の岡山(おかやま)みどりが切符売り場へと足を進めた。

「最中君は初めてだよね?」

「はい! ワクワクします!」

 葵が聞くと興奮気味な倉井が嬉しそうに返した。

 ふーん、と夏野は聞きながら疑問を挟む。

「最中ちゃんて地底人だから、鍾乳洞とか慣れてるかと思った」

「その、住んでいる所が深すぎて無かったの…」

「へ~」

 オドオドと答える倉井に夏野はなるほどと思った。確かに前に行った住居へは巨大なエレベーターでかなり深く潜ったっけ。

 あの時のことを思い出した夏野は葵の行動も思い出していた。

「そ、空君。なんで威嚇するようにわたしを見ているんだい?」

 夏野の視線にタジタジとなった葵が聞いてくる。

 無言で見返す夏野。まさか、美男子好きで手が早い葵を思い出してムカついていたとは言えない。

 そんな3人の後ろをニコニコとみどり先生がついていく。

 建前上は顧問としての付き添いだったが、休みの暇つぶしにピッタリだったから。

 自由な彼女たちといると学校の生徒というよりも、親戚の子たちと一緒な感じがするので気が楽だ。


 入場料を払うと4人は鍾乳洞へと入っていく。

「さ、寒っ!」

 思った以上の寒さに葵は両手で体を抱いて思わず言葉にする。

「夏は涼しいんですけどねー」

 葵に身を寄せて夏野が笑って言う。

 初めて入る鍾乳洞に倉井はドキドキと周りを観察していく。

 鍾乳洞には裸電球のライトが所々に天井から吊り下げられており、薄明るく辺りを照らしている。壁に打ち付けてある看板には矢印が描かれ、巡る順番を示していた。

 テレビの番組で見た鍾乳洞とは違い、鍾乳石らしき物が無い。ただの大きい洞穴(ほらあな)みたいだ。

 その様子をうかがったみどり先生が倉井の肩を抱いた。

「どうしたの? なにか不安なことでもあった?」

「い、いえ。あの…想像と違って何もないっていうか…」

 プッと吹き出したみどり先生が説明してくれる。

「あー、そうね。この鍾乳洞って名ばかりで凄く短いの。15メートルほど行くと折り返しになるから」

「ええ~~。そうなんですか…」

 ちょっとガッカリした倉井にみどり先生が優しく笑う。

「そう落ち込まないで。みんなで行けばそれなりに面白いから! ほら、葵さんたちの所へ行ってきて!」

 葵たちへと倉井の背中をグイグイと押していく。


「お! 最中君来たね!」

 葵の元に倉井が来ると、嬉しそうに迎えてくれた。

 そして壁にある拳大ほどの隙間の穴に手招きして近寄らせる。

「ここを(のぞ)いてみてごらん」

 倉井は言われたまま暗い穴へと顔を近づける。と、中から冷たい風が飛び出て、勢いよく顔に当たる!

「ぶひゃっ!?」

 ビックリした倉井が変な声を上げて身を引くと葵が受け止める。

「ハハハ。ゴメン、ゴメン。そんなに驚くとは思わなかったよ」

「もーー! なんですかーーー!」

 珍しく怒った倉井がポコポコと葵の胸を叩く。まるでクッションのように揺れる胸に、ポヨンポヨンだ…見ていた夏野は思った。

「これは風穴といって風の通り道なんだ。この鍾乳洞は短いけれど、風穴があちこちにあって面白いんだ」

「早く言ってくださいよーー!」

 プンプンしている最中に葵は笑って頭をなでると、手を穴に差し出す。

「ほら! こうやるとひんやり冷たい風が当たるよ! 最中君もやってみなよ!」

 ひらひらと穴の前で手をかざす葵に、膨れた顔で倉井も好奇心に負けて手を出してきた。

 確かに冷たい風が当たってくる。そして、時折、勢いが増した風も出てくる。

「…不思議。この穴ってどこまで続いているんだろう?」

「これは外まで続いているんだよ。鍾乳洞の中と外との気温差や気圧差により風の流れが生じて岩の亀裂や隙間に風が通るんだ」

 倉井の疑問に葵がドヤ顔で答える。しかしその手にはスマホが(とも)っていた。

 ウィキ○ディア丸読みですね月夜部長…夏野は同じものを見ていたがツッコミを控えた。


 機嫌が直った倉井は葵と夏野と共にキャーキャーと穴に手や顔を当てて楽しむ。

 たまに、みどり先生も交えて鍾乳洞を楽しんだ一行は短いながらも満喫して外に出た。

「やはりあっという間だったな、空君」

「ですね」

 何度も来ている2人は予想通りだったようだ。葵は倉井に目を向けると聞いた。

「最中君はどうだい?」

「部長が意地悪した以外は面白かったです」

 ぷくっと膨れた倉井が背を向ける。

「まだ怒ってるのかい最中く~ん? 許してくれよーー! せめて名前は省略しないでくれよーー!」

 後ろから倉井を抱きしめた葵は情けない声を出しながら機嫌をとろうとする。

 プッと吹き出した倉井はしばらく怒った振りをしていた。

 ひょっとして最中ちゃんって魔性の女なの? 夏野は上手い事やってるように見える倉井に感心していた。

 そんな3人を見て、みどり先生は冷えたペットボトルのお茶を飲みながら、早く暖かい場所に行きたいと思っていた。


 4人は帰りの途中に地元のうどん屋へと入って行った。

 温かいうどんにみんなはホクホクとなる。

 ちなみに、みどり先生の本当の目的はここだったけど、葵たちには秘密にしていた。


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