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22話 回って取ろう!

 放課後の『地底探検部』部室にダダダダダダと夏野 空(なつの そら)が駆け込んできた!

 バン!

 勢いよくドアを開けると、すでに部室にいた部長の葵月夜あおいつきよと部員の倉井 最中(くらい もなか)、顧問の岡山(おかやま)みどりが驚いてハアハアと息を切らしている夏野に注目している。

「ど、どうしたんだい空君?」

 恐る恐る葵が声をかけてくる。

 夏野はカバンからチラシを取り出すと皆の前に(かか)げた!

「見てください! あの噂の回転寿司屋がオープンしまーーーす!!」

 チラシには“ニューオープン!〇スシが国道〇号線に新登場!!”とでかでかと大きな文字で主張していた。

 葵とみどり先生がつばを飲み込む音をさせる。倉井は2人の行動がいまいちわからないので首をかしげた。

 興奮した葵はゆっくり夏野に近づくと震える手でチラシを受け取り、じっくり眺める。

「ほ、本当だ…。凄いぞ空君!」

「はい!」

「なんてお手柄なんだ! これこそ発見だ!」

「はい!!」

 感激した葵が夏野を抱きしめる。

 キャーーーと嬉しい悲鳴を上げながら夏野は葵の胸に顔をうずめた。

 マジ、寿司に感謝! どさくさに紛れて葵の腰に手を回して離れないようにしている。


 そんな2人を不思議な顔で見ていた倉井がみどり先生に聞いてきた。

「あの、なんでそんなに嬉しいの?」

「ふふっ。この辺じゃあ、回転寿司なんてないから。ターミナル駅まで行かないとないのよ。この間行ったからわかるでしょ? 気軽に行ける距離じゃないし。だから滅多に食べられないのよ」

「なるほどー」

 納得した倉井が(うなず)く。そんな倉井も回転寿司には行ったことが無かった。

 たまに父がスーパーの寿司を買ってきてくれたが、もっぱらテレビの情報だけだ。

 あのときの寿司の味を思い出そうとしたが、遠い記憶の彼方にいってしまったようで倉井は眉をしかめた。


 □


 休日──

 国道沿いのバス停に降りた4人は目的の施設を見つめていた。

「あれがそうなんですね! 月夜部長!」

「そのようだね空君。しかし、ユニ〇ロの隣とは…」

 葵は夏野に答えると視線をみどり先生に向けた。

「ところでミドリちゃんは、なんでいるんだい?」

「そりゃ食べたいからでしょ。楽しみだね!」

 ニコッと笑みを向けるみどり先生に葵はもはや部活だなと思った。

 そして葵は、初めての場所にオドオドしている倉井の手を取ると先へと進みだす。

「さ! 最中君も行こう! こういうところは初めてかな?」

「は、はい」

 緊張しながらも答える倉井。

「待ってくださいよ~!」

 後ろから夏野とみどり先生が追いかけてくる。


 オープン日ではないので行列はできていなかったが、そこそこ混んでいる。

 夏野が事前に予約してたおかげで、4人はすんなりと店内のテーブル席へと案内された。

 葵の隣にちゃっかり座った夏野。対面に倉井とみどり先生が座る。

「わーすごい! 面白い!」

 目の前でレーンに乗って運ばれている寿司を見て倉井は目をキラキラさせて感激した。

「好きなものを取りたまえ最中君。だけど、会計は頭割りだからな?」

「はい! 大丈夫ですよ?」

「ふふふ、そうか」

 優しく葵が言うと両手を握ってアピールする倉井。だが、最後の疑問形の答えに不安になる葵。ここに妹を連れてこなかったことを後悔した。

 久しぶりの回転寿司にとまどいながらも、みどり先生がなんとか過去のことを思い出して備え付けのパネルに注文を始めた。

 それを見て葵と夏野も真似をする。

 倉井は回って来る寿司の皿を適当に選んで取ると、ウキウキと口に入れた。

「はぁ~美味しい!」

 幸せそうに頬に手を当てて食べている。


 しばらく楽しんでいたところで夏野が葵に聞いてきた。

「そういえば、月夜部長って何が好きなんですか?」

「ん? わたしが好きなのは貝類だな」

 そう言いながらカレーを注文しはじめる葵。言動不一致か! 夏野は思ったが顔に出さないようにした。

「へ~。みどり先生は?」

「わたしはマグロ。間違いないし」

 びんちょうまぐろを箸で持ち上げウインクするみどり先生。

「最中ちゃんは?」

「わ、わたしは…いくらとか海苔で巻いてあるのが好きです」

「ああ、ぐんかん巻きねー。みんなバラバラだねー」

 楽しそうに夏野が笑う。そこに葵が聞いてくる。

「そんな空君は何が好きなんだい?」

「そりゃーもちろん! つきっ、つ…つぶ貝! 月夜部長と同じですねー! アハハハハーー」

 危なかった! 気が緩んでて思わず“月夜部長”と言いそうになった…。

 焦りながらも夏野は誤魔化す。しかし、本当に好きなのはサンマ。でも、もう言えない……。

 それを見ていたみどり先生がプッと吹き出すと笑い始める。

 夏野は冷ややかな視線をみどり先生に送って抗議していた。


 デザート類が回って来るのを面白そうに眺めながら倉井は食べていった。

 初めての回転寿司は楽しいし、美味しい。

 チラリと葵たちを見て、この人たちとこられて良かったと思った。でも、(うみ)さんも来てくれたらもっと良かったのにな…。

 所用で来られなかった海。倉井は何度も葵家で海と交流している内に親しくなっていた。

 いまではすっかりメル友で、今日の回転寿司屋訪問も後で報告することになっていた。

 スマホのカメラを向けて葵や夏野、みどり先生を撮る。

 気がついた葵が声をかけてきた。

「記念に写真を撮ってるのかい?」

「はい」

「どれどれ。わたしが最中君を撮ってあげるよ! さ、空君は向こう側へ行って!」

 葵が倉井のスマホを借りて、夏野を移動させる。

「よし! せーの! パシャ!」

 思いっきり口で言う葵に、倉井は思わず吹き出す。

「お! いい顔だ! もっと撮るぞ! それ! それ!」

 パシャパシャ撮りまくる葵。なんとなくオッサン臭い。

「ちょっと! 月夜部長も入ってくださいよ! タイマーしてください!」

 慌てた夏野が葵からスマホを取り上げる。

 その後、4人で撮影大会になっていた。

 自分のスマホで画像を確認したみどり先生は、まだ若い…はず。自分の写りを気にしていた。


 ──夜。

 倉井からメールを受け取った葵 海(あおい うみ)は、添付画像を見て分析していた。

 これは…この間、泊まりに来ていた人たちね。先生もいるけどどういうことなの? しかも最中にぴったりくっついてんじゃん!

 あと1人足りないけど、どうしたのかしら? 死んだの?

 湧き出る疑問を次々とメールで倉井に送り始めた。

 次の日、倉井はメールの対応に追われたせいで寝不足になっていた。


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