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21話 次はこれよ!

 ──放課後の『地底探検部』部室。

 部長の葵 月夜(あおい つきよ)をはじめ夏野 空(なつの そら)倉井 最中(くらい もなか)が次の探検先を相談していると。

 バン!

 部室のドアが乱暴に開けられ、ケースを持った春木 桜(はるき さくら)があらわれた。

 仏頂面でドカドカ入ってくると、当然のように折り畳みイスを1脚持って部室の隅へ移動する。

 あっけにとられて見ていた3人だったが、葵が正気に戻ると声を上げた。

「桜君! また来たのか!? 今度はなんだい?」

 イスに座ってケースから楽器を取り出すと葵たちに見せる。

「ファゴットはいくら練習しても難しいから諦めた。それでバイオリンに変更した!」

 ジャーンっと見せびらかす。

 (あき)れた葵が細目で言う。

「あまり言いたくはないが桜君。君は圧倒的に努力が足りない!」

 ビシッと春木に指をさす葵。

 夏野が思い出したように付け加える。

「そう! たしかに桜は飽きっぽい! トランペットも“ロ〇キーのテーマ”を吹けたらすぐやめてたし!」

「違うし! あたしには合わなかったの! これはたぶん大丈夫!」

 どこからくるのか自信満々の春木が反論した。


「そもそも桜君は誰の許可をもらって、ここに来ているんだ?」

 葵が冷静に問い詰める。

「えっ。いや普通にみどり先生にですけど」

 きょとんと答える春木に葵は頭を抱えた。ミドリちゃんってお茶目、なんでもいいのかと。

「そ、そうか…」

 それ以上なにも言えず葵は口をつぐんだ。

 夏野と倉井に注目され、なんとも気まずい葵はヘタな口笛を吹いてイスに座る。

 それを見た春木は楽譜を取り出すとバイオリンを首に当て、練習を始める。


「月夜部長。いいんですか?」

 夏野が葵に問う。

「むー。だってミドリちゃんが許可してるし…」

 なんともやりきれない感じで葵が答える。

 ギッツキーーーーィーーーーーーーーーーーー

 ィーーーーーーーー ィーーーーーーーーーーーーー

 部室の隅から響く騒音。

 キィイィーーーーーーーーーーーーー

 倉井は耳を塞いで葵に涙目で訴えていた。これ以上はやめて欲しいと。

 ィーーーーーーーーーーーーー

 そんな無言の訴えに葵は奮い立った。

「桜君! いい加減にしたまえ!」

 席を立って春木に向かって叫ぶ!

 ピタッとひくのを止めた春木は立ち上がり、トコトコと葵に近づくとスッと目を細めてバイオリンを差し出す。

「じゃあ、やってよ!! できるんでしょ!」

「い、いや…」

 グイグイと突き出されたバイオリンを受け取る葵。

 それを見ていた夏野は、口をつけるタイプの楽器じゃなくて良かったと安堵していた。

 ニヤリとする春木。

「できないんでしょ!? なら文句言わないの!」

「むっ!」

 葵はバイオリンを構えると弦の調子を見る。

「えっ!?」

 意外な行動に驚く春木をよそに葵が腕を振るう。


 ──部室内に優雅なバイオリンの調べが流れ始める。

 繊細な指使いに春木はボーゼンとなった。

 あのポンコツ部長がなんでこんなにバイオリンが上手いの…。

 倉井は初めて生で聞くバイオリンの音に感動していた。さっきの騒音とはえらく違う。

 目を閉じると耳に流れるように曲が入ってくる。

 夏野は両手を握ってキラキラと星になった目で葵を見ていた。素敵すぎる! というか天使!

 やがて曲を弾き終えると葵は静かに両手を降ろした。

「どうかな? 久しぶりだったが意外といけたよ」

 ふふっと春木に微笑む。


 意外な好演に感動した夏野と倉井はパチパチと拍手を葵に贈る。

 立ち尽くした春木は目を丸くしていた。

「ウソ…。すごく上手…」

「これでもお父さまに教えられてコンクールに出たことがあるんだ」

 葵はフフンと自慢げに渡されたバイオリンを春木に返す。

「どうだい? 教えようか?」

「ぐ……。お、お願いします」

 悔しいが教えてもらうには好都合。ここで覚えればレギュラー間違いなしだ。

 こうして春木は葵にバイオリンの手ほどきをしてもらうことになった。


 2人がバイオリンを練習している横で夏野と倉井はお茶を飲んで世間話をしていた。

 そこに顧問の岡山(おかやま)みどりが部室に入って来た。

「あら? 何してるの?」

「ミドリちゃん。今、桜君にバイオリンを教えているんだ」

 フフンと自慢げに葵が答える。

「へー。葵さんがねぇ…」

 感心したように言いながら夏野たちの近くへ腰かけると、みどり先生はくつろぎ始める。

 そして、春木のバイオリンの練習をしばらく見ていたみどり先生が頬杖をついて疑問を口にした。

「ねえ、吹奏楽部ってバイオリンをやるの?」

「!!」

 全員がみどり先生に注目する。

「あっ!? ないわ……」

 気がついた春木は絶望した。


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