2-1 腐臭の公園
第2章の始まりです
公園の脇にある細い遊歩道。
そこは本来、朝に子供たちが通学で使う穏やかな道だった。
しかし今は、腐敗した家庭ごみの山が常に積み上がり、
夏の湿気と混ざって鼻を刺す悪臭を放っている。
袋の中には、食器トレー、ペットボトル、壊れた家具、
生ごみと紙類が一緒くたに押し込まれていた。
分別など一切されていない。
公園近くに住む 佐伯真理 は、毎日この臭気に悩まされていた。
窓を閉めても、腐敗臭は家の中にまで入り込んでくる。
朝、玄関を開けるたびに胃がひっくり返るような感覚がした。
「……また増えてる」
真理は眉をひそめた。
昨夜よりも明らかにゴミの量が増えている。
誰かが夜中に捨てているのは間違いない。
だが、犯人はわからない。
住民同士の関係は悪化し、
「誰が捨てているのか」
「誰が片付けるべきなのか」
そんな言い争いが日常になっていた。
真理は一度、地区の会合で監視カメラの設置を提案した。
しかし――
「子供の遊び場を撮るなんてけしからん!」
「監視社会なんてまっぴらだ!」
地区リーダーが妙に強い口調で反対し、設置は見送られた。
その反応は、あまりにも過剰だった。
ある深夜。
帰宅途中の真理は、ゴミ袋を抱えた不審な影を見つける。
問い詰めようと近づくと、その影は――地区リーダー――大河原克己だった。
「……あなた、何して――」
目が合った瞬間、彼は言い訳もせず走り去った。
ゴミ袋を抱えたまま、まるで逃げるように。
翌日。
真理がその事を周囲に話すと、
大河原は「犯人はお前だ」とぬれぎぬを着せてきた。
「昨日の夜、ゴミ袋持って歩いてたって聞いたぞ」
「自分のゴミは自分で処分しろよ」
「監視カメラつけたいって言ってたのも、自分の罪を隠すためだろ」
真理の家の前にゴミが投げ捨てられるようになった。
玄関に腐敗臭が漂い、虫が集まり、
真理は精神的に追い詰められていった。
「……どうして、私が……」
誰も味方はいない。
真理は孤独だった。
その夜、真理はネットでアズラの存在を知り、依頼を送った。
「奴を懲らしめてほしい。謝罪させて、償わせたい。
私の生活を返してほしい……」
アズラは静かに依頼を受けた。




