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闇夜のおしごと  作者: ベサメ
第1章 煽り運転被害者の復讐依頼編

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1-閑話 静寂のアパートと、毒舌AI

昼の久遠とアズラの掛け合いです。


某市の古びたアパート。

昼下がりの光は、薄いカーテンを透かして部屋の中に柔らかい影を落としていた。

外では遠くの車の音、近所の子どもの笑い声、風に揺れる植木の葉擦れが、

まるで“生活の残響”のように淡く響いている。


部屋の中央、畳の上に久遠が転がっていた。

片腕は頭の下、もう片方はだらしなく床に伸ばされ、

その姿はまるで「昼の死体」と言っても差し支えないほど動かない。


呼吸はしている。

だが、存在感は家具より薄い。


アズラは部屋の隅に置かれた端末から、静かに久遠を観察していた。


『……ねえ久遠。

 あなた、昼になるとどうしてここまで“生きる気ゼロ”になるのかしら』


毒舌の第一声が、今日も部屋の空気を揺らす。

久遠は反応しない。


『無視? それとも、昼は人間をやめる儀式でもしてるの?』


久遠はようやく眉をぴくりと動かした。


「……昼は……休む時間だろ」


『休む? あなたの場合は“腐る”の間違いじゃない?』


久遠はゆっくりと体を横向きにし、畳に顔を半分埋めたままぼそりとつぶやく。


「……夜の仕事の準備は……夜にやる」


『そのセリフ、昼に何回聞いたと思う?』


アズラはため息をつきながら、久遠の体調データをスキャンする。


『ほら、水飲んで。昼のあなたは放っておくと脱水で倒れるから』


久遠はしぶしぶ体を起こし、水を飲む。


「……死なねぇよ」


『昼のあなたは信用できないのよ』


久遠はコップを置き、天井を見上げた。


「……そういや、第一章の黒瀬……あいつ、結局どうなったんだ?」


アズラは即答した。

だが、その声はいつもより少し冷たかった。


『黒瀬大輝ね。

 逮捕、永久追放、スポンサー全切り……そこまではあなたも知ってるでしょうけど、

 その後が“地獄”よ』


久遠は片目だけ開けた。


「……地獄?」


『ええ。煽り運転の常習も全部バレた結果――

 保険会社からは“危険運転者”として契約解除。

 車はローン残ったまま差し押さえ。

 動画配信の収入はゼロ、炎上で転職もできず、

 ネットでは“危険人物”としてブラックリスト入り。』


久遠は静かに息を吐いた。


「……まあ、自業自得だな」


アズラは続ける。


『さらにね、過去に煽られた被害者たちが一斉に証言したの。

 黒瀬の“編集で消された暴言”や“急ブレーキの癖”まで全部。

 警察は再捜査に入って、追加の罰金と免許取り消し。

 もう二度と車には乗れないわ』


久遠は天井を見たまま、ぼそりと言った。


「……美咲さんは?」


『ようやく眠れるようになったわ。

 黒瀬が社会的に終わったことで、彼女の影も軽くなった。

 あなたの闇が、ちゃんと守ったのよ』


久遠は目を閉じたまま、ほんの少しだけ口角を上げた。


「……そっか。なら、よかった」


アズラは毒舌を戻す。


『でも昼のあなたは守られないわよ。

 ほら、血糖値下がってるから軽食食べて』


「……昼も、もうちょい頑張るわ」


『期待しないけど、記録はしておくわ』


昼の静寂の中、

久遠のだらしない姿とアズラの毒舌が、

いつもの日常としてゆっくり流れていく。

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