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闇夜のおしごと  作者: ベサメ
第1章 煽り運転被害者の復讐依頼編

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1-4 闇が終わらせる

その後、黒瀬は警察に連行され、

煽り運転・危険運転・虚偽拡散の罪で取り調べを受けた。


動画配信サービスから永久追放され、

スポンサー契約はすべて解除。

事故の被害者への賠償金は高額となり、黒瀬は生活が崩壊した。


アズラが久遠へ囁く。


『黒瀬はもう煽り運転できないわ。社会的にも、精神的にもね』


久遠は短く答えた。


「……終わったな」


闇は静かに久遠の足元へ戻り、

影へ溶けていった。


アズラが通信を切り替え、

依頼主――美咲へ報告を送る。


『黒瀬大輝は逮捕されたわ。

 あなたへの中傷もすべて虚偽と認定された。

 賠償金の支払い命令も出る。

 あなたの無実は、正式に証明されたわ』


その報告は、深夜の静かな部屋でスマホを握りしめていた美咲のもとへ届いた。


画面を見た瞬間、

美咲の肩が震えた。


最初は信じられなかった。

胸の奥に固まっていた黒い塊――

恐怖、怒り、悔しさ、屈辱、孤独。

それらが一気にほどけていくような感覚がした。


「……本当に……終わったの……?」


声にならない声が漏れた。

涙が頬を伝い、スマホの画面に落ちる。


煽り運転の恐怖。

事故の衝撃。

ネットでの誹謗中傷。

職場への嫌がらせ。

自分が悪者にされ、誰にも信じてもらえなかった日々。


そのすべてが、ようやく終わった。


美咲は胸に手を当て、

震える呼吸を整えながら、ゆっくりと目を閉じた。


「……ありがとう……」


その言葉は、誰に向けたものでもない。

ただ、心の底から溢れたものだった。


しばらくして、美咲は涙を拭き、

スマホをそっとテーブルに置いた。


胸の奥に、ほんのわずかだが“空白”が生まれていた。

恐怖や怒りが占めていた場所に、

静かな空気が流れ込んでくるようだった。


美咲は窓の外を見た。

深夜の街は静かで、

遠くの街灯が淡く光っていた。


「……明日、少しだけ外に出てみようかな……」


その言葉は、誰にも聞こえないほど小さかったが、

確かに“前へ進むための一歩”だった。


アズラは久遠へ静かに告げる。


『美咲さん、泣いているわ。

 安心と、解放の涙よ。

 あなたのおかげで、彼女はようやく眠れる』


久遠は夜道を歩きながら、

小さく息を吐いた。


「……そうか。

 なら、よかった」


闇が久遠の足元で揺れ、

まるで“同意する”ように静かに寄り添った。


闇夜のおしごとは、

またひとつ終わりを迎えた。


しかし――

夜はまだ続く。

闇も、アズラも、久遠も。

次の依頼の気配を、静かに待っていた。

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