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第4話「セーラの声が近くに聞こえる」

2時ジャストに、噴水広場で配信アプリを立ち上げた僕は、透明なアクリルのコックピットに瞬間移動していた。

(ここは、あの噴水の中?)

水の中に静止状態で置かれた水瓶の形状をした細長い潜水艇のような乗り物…

そのコックピットの前面3Dモニターの中に、いつものアバター姿のセーラが微笑んでいる。

《マルコくん、時間通りね…ありがとう》

いつものように名前を呼んでくれたその声は、モニターのスピーカーから聞こえてきているのか、

僕のスマホからなのか、それとも、肉声なのか…とてもとても近くに聞こえる。

《今日のイベントに参加してくれたのは、10人です》

僕は、とっさに左右の状況を確認する。確かに、水瓶型の潜水艇が他にもあるようだ。


このボードゲームのルールはよく知ってる。アプリになっていても、基本ルールは同じだった。

クイズの解答者--パネラーと、正しく解答できる解答者を選ぶ参加者--コンテスタントに分かれて、

パネラーはゴールを目指し、コンテスタントは、手持ちのポイントをベットしながら増やしていく。

そして、ゴールしたパネラーとゴールした時に最も手持ちのポイントが多いコンテスタント1名ずつが勝者となるという単純なルールだ。

ただ、パネラーに選ばれた者の中には嘘つきが含まれている。つまり意図的に正答を避ける者が存在するのだ。


役割カードがシャッフルされ、僕のスマホ画面に、僕の役割カード--嘘をつかないパネラー--が配られた。

パネラー6人、コンテスタント4人での勝負が始まる。

セーラの役割は、コンテスタント…

これは、僕が全問正解する…それが、僕が想像する、このゲームイベントのハッピーエンドだ。

1問めの問題のジャンルは【星座】「ペガスス座のペガススの飼い主の名前は?」


(僕の故郷、ペガスス座の問題だ!)

僕は震える肉球を画面に押し当てた。答えは知っている。英雄ベレロフォン。気性の荒い天馬を黄金の手綱で乗りこなした、勇気ある主人の名前だ。


「……ベレロフォン」


僕が答えると同時に、コックピットのライトがパッと鮮やかな緑色に輝いた。正解。モニターの中のセーラが、嬉しそうにパチパチと手を叩く。

《さすがマルコくん!迷いがなかったわね。私の持ちポイント、全部あなたに賭けて正解だったわ》


彼女が僕に全額をベットした? 驚きで耳がぴんと立った。コンテスタントである彼女が勝つためには、僕がゴールし続けなければならない。共犯者になったような、不思議な高揚感が胸を支配する。


ふと、隣の水瓶型潜水艇に目をやると、そこには誰かのシルエットがうっすらと見えた。……あれは、超特急で隣の部屋だったセディさんだろうか?

《次は第2問。水瓶座の『自由』についての問題よ。……マルコくん、あなたなら分かるわよね?》


セーラの声が、今度は耳元で囁かれたように聞こえた。スピーカー越しじゃない、確かにすぐそばに誰かがいる気配。水の中に沈む静かなコックピットの中で、僕の心臓の音だけが激しくリズムを刻んでいた。

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