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第2話: 電子回路の森を抜けて(出発)

僕は、まだ彼女に伝えていない。

僕が水瓶座行きの超特急に乗り込んでいることを…

そして、今日も、寝台車の一室でスマホ越しに、いつもと同じように会話を続けている。

そうそう、断っておくけど、これはストーカー行為とはまったく違う。

彼女は定期的にオフ会も開催してると言ってるし、リスナーの中では、しょっちゅう彼女が開催するオフ会に参加している人もいる。

金髪ロングの毛並みの相棒がいるわけではない、僕の一人旅だけど、目的ははっきりしている。

《マルコくんも参加できるイベントを考えてるんだけど…》

その日の配信で、彼女は、突然、そう切り出してきた。

《いつも、水瓶座に近い場所のリスナーさんとしかオフ会をしてないんだけど、オフ会でやってるボードゲームを、オンライン対戦できるようにアプリを作ってもらえたの》

「いつもやってるって…【銀河まるごとクイズダービー】のアプリ?」

《そうそう、それそれ》

「僕、クイズ苦手だからどうかな?」

《ウィナーには、けっこうなご褒美があるのよ。最下位の人には罰ゲームもあるけどね》

「ご褒美…って?」

《二人っきりのヴァーチャルデートだよ!是非、参加してほしいなぁ》


「……ヴァーチャル、か」

僕は、寝台車の窓の外を見やった。超特急はいま、ちょうど「電子回路の森」と呼ばれる星雲を全速力で駆け抜けているところだ。

窓の外には、巨大な基板のような幾何学模様の地平線が広がり、青白く光るデータケーブルの蔦が、複雑に絡み合いながら無数の信号シグナルを明滅させている。この森を抜ければ、水瓶座の領域まではもう一息だ。


本当は、ヴァーチャルじゃなくてリアルの君に会いたい。でも、このイベントは、僕にとって神様がくれた予行演習なのかもしれない。

「参加するよ。……絶対に、勝ってみせるから」


僕は、震える肉球で画面の「エントリー」ボタンを力強くタップした。

その瞬間、電子回路の森から漏れ出た強い電磁波のせいか、スマホの画面に一瞬だけノイズが走った。

《嬉しい!期待してるわね、マルコくん》


セーラの声が、いつもより少しだけ近くに聞こえた気がした。

列車が森を抜け、視界がパッと開ける。そこには、彼女が住む水瓶座の淡いブルーの光が、すぐそこまで迫っていた。

クイズの予習は全然できていないけれど、胸の高鳴りだけは銀河の誰にも負ける気がしなかった。

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