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第1話: 深夜の配信と、猫の決意

僕は、片思いをしている。

その人が、僕の名前をスマホの向こうから呼んでくれるだけで、ドキドキわくわくしてしまうのだ。

その人と会えるのは、いつも決まって、深夜の2時。

ちょっと夜更かしして、その人と1時間くらい楽しい会話を楽しむのが日課なのだ。

《マルコくん!今日も来てくれて、ありがとう》

「ただいま♪」

《片思いのお相手さんとのデートはどんな感じだった?》

「進展なしですよ~」

《それは残念ね》

彼女の配信者としての名前はセーラ。2か月くらい前に、いつもお世話になってる配信アプリで検索をしたら、出会えたのだ。

この2か月の間彼女と交わした会話で、彼女が水瓶座から配信をしていることを教えてもらった。

ちょっと遠いけど僕が住むペガサス座からは、銀河鉄道に乗れば3年くらいで行ける距離だ。

彼女が言ってることがホントだったらだけどね。

僕の夜遊びに、いつも優しくつきあってくれる彼女だけど、ライバルもたくさんいる。

同じ時間に遊びに来ているリスナーは、常時12人前後。多い時は20人くらいのリスナーと

一緒に会話を楽しんでいる。

もちろん、リスナー同士仲良くなった人もいるけど、やっぱり、彼ら彼女らは、セーラの信奉者だから恋のライバルなのだ。

まぁ、配信者にガチ恋するのはネチケット(死語)に反するんだけど、憧れるだけなら全然問題ないよね。

そして、今日も彼女は、僕の名前をスマホ画面の向こう側から何度も呼んでくれる。それが、とにかく嬉しい。


配信が終わると、部屋には急に濃い静寂が戻ってくる。画面が暗くなり、僕の鼻先を青白く照らしていた光も消えた。

「……銀河鉄道で、3年か」


僕は窓の外に広がる、宝石をぶちまけたような星の海を眺めた。猫の寿命を考えれば、3年という月日は決して短くない。それでも、水瓶座の彼女が放つ、既存のルールに囚われない自由で独創的な言葉を、デジタルな音に変換される前の「生の声」で聞いてみたい。


ふと、壁に掛かった古い天体地図に目をやる。そこには、光のレールが幾重にも重なって、遠く水瓶座の「宝瓶ほうびょう」へと続いていた。


「よし、決めたぞ」


僕はクローゼットの奥から、埃を被った小さなトランクを取り出した。中に入れるのは、一番のお気に入りである銀の鈴がついた首輪と、彼女への想いを綴った(まだ送れていない)レターセット。


画面の中の輝く星じゃなく、等身大のセーラに会うために。

明日、僕はペガサス座の停留所から、青白い煙を上げる銀河鉄道の始発列車に飛び乗る。たとえそれが、長い旅路の始まりだとしても。


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