第22話 運が良ければ(?)実力以上の力が出せる
正直に言おう。俺は、ミナの実力を舐めていた。
正確には、ミナを信じてはいたが、ここまでやるとは思っていなかった。
ライフライオン(正式名称、生命を刈り取る者)の攻撃を、俺は運に任せて避けている。
それに対し、ミナはきちんと攻撃を見切って回避し、その上、槍による攻撃まで行なっている。
後方からは、ルリとリンカによる攻撃が続いている。
ライフライオンは、時々そちらを見るものの、ルリたちの元へと行こうとはしない。
これなら……、
「おいしょっと!」
戦闘が始まってから十分ほど。
ようやく俺は、回避途中に攻撃ができるぐらいには、ライフライオンの攻撃に慣れてきた。
ミナの槍は、相変わらずライフライオンを的確に貫いている。
ライフライオンの動きが、戦闘開始当初と比べて少しづつ鈍くなってきた。
「ヒカル。この調子で行くわよ!」
「おう!」
ミナからの掛け声に、元気よく答えた俺。
しかし、俺の体力も確実に減っていた。
しかも、攻撃もするようになったせいで、体力の減りは加速している。
「危ねっ!」
爪による攻撃を間一髪で回避する。
今の攻撃による直接的な被害はない。
だが、その代わりに俺は、決定的なダメージを受けた。
「しまっ……」
俺は、攻撃を避けた勢いで体勢を崩した。
その隙を、ライフライオンは見逃してくれなかった。
ゴオオォォッッ!!
渾身の爪の振り下ろしが迫る。
ヤバイ。回避が間に合わない……。
その時、俺は、何者かの声を聞いた。
『諦めるな。信じるのだ、自らの力を。守るのだ、この国の人たちを。……のお前なら、できる』
俺は、無意識に神速の剣を強く握った。
そして、全神経を右手に集中する。
なんでだろう。敵の攻撃が、止まって見える……。
シャッ!
ライフライオンが振り下ろした爪は、光輝く神速の剣に、肘から切断された。
雄叫びをあげるライフライオンを尻目に、俺はこいつの手足を全て斬った。
その勢いのまま、ライフライオンの首を斬る。
「ヒカル!」
ミナが走り寄ってくる。
あれ? 俺は、一体何をしていたんだ?
「ヒカル、大丈夫!?」
「大丈夫って……何が?」
「体勢を崩した時、魔物に攻撃されたじゃない! そうしたら、いきなり魔物倒れちゃうし!」
「ライフライオンが倒れた? うわっ! マジで倒れてる! ミナ凄いな!」
ボカッ!
「ミナじゃなくてお前だ、ヒカル」
「いきなり殴るな! って、俺?」
「そうですよヒカルさん。遠くからでしたけど、確かにヒカルさんが倒してました」
「う、嘘だろ……」
全く自覚がないんですが……。
でも、言われてみれば、確かに何かをこの手で斬ったような……。
そういえば、誰かの声も聞こえたような……、
「あっ!」
「ヒカル、どうしたんだ?」
「こんなところでボーッとしてたらダメだ! 厄災級はもう一体いる!」
表情を見る限り、他の三人も思い出したらしい。
急いで南側に向かわないと!
◇
戦闘の疲労を全身に感じながら、俺たちは南へと全速力で走った。
満身創痍の俺が、そこで見たものは、すでに倒された厄災級の魔物だった。
「えーっと……。これはどういう状況ですかね?」
「わかりません……」
王国の騎士団だけで、こいつを倒したのか?
いや、さすがにそれは無理がある。
それなら、誰が厄災級を……。
「よし、次は北だ! 行くぞ野郎共!」
うん? 何か物凄く強そうな一団がいるぞ。
もしかしなくても、絶対この人たちだろ。厄災級倒したの。
「あのー、すいません。北側の厄災級なら、もう俺たちが倒しちゃったんですが……」
「何だと!? 本当か?」
俺の言葉に反応したのは、さっき大声で指示を出していた男の人だった。
「こう言っては失礼かもしれないが、お前たち四人だけで倒したのか?」
「はい。そうです」
「マジかよ! 若いのに凄いなお前ら! おっと、自己紹介が遅れたな。俺たちは、マッスルパワーってもんだ! よろしくな!」
「こちらこそよろしくお願いします」
「お前さんらのパーティー名は?」
「パーティー名?」
なんだパーティー名って。
何かお祝いでもするのか?
「お前ら、もしかしてパーティーを知らないのか?」
「はい」
パーティーと言われて思い当たるのは、エブルド様が開いてくれた、ミニパーティーぐらいだ。
でも待てよ、何か聞き覚えがあるような……、
「あ!」
パーティーって、もしかしてRPGゲームとかで使う、あのパーティーのことか?
この世界では、一緒に冒険している一団のことをパーティーっていうのか。
(異世界って、ホントにゲームみたいだな……)
心の中で、俺はそう呟いた。
もちろん、それが他の人にわかるわけがないので、みんなキョトンとしている。
「すいません。まだパーティー名は決めてないんです」
俺は、今の俺たちの現状を正直に説明した。
これで、万事解決かと思ったのだが……。
「ということは、お前ら、冒険者ギルドにパーティー登録をしてないのか!?」
マッスルパワーのリーダーらしき男は、驚きながらそう叫んだ。
冒険者ギルドって……、それもよくRPGゲームで見かけるやつですか?




