第21話 運が良ければ攻撃は避けまくれる
王都を厄災級の魔物が襲撃したと聞いた俺たちは、ナユアリを一気に駆け下りた。
山に登った時は、王都を西側から出てきていたが、今は北側目指して一直線だ。
「そろそろ見えてくるわ!」
「あれか……」
そこには、ブラッディベアやデスタイガーよりもさらに大きな魔物がいた。
見た目は、禍々しい色をしたライオンだった。
「ルリ、あいつの名前は!?」
「生命を刈り取る者、という異名がついているだけで、きちんとした名前はありません」
「ヒカル、厄災級の中でも、特に強い魔物が来てしまったみたい……」
ミナはそう言ったが、言われなくても十分にわかる。
こいつはヤバイ。ブラッディベアとかとは比にならないぐらいな。
「さて……」
今の俺たちの力では、正面からやり合うのは得策ではないだろう。
こちらに有利な点があるとすれば、運の良さぐらいだ。
「ミナ、正直に答えてくれ」
「何を?」
「今の気持ちだ。少しでも怖いと思っているなら、戦わずに逃げてくれ。もしそうなっても、誰もミナを責めたりはしない」
この質問は、王女のミナは死なせたらダメだという、ミナ本人の気持ちを無視した考えではない。
質問をした理由は、俺たちがミナの槍の腕前を知らないからだ。
だが……、
「私は、王族の者として、王都の人たちを守らないといけない! 一緒に戦わせて、ヒカル!」
大丈夫だな。
いつの間にか、厄災級の魔物や魔王軍幹部を倒した経験を持つ俺は、そう判断した。
これで、俺たちの状態は万全だ。
後は、どうやって生命を刈り取る者を倒すかを考えるのみ。
「なんだけどなあ……」
敵の弱点が全くわからない以上、作戦を立てるのは難しい。
となれば……、
「俺が前衛で攻撃を避けまくるから、その間に何か攻略法を見つけてくれ!」
こうするしかない。
俺が唯一自信のある、避けるという行為。
「わかりました!」
「任せたぞ!」
「お願い!」
美少女三人からの励ましほど、元気が出るものはないだろう。
これなら行ける。
「しゃあ!」
俺は鞘から神速の剣を抜き、生命を刈り取る者、もとい、ライフライオン(俺命名)の元へと全力で走る。
ヴオオォォーン。
ライフライオンの雄叫びが響き渡る。
悪いけど、全然怖くないぜ?
「ウラアッ!」
挨拶がわりに、一撃放り込む。
しかし、さすが厄災級トップクラス。手応えがない。
「ほっ、ほっ、はっ!」
挨拶のお返しに返ってきた、爪による攻撃を直感だけで回避する。
これなら、俺でもできる。後は……、
(このまま、時間を稼ぐのみ!)
俺がライフライオンに攻撃されるたび、ルリたちがライフライオンの特徴を掴むチャンスが増える。
この俺の行動は、決して無駄にはならない。
突然飛んできたブレス攻撃や、周囲に地震を起こす攻撃も回避しまくる。
その調子で避け続けること、五分弱。後方のルリの声が聞こえた。
「ヒカルさん! その魔物の特徴がわかりました!」
「わかった!」
ルリの言葉を聞いた俺は、その場から全速で離脱した。
言い忘れていたが、ルリに身体強化魔法は付与してもらっているので、脱出は難しいことではなかった。
「それで、あいつの特徴って何だ!?」
「推測になるんですが、あの魔物、おそらく動くのが好きではないと思うんです」
は? 動くのが好きじゃない?
それってどういうことだ?
「先程、ヒカルさんが爪による攻撃を避けて、生命を刈り取る者から離れた時がありましたよね? その時、あの魔物はブレス攻撃を行いました」
「言われてみれば……」
「その後もずっと見ていましたけど、あの魔物がブレス攻撃や地震攻撃をしてきたのは、全部ヒカルさんが離れた時なんです!」
「なるほど。それで動くのが好きではないと」
これは、かなり貴重な情報かもしれない。
なら、俺が魔物を引きつけている間に、ルリやリンカが遠距離攻撃をすれば……、
「行けるかも」
前衛が攻撃を引きつけている間に、後衛が攻撃するというのは、セオリー中のセオリー。
しかし、敵が前衛を無視して、後衛の方に突っ込まれたら、全てが崩壊する。
そして、今の俺たちに、それを防ぐ前衛力はない。
だが、敵がその場から動かないというのなら、この作戦が一番有効だ。
上手くいけば、倒せる可能性もある。
「迷ってる暇はねぇ。やるぞ!」
「私とルリは、ここから攻撃する。ヒカルにはまた負担をかけるが、頼むぞ」
「任せとけって」
正直なところ、さっきの五分の攻防で(といっても、俺が攻撃したのは最初だけだが)体力をかなり消費している。
それでも、他に作戦はない。
実行しなければ、王都が滅ぼされる。
「それじゃあ俺は行く。後は任せた」
疲労が蓄積している身体を、無理矢理動かそうとしたその時、ミナが俺の腕を引っ張った。
「ヒカル。私も行く」
無茶だ、と言おうとした。
でも、俺の口は、思い通りには動かなかった。
「助かる。無理はするなよ」
ミナは確かに、東国イストラルの王女様だ。
だが同時に、俺たちの仲間でもある。
ピンチの時に仲間を頼らないなら、一体いつ頼りにするんだよ。
「行くぞ」
「ええ!」
見てろよライフライオン。
俺たちの力は、お前が思っている以上に高いぜ!




